各種のコラム --  3ー195 物流問題を考える

                                      2026年4月20日  

    3ー195 物流問題を考える
    
   2024年4月から順次施行されたの働き方改革関連法の影響で、トラックの運転手不足など物流問題が話題になっています。
  そして、荷物を運んだトラックが空でもどってくるのが無駄で、もっと効率的な輸送計画が必要といわれます。
  しかし、空で走るトラックをなくすのは、意外と難しいところがあります。
  最近、東北新幹線で荷物専用の新幹線車両の運転が始まりました。盛岡の新幹線車両基地で荷物を積み込み、
  旅客輸送用の車両とつないで盛岡駅から東京駅まで運転した後、東京の車両基地で荷物をおろす輸送が始まりました。
  東京の車両基地で荷物をおろした後は、東京駅まで回送し、旅客輸送用の車両の部分を使って、「なすの」として運転され、
  その後、仙台の車両基地に回送されさらに盛岡の車両基地まで回送され、翌日また上り列車として
  荷物輸送と、旅客輸送を行います。荷物専用の新幹線車両の運転は初めての取り組みで、いずれ車両も増えて、
  両方向輸送や他の線区での輸送も始まるでしょうが、JR貨物でも一方向の輸送が多い線区はあります。
  大井埋立地の東京貨物ターミナルと鹿島臨海工業地帯を結ぶ「鹿島貨物」とよばれる列車があります。
  東京貨物ターミナルを出発して、鶴見駅のそばを通って、横浜羽沢駅のそばを通って、武蔵野線を経由し、
  新松戸駅付近で常磐線に乗り入れ、松戸〜新小岩間を結ぶ「新金貨物線」を通って、総武線から成田線
  鹿島線経由で、メルカリスタジアム近くの鹿島サッカースタジアム駅で、機関車を付け替えて、
  神栖駅まで運転されます。コンテナなので、中は見えませんが、鹿島臨海工業地帯から製品を運び出す、
  東京貨物ターミナル行きの列車が多くの貨物を運んでいます。
  それなら、東京貨物ターミナルから鹿島へは、旅客輸送と貨物輸送を行えばよいかというと、そうはいきません。
  そもそもコンテナで人は運ばませんが、その他にも、新小岩信号所で停車している時間も含めて、
  時間が7時間位かかります。旅客輸送を行うのであれば、「激レア入線体験」のイベント列車を走らせれば、
  成田山新勝寺、香取神宮、鹿島神宮があるので、人気の列車になるはずです。
  メルカリスタジアムへの旅客輸送はまったく行っていないわけではなく、神栖駅にパークアンドライドして、
  鹿島サッカースタジアム駅まで輸送することがあります。コンテナで運ぶのではなく、鹿島臨海鉄道の列車を利用します。
  「あやめ祭り」の時期に運転される新宿〜佐原間の臨時列車を試合がある日に、鹿島サッカースタジアム駅まで運転すれば、
  東京からメルカリスタジアムへの旅客輸送に使えます。
  
  空で走るのを無くすということでは、飛行機の貨物室もよく話題になります。旅客機の下半分は貨物室です。
  荷物専用の新幹線車両なら、週末で荷物がなければ、旅客輸送用の車両だけの列車として走らせることができますが、
  飛行機は、上半分だけで飛行することはできません。
  貨物室に空きがある便を探して、トラックによる長距離輸送を飛行機に置き換えれば、トラックの運転手不足解消に
  大きな効果があります。ただし、その場合、もともと空で運行することを想定していたので、安い運賃でも運行可能です。
  それが、トラック業界を圧迫しないようにする措置が必要です。
  
  物流問題を世界規模でみると、現在ホルムズ海峡の通行が制限されていることで、原油の輸送に障害があります。
  紅海の側なら安全かというとバブ・エル・マンデブ海峡周辺でフーシ派がテロ活動をしているので、そうも言えません。
  以前は、ヨーロッパからスエズ運河を通って紅海を通って日本まで輸送していたコンテナ船が、安全の観点で、
  アフリカの喜望峰を回っているものがあります。
  日本からヨーロッパまでは、およそ22,000kmですが、喜望峰を回ると30,000kmになります。
  ドイツから中国までは、鉄道でおよそ7,000kmなので、対ヨーロッパの物流では、日本は中国より
  かなり不利です。
  
