各種のコラム --  3ー190 骨太の方針

                                      2026年2月10日  

    3ー190 骨太の方針
    
   骨太の方針とは、正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」で、小泉政権下で始まった、
  翌年度の予算編成や重要政策の方向性を示すものです。小泉政権の「骨太の方針」は、経済財政諮問会議を中心に
  官邸主導で策定された構造改革の指針で、2001年に第1弾が発表され、歳出削減と民営化による「小さな政府」を目指しました。
  その後あまり注目されなくなりましたが、現在も続いており、2026年も6月ごろに、発表される予定です。
  当初は1月中の立ち上げを目指していた、政府と与野党で社会保障改革を議論する「国民会議」で、消費税の減税や、
  給付付き税額控除などの検討を加速し骨太の方針につながると思われます。
  
  消費税減税については、衆議院議員選挙でも話題になり、自民党としても検討することになりましたが、
  食料品の軽減税率0%が何を意味するのかという根本的な議論は聞く機会がありませんでした。
  輸出する自動車などについて、0%課税という言葉が使われることがあり、消費税の不課税ともいわれます。
  これは、消費税は、日本国内で事業者が事業として対価を得て、資産の譲渡、役務の提供を行う場合に、
  事業者に課税するという規定に当てはまらないものであるという意味です。具体的に、輸出する自動車や
  免税店で海外旅行者に販売する場合、海外で使用されることが前提条件なので、日本国内での取引に該当しないという
  解釈です。調剤薬局での処方箋による薬の販売などは、消費税法の規定で非課税と定義されている取引です。
  具体的に消費税の納付税額を計算する時、何が違うかというと、消費税の税額から、仕入れ控除税額を控除して
  納付税額を計算しますが、仕入れ税額控除の対象になるのは、課税売上のための課税仕入れの額です。
  そのために計算の最初に課税売上割合を計算します。その際、輸出取引などの消費税の不課税の取引は、
  課税売上割合の計算の分母にも分子にも入りません。一方非課税売上は、分母に入って分子にはいらないので、
  調剤薬局では、課税売上割合が低くなります。
  食料品の軽減税率を0%にするという時、各党は、不課税の扱いを想定していたのでしょうか、それとも
  非課税の扱いを想定していたのでしょうか。スーパーでの食料品の販売は、日本国内の取引なので、
  不課税の扱いは合理的ではありません。非課税の扱いだとして、仕入れ税額控除の計算に個別対応方式を適用すると、
  商品を陳列するための棚を購入して消費税10%を支払った場合、それが、洗剤などの標準税率で販売する商品の
  ための棚なら、10%の消費税額を仕入れ税額として控除することができますが、
  0%の軽減税率が適用される食料品の販売が、非課税取引とみなされるなら、食料品の販売のための棚を購入して
  10%の消費税額を支払ったとしても、仕入れ税額控除を適用することはできません。
  
  現状で、デパートなどの免税店や、輸出が多い自動車産業などが、商品や部品を仕入れた時の仕入れ税額の還付を
  受けられるのに対し、調剤薬局や居住用賃貸の不動産事業者が店舗や賃貸用のアパートを建設した時に
  支払った消費税を自身で負担していることに不公平が無いのかが議論になっていますが、その不公平が
  食料品スーパーにも拡大することになります。
  
  ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックに関連する報道で、イタリアのレストランやスーパーで
  食品を購入して、日本の物価と比較するものがあり興味をもって視聴しました。国会議員の人が欧州に
  視察旅行にいくなら、観光地で写真を取るだけでなく、ユーロ圏では政策金利は欧州中央銀行が決定するのに対し、
  税率は各国が決定する仕組みになっている理由や、特に消費税(付加価値税)に注目して、
  食料品の軽減税率を採用している国がどのような税法になっているか、さらに国境の移動が自由な状況で、
  すぐ隣の街のスーパーで消費税率が異なるという状況で、どのようにスーパーが価格設定をしているのかなどの現状を
  十分に把握し、「国民会議」で、誰もが納得できるような議論を加速する必要があります。
  
  また、我々が中古のマンションを購入する時、土地部分は、消費税非課税です。建物部分は仲介物件なら、
  居住者が生活の用に供している資産を譲渡するものであり、事業者が事業として譲渡するものではないので、
  消費税は課されることなく(不課税)、仲介手数料のみ消費税が課されます。不動産業者が所有する物件なら、
  事業者が事業として譲渡するものなので、建物部分に消費税が課されます。リノベーションの物件が人気ですが、
  仲介物件として購入して、業者を紹介してもらってリフォームすると、建物部分には消費税が課されず、
  リフォーム代金にのみ消費税が課されます。いっぽう業者が購入してリノベーションした物件なら、
  建物部分に消費税が課されます。業者のリノベーションのほうがセンスが良いとか購入する人にはそれぞれの
  事情があるのでしょうが、スーパーで支払う数百円の消費税は細かく気にするのに、数千万円の建物にかかる
  消費税を気にしないというのは賢いやり方ではありません。我々も消費税に敏感になる必要があります。
  