  今回の石油危機では、日本は備蓄などを使って対応していますが、ナフサなど一部の製品では、供給不安が
  発生しています。経産省と厚労省が連携して、医療用の化学製品に供給不足が発生しないように対応しています。
  このような場合や荷物を運んだトラックが空でもどってくる問題への対応で、デジタルインボイスが広まっていれば
  もっと迅速に対応できるはずです。デジタルインボイスの本体はxmlのファイルで、通常のxml Name Spaceの他に、
  7個のName Spaceが宣言され、例えば、cbcはxsdのCommonBasicComponents−2で
  取引相手や、取引の方法、金額などを示し、cacはxsdのCommonAggregateComponents−2で
  それらの要素を集約した単位を示すタグです。また価格などのタグは、Name Spaceタグと共に
  使用すると、Universally Uniqueであることが保証されます。
  非常事態になったら、xmlファイルを提出する決まりにしておいて、取引相手や、取引の方法、取引量、金額などをのデーターを
  集約すれば、どこにどれだけ在庫があるかがわかります。非常事態なので、立ち入り調査をしますというと、
  都合が悪いデーターを隠す人もでますが、xmlファイルを提出するための規定や、統計的に集約するだけで、
  個人名は調査しないなどの規定を予め定めておけば、デジタル技術が有効に使用できます。
  
  マイナンバーカードが出来て10年も経つのに、戸籍と住民票のデーターの連携ができていないなど、何を目標に
  行政のデジタル化を進めているのかわからない事象が多く発生しています。
  トイレットペーパの不足に対して、スーパーの棚に全く在庫がないのに、行政が、供給は十分なので買い占めをやめてください
  というメッセージをだすと、家に在庫が1ロールもない、トイレにセットしてあるものが最後だという人が、
  スーパーに行って、棚に全く在庫がないのを見ると、スーパー回りをして、2個3個と買っておこうという行動に
  なります。出すべきメッセージは「買い占めをやめてください」ではなく、現在の在庫状況と
  これから1週間の入荷予定個数です。コロナ禍でマスクがなくなった時、「供給は十分なので買い占めをやめてください」
  といったのが日本で、現在の在庫状況と入荷予定個数を店舗ごとにマップに記載して情報提供したのが台湾です。
  
  日本の自動車メーカーでは、地震で生産が止まったのを契機に、ジャスト・イン・タイムをさらに進化させて、
  組み立てが完了できる車に在庫部品を集中して使い、それ以外の車の生産を止めました。
  車は食料品のように、新車の供給が一日でも止まったら危機になるというものではないので、
  新車の供給に適した危機対応の仕組みを確立しました。
  民間企業では出来ているのに、なぜ行政ではできないのかが不思議です。
  消費税の減税に関連して、インボイス廃止を訴える政党があります。私には理解不能な主張です。
  インボイスは請求書です。商品を売った側は、売掛金 売上の仕訳をすると同時に1回だけ請求書を発行し、
  買った側は、納品された商品の検品を行い、請求書を受け取った時点で、仕入 買掛金 あるいは
  商品 買掛金 の仕訳を一回だけ行います。請求書を証憑書類として、一回だけ買掛金の仕訳ができ、
  検品記録に加えて、報告主体以外の会社が発行した請求書で、「課税仕入れを行った日(商品・サービスの受け取り日)」
  が確定されるので、当該課税期間における仕入税額控除に該当することが証明されます。
  消費税の軽減税率を導入した時、消費税非課税事業者の益税の額を減らして、軽減税率導入による
  消費税の徴収税額の減少の影響を軽減しよういう財務省の戦略で、消費税課税事業者が発行する
  適格請求書でないと仕入税額控除を適用できないという規定が導入されました。
  本来なら野党はこの時点で反対すべきだったのですが、ほとんど軽減税率の導入には賛成だったので、
  適用する正確な税率を把握する必要があるという財務省の説明を鵜呑みにして、
  適格請求書でないと仕入税額控除を適用できないという規定には反対しませんでした。
  一見財務省の戦略勝ちに見えますが、事業者の間に適格請求書に対する嫌悪感が広まり、
  さらにその何倍ものデジタルインボイスに対する嫌悪感が広まり、取引の証憑書類のデジタル化は停止しました。
  そして、令和の米騒動や石油危機で商品の流通量や在庫量の把握が必要な時、デジタル化の遅れでそれができないという
  大きな副作用がでています。
    
  ソフトバンクを中心とする各社の出資で、株式会社日本AI基盤モデル開発が発足します。
  中核となる4社以外にも3メガバンクや製鉄会社が出資します。そして、経産省による5年間で総額約1兆円の
  政府支援があります。株式会社に多くの会社が出資するのは普通のことです。むしろ、NTTがまったく
  かかわっていないことに違和感があります。NTTは、2026年3月にデジタル庁の政府AI基盤「GenAI」プラットフォームに
  採用され、デジタル庁陣営と経産省陣営が対立しているのではないかという懸念がありますが、まったく関係ないかもしれません。
  本当に懸念があるのは、出資額です。ソフトバンクがデータセンターに投資する額は、2兆円で、
  同社が米国でAIインフラに80兆円近く投資するのとくらべると少額です。Googleの親会社の
  アルファベットの事業規模は、総資産額と年間売上がおよそ、100兆円、株式時価総額は270兆円です。
  理化学研究所のスーパーコンピューターについて、「2位じゃダメなんですか?」が話題になりましたが、
  日本AI基盤モデルなら「それで、世界10位以内に入れるのですか?」と聞きたくなります。
  日本では、ITシステムの開発で、本来なら100億円かかるシステムを5億円で開発したとか、
  通常3ヶ月かかる開発を2周間で完了したなどだけがニュースになりますが、
  それは、米国で開発したシステムのデバッグを行っているだけだからです。1から開発して、アメリカ人なら
  100億円かかるシステムを日本人なら5億円で開発できると思っている人はいません。そして、経産省による5年間の
  政府支援が終了したあとは、民間だけで自立するというのが建前ですが、研究開発に政府支援が得られるのなら、
  その期間だけ参加して、後は静かに退出するということがあります。
  政府支援を得て、それなりに意味のある研究開発ができたとしても、例えば携帯電話でいえば、
  iPhoneのiOSやAndroidのように、世界で基盤と認められものにならないと、結局新しい
  バージョンの基盤に組み込む人がいなくて、誰も使わなくなります。
   
  給付付き税額控除の導入に関して、食料品の消費税の期限付き廃止が選挙公約だったので、公約違反だという
  批判がでています。給付付き税額控除も食料品の消費税の期限付き廃止も行わないのなら、公約違反ですが、
  本丸の給付付き税額控除をスピード感を持って、例えば2026年12月の年末調整から実施するのなら、
  公約違反ではないと思います。私は、食料品の消費税の期限付き廃止より給付付き税額控除の導入を希望します。
  理由は2つあって、食料品の消費税廃止は、所得が1億円の人にも適用されますが、給付付き税額控除なら、
  所得が2,000万円を超える人には適用しないなどのしくみが簡単に導入できます。
  2つ目は、食料品の消費税が廃止されれば、確かにスーパーのレシートで、消費税額がゼロになったことは確認できますが
  年間の食料品の購入額が減少したのかどうかは確認できないからです。生鮮食品は値段の変化が激しいし、
  小さな玉ねぎが48円で売られていることもあれば、大きな玉ねぎが68円で売られていることもあるので、
  たとえ同じものを買っても比較することはできません。
  それに対して、給付付き税額控除なら、給与所得者なら、2年分の給与所得の源泉徴収票を用意して、
  課税総所得金額と所得税の納付額と調整給付金の受取額を比べるだけで、租税公課の軽減額がわかります。
  税額控除についても、所得税と住民税ではなく、所得税だけで行ってほしいところです。
  税額控除だけなら、私のような低額所得者でも税率が10%になる住民税から控除してほしいということになりますが、
  調整給付金が得られるなら問題になりません。所得税と住民税は課税基準年度がずれるので、
  計算が面倒になるので、私にも簡単に比較できる、所得税の税額控除と調整給付金の給付を行ってほしいと思います。
    
  現在、再審制度見直しのための刑事訴訟法改正案が検討されています。これに関して検察の抗告を制限すべきであるという
  自民党議員の提案は妥当なものに思われます。少なくとも財務省の予算案の審議で、WBCの試合を観戦していたかどうかの
  質問よりは意味のある質問です。国会の審議をさぼってWBCの試合を観戦していたのなら大問題ですが、
  審議のない時にリフレッシュしても問題ありません。刑事訴訟法の改正では、検事総長の意向が法務省案に強く
  影響するようなことがあってはなりません。法務大臣の俸給が144万6000円なら、検事総長の俸給は
  144万5000円にすべきということではありません。検事総長は実務を担当する検察のトップであって、
  刑事訴訟法改正の審議を行うのは、選挙で選ばれた国会議員です。刑事訴訟法の改正でも、所得税法や消費税法の改正でも
  法案の審議をおこなうのは立法府である国会だということが誰にもわかる状況にする必要があります。