  給付付き税額控除については、ほぼ一様に実施には資産の正確な把握が必要であるという声が聞かれますが、
  すべての銀行口座をマイナンバーと紐付ければわりと簡単にできるのではないでしょうか。
  タンス預金を持っている人や貴金属を持っている人も居るので、正確な把握が必要なのは間違いありませんが、
  本当の問題は把握した後にあります。田舎に住んでいて土地・家屋の固定資産評価額は低いが金融資産を3,000万円
  持っている人と、東京都心に、昔から住んでいて、金融資産は無いが、土地の評価額が1億円の人をどのように
  扱うのが公平でしょうか。金融資産がある人にはお金を支払わせることは可能でしょうが、金融資産の無い人に、
  土地を抵当にお金を借り入れさせてそのお金を支払わせるのはかなり困難です。さらに、土地の評価額が高くても
  ずっと住み続ける人には、固定資産税が高くなるだけで、メリットがありません。
  所得税は払っていないけれど、固定資産税を払っている人に、さらにお金を支払わせることが公平なのかの議論も必要です。
  
  給付付き税額控除がなかなか始まらないのなら、思い切ってゼロからアイディアをだすというやり方もあります。
  成人になったらすべての人が確定申告をして、給付金を受け取ることにして、その額は年間48万円を基準に考えます。
  48万円というのは以前の所得税の基礎控除の額です。多いと思うかもしれませんが、現行法で
  19歳以上23歳未満の扶養親族(主に大学生など)がいる場合に、 所得税63万円の「特定扶養親族控除」の制度
  があります。主たる生計維持者の所得が4,000万円を超える場合(税率45%)は、28万円ほどの減税になりますが、
  195万円以下の場合(税率5%)は、3万円ほどの減税になります。それが本当に公平な課税でしょうか。
  親の所得にかかわらず、本人が48万円受け取ることができる方が公平ではないでしょうか。
  ところで、48万円の所得税の基礎控除の額ですが、令和6年分では、所得金額が2,400万円を超えると減額され、
  2,500万円を超えると0円になることになりました。なんでこのような規定をつくるのかと思ったのですが、
  令和7年分では、合計所得金額 132万円以下では 95万円で、2,500万円を超えると0円になるまで段階的に
  減額されることになりました。基礎控除額に給与所得控除額を加えて、国民民主党が要求する178万円まで非課税
  に近づけるが、徴税額が少なくなっては困るので、なるべく防ぐ手段を設けるために、同時にではなく、1年前に
  さり気なく制度を取り入れるという財務省の戦術で、片山さつきさんも玉木 雄一郎さんも頭が良いと感じますが、
  21世紀生まれの最近入省する財務省の職員の人は細部の戦術を立案する能力でさらにパワーアップされているようです。
  しかし、ゼロからリセットするような思い切ったアイディアは思いついても喋らないような訓練を受けているのかもしれません。
  成人になったらすべての人が確定申告をして給付金を受け取り、その中から自身で、国民年金保険料や国民健康保険料を
  支払う仕組みにして、何年かして就職すると、厚生年金や健康保険組合に移行することで、若いうちから租税公課に
  関する理解を深めるとともに、所得税の扶養親族控除などの仕組みは18歳までとして、所得税や社会保険料の
  仕組みを個人中心にしてスッキリさせるということが考えられます。さらに進めて、税の徴収は税務署や都道府県の
  税務課や課税課などで年金は日本年金機構、国民健康保険料は市町村の国保年金課などと分散している
  徴収機関を統一することも考えられます。民主党政権の時、話題になり、鳩山由紀夫さんも政治家になる以前の
  学者の時はすばらしい人だったと思いましたが、沖縄の米軍基地の最低でも県外と同じで、
  まったく実行に移されることはありませんでした。
  
  話題が変わりますが、最近メモリーの価格が高騰しています。AIデーターセンターでGPUと共に用いられる
  HBM(広帯域メモリー)の需要が急増し、比較して利益率が低いDDR5メモリーの生産量が減少したことが原因です。
  HBMは、DDR5メモリーを積層したものだという話があったり、両者はシリコンベースで別物だが、
  製造設備が競合するという話があったりで、詳しい内情は知りませんが、携帯電話やAppleシリコンの
  ユニファイドメモリーのようなSoCに統合されたメモリーも高騰するのかも気になりますが、
  Cerebras  や SambaNovaのようなシリコンプレートを切り出さずにそのまま巨大AIチップにするとか、
  データーを読み込んで演算をしてメモリーに戻すというノイマン型ではないデーターフロー型の演算をするなどを、
  研究開発しているメーカーにとってはメモリー価格の高騰で価格的に競争できるレベルになるかもしれません。
  MRAM(磁気抵抗メモリー)も現在は、一部のウェアラブルデバイスで実用化されているだけですが、
  価格的に競争できるようになり、DRAMが、トランジスターとキャパシーターで構成されているために、
  電源が入っているだけでなく定期的にリフレッシュする必要があるのに対して、MRAMは電源を切っても
  内容が消失しないので、省電力の観点からも注目されるかもしれません。
  また、2026中に開発モデルが登場すると言われている、Google Alminium OSも注目です。
  まずはデスクトップから登場するでしょうが、タブレットでもアプリがマルチ・ウィンドーで作動し、
  LinuxでPythonも使えるようになれば、iPad一強の状況に変化があるかもしれません。
  CPO(光電融合)も注目の技術です。CPUとGPUと光通信用の光学エンジンを同一パッケージ基板上に実装する技術です。
  さらに進めてSSDなどを接続するPCIeバスを光通信にするというアイディアもあります。
  光通信は電気配線より相当省電力なので、ノートPCの電池が長持ちするようになって、タブレットは不要
  になるかもしれません。折りたたみ式で広げた時の片面が10インチ画面とキーボード、ウラ面が広げた状態で
  2面合計で14インチのディスプレーのデバイスがあれば、ワンルームマンションに住む人で、
  タブレット、ノートPC兼Androidテレビとして使えるかもしれません。
  マイクロソフトの新IME「Copilot Keyboard」が話題になっていますが、ぜひ一歩進めて、
  ITデバイスに不慣れな高齢者が適当にキーボードを打っても、単語変換ではなく、文書変換で、利用者の
  意図を理解して文書を作成するようになって欲しいものです。以前机の上にレーザー光でキーボードを描き、さらに指の
  位置も測定して、入力できるという製品が展示会に出展され注目されたのですが、Ctrl+Vなど2つのキーを
  押す場合の認識率が低く実用化されませんでした。AIが進歩した今なら使えるのではないかと思います。
  オープンAI社では、認証したユーザーに付与するデジタルID「World ID」を、暗号資産「Worldcoin
  (ワールドコイン)」との組み合わせ、世界中で普及を図っています。日本のマイナンバーを、世界各国のパスポート
  と連携することは不可能です。生体認証とあわせてグローバルサウスの国では、民間会社のIDが
  ディファクト・スタンダードになる可能性もあります。日本も、オリンピックの開会式で日の丸だけでなく、
  開催国の国旗も振りながら行進するなどアイディアを持った人はいるので、デジタル分野でも自信を持って、
  技術を推進していく必要があります。
      
  IT業界では、現在の勢力図をリセットするようなことが頻繁に起きますが、政治行政でも
  リセットして考えることが必要になりそうです。政治資金管理に関して、このコラムでもデジタルインボイスの
  利用を何回か主張しましたが、デジタルインボイスに使われるxmlのエクステンションはSemantic Web
  の考え方で提唱されてから20年近く経っています。歴史が一周して、現行通りの手書きの収支報告書でかまわないから、
  ヒューマノイドロボットが事務所を訪ねて手書きの文書をカメラで撮影して、生成AIに画像を入力すれば、
  有価証券報告書のような政党ごとの連結財務諸表、派閥ごとのセグメント情報を作成して、
  連結注記表や連結附属明細票さらに、政党の概況や政党の状況の文書も作成してくれる時代になりそうです。
  日本は国債の発行額が多くて、GDPと比べても最悪の状況だという人と、資産もたくさんあるから問題ないという
  人がいます。しかし財務省が発表する連結貸借対照表で500兆円あまりの債務超過であることは確かです。
  安倍元総理の発言通り日本銀行は政府の子会社だとしても、日銀の貸借対照表は文字通り貸借対照しているので、
  いくら合算しても、連結貸借対照表に500兆円程度の債務超過が残ることにかわりありません。
  貸借対照表の規模が大きくなるので、貸借対照表の規模に対する債務超過額の割合が下がるだけです。
  選挙で各政党の主張を聞いていても、責任ある積極財政というが何の責任も果たしてないとか、
  プライマリーバランスが黒字転換したのは高市内閣の奇跡だとか、債務超過額に対するダイレクトな説明は
  ありません。プライマリーバランスが黒字転換してP/Lが黒字転換したのは大きな成果ですが、
  500兆円程度の債務超過(累積赤字)を解消するのは相当な長期計画です。
  例えば開業してから年数の経っていない鉄道会社なら、累積赤字があるのは計画通りだとしても、出資を得て自己資本の部を
  強化して、債務超過の状態にしないのが基本です。日本の政府と日銀の連結貸借対照表が債務超過なのは
  事実なので、民間会社の会計と公会計では、債務超過の扱いが経済学的に異なるものだという
  ことを説明しないと、納得できません。連結貸借対照表は公開されているので有権者は誰でも債務超過なのは
  知っていることです。選挙の主張もリセットして納得できる説明をしなければなりません。債務超過に対する
  経済学的見解が各党ごとに異なるのは問題ありませんが、今回の選挙の演説は
  正しい事実の認識までいたっていないものがほとんどでした。
    
  リセットして考えるのは私は得意です。しかし、
  リセットしてリブートしても、エラーが再発して正常に起動しないのが唯一の欠点です。