各種のコラム --  3ー188 衆議院議員総選挙

                                      2026年2月1日  

    3ー188 衆議院議員総選挙
    
   衆議院が解散され、選挙が実施されています。今回の選挙では、政権の枠組みと政権信任、「責任ある積極財政」、
  消費税減税などが話題になっています。昨年の選挙では、二馬力選挙や選挙ポスター掲示板ジャックが話題になったことがありますが、
  そのような選挙の戦術のみが話題になる選挙はつまらないと感じました。それに比べると、政権の枠組みや政策が話題に
  なる今回の選挙はまともな論戦が行われています。また、欧米の国で極右と極左の台頭が話題になったこともありますが、
  今回の選挙の保守と中道の選択は好ましい傾向と思います。ただ「責任ある積極財政」や「生活者ファースト」の
  キャッチフレーズが注目されるわりに具体的な政策の議論はツッコミ不足の感があります。
  
  自由民主党、日本維新の会、中道改革連合ともに、消費税減税の政策をかかげています。
  一方、政府と与野党で社会保障改革を議論する「国民会議」は目指していた1月中の立ち上げが不透明になり、
  各党が集まった討論番組を聞いても、給付付き税額控除に触れる党はありませんでした。
  消費税減税がある方が良いかないほうが良いかといえばもちろんあるほうが良いのですが、手放しでは喜べません。
  NHK番組「日曜討論」で、公明党の西田実仁幹事長から「食料品の消費税をゼロにし、インボイスを廃止する」という発言が
  ありました。仮に食料品の消費税率がゼロになったとして、動物園がカピバラゆず湯を実施するためにゆずを購入する場合、
  この場合のゆずは食料品に該当しないので標準税率が適用されます。動物園は入園料などに含まれる消費税を納付するにあたり、
  ゆずを仕入れた際に支払った消費税の額を仕入税額控除することができますが、そのためには消費税課税事業者が
  発行した適格請求書(インボイス)が必要になります。食料品の消費税の軽減税率が8%でも0%でも変わりません。
  将来の消費税法についていろいろな立場から、意見を述べることと、現行の消費税法の確立した適用指針に関して
  事実に反することを述べるのは全く別の次元の発言です。政治家はそのような発言を慎むべきです。
  本人は会社四季報記者などを経験した人なので、知識としては理解しているのでしょうが、
  選挙の得票につながるなら適当なキャッチフレーズを並べれば良いという態度は望ましいものではありません。  
  消費税の軽減税率が導入された時、あわせて適格請求書(インボイス)の制度も導入されたのですが、もともと
  企業会計原則に従い、仕入れの仕訳をする時、請求書(インボイス)などの証票書類に基づいて行う必要があります。
  一般的な請求書(インボイス)は廃止できません。適格請求書(インボイス)を廃止するというのなら、
  それを主張するのはかまいませんが、食料品の消費税をゼロにすれば自動的に廃止できるような紛らわしい表現でなく、
  別個の事項として主張すべきです。
  従来は、納品事業者が発行するインボイスがあれば仮払消費税の仕訳ができたのですが、
  消費税の軽減税率の導入にあわせて、消費税課税事業者が発行する適格請求書(インボイス)が必要になり、
  年間の税抜き売上高が、1,000万円以下の免税事業者が発行するインボイスの使用が認められなくなりました。
  消費税の軽減税率導入による徴収税額の減額を、免税事業者の益税を防ぐことで埋め合わせようという財務省の戦略だったのですが、
  生活者ファーストというなら、その時点で反対すべきだったのですが、あまり選挙に影響しないと判断して
  その時点で意見を表明せず、今になってインボイス廃止を訴えるのは、生活者は税制を理解していないだろいうと
  思っているからかもしれません。行政のデジタル化を本気で進めようとしているのなら、
  インボイス廃止ではなく、デジタルインボイスの推進を訴えるべきです。法人や個人事業主にインセンティブを与えて
  デジタルインボイスの利用を推進すれば、企業団体の取引にはデジタルインボイスが必要になります。
  政治家が政治資金収支報告書のエビデンスとしてインボイスが必要という制度がなくても、
  企業団体側のデジタルインボイスを集計すれば、企業団体献金の実態が明らかになります。
  禁止するしないの議論を続けるなら、まず企業団体献金の実態を公衆の縦覧に供するべきです。
  米国には、もとIRS(内国歳入庁)の職員の人で、ブロックチェーンの記録をたどって、暗号資産がどこの機関に
  流れたかを追跡している人がいます。このようなデジタルフォレンジックの技術は米国が圧倒的に進んでいましたが、
  日本にもキャッチアップの動きがあります。しかし政治家の中には政治資金収支報告書をPDFファイルにしてWebで
  閲覧できるようにすることがデジタル化だという20世紀から進歩が止まっている人もいます。
  
  選挙ではほとんど話題になっていませんが、給付付き税額控除について、中所得者にも恩恵が及ぶ制度にするとか、
  資産把握が必要などの意見がでています。中途半端だと感じます。手取り所得を増やして早急な経済効果を期待
  するなら、岸田政権の時の定額減税と同じ仕組みですぐに実行すべきです。一箇所だけ、所得税の減税にかかわる
  調整給付金の支給を市町村が行うのではなく、年末調整と税務署の還付でおこなうべきです。
  資産把握などを詳細におこなうなら、銀行預金口座のマイナポータルへの登録だけでは不十分です。
  相続税の扱いも含めて、1億総中流の世界をめざすのか、富裕層からのトリクルダウン理論にもとずくのか
  しっかり議論すべきです。例えば、平成19年4月1日以降は持分なし医療法人しか開業できません。
  100万円を元手に医療法人を設立し10億円の利益剰余金があるとします。医療法人は配当できないので、
  利益剰余金が蓄積されている場合があります。この医療法人を相続するばあい、持分はないので相続税はかかりません。
  代々医療法人を経営している限り、医療法人の土地・建物などに相続税は課税されません。
  医療法人を相続した人が、医療法人を解散することになった時、医療法人の財産は、国(または他の医療法人)のものになります。
  出資者にはもどってきません。一見合理的にみえますが、本当に財産を国庫編入する人はほとんどいません。
  医療法人として院長に給与や退職金を支払う額について制限はないので、残余財産のすべてを院長に支払う
  ケースがほとんどです。それに対する所得税は課されますが、本当に世代を超えて、税金や社会保険料の
  租税公課の負担が公平におこなわれているのかの検証が必要です。民間の株式会社のオーナー社長では、
  株式に時価はなくても、利益剰余金を含む自己資本の額をもとに株式に相続税が課税されます。
  行政のデジタル化というのは、このような長期間のデーターの蓄積や分析が容易になることが最大の利点です。
  行政のデジタル化で地方自治体のシステムの運用費が高くなるだけなら本末転倒です。日本版生成AIの開発に
  予算を投入するだけでなく、行政のデジタル化が生活者にどのような恩恵をもたらすのかのビジョンを語るべきです。
  東京電力の柏崎刈羽原子力発電所6号機が約14年ぶりに再稼働が決定されました。 東電は年1,000億円ほどの
  収益改善効果を見込むそうですが、約17兆円から24兆円といわれる廃炉や賠償の費用を捻出するための経営改革としては、
  焼け石に水です。原発の再稼働は経済効果だけではありませんが、国鉄が1987年の分割民営化された時の
  債務が約37.1兆円です。物価水準が異なるとはいえ、1回の事故で、現在の予測で約20兆円程の巨額債務を負った
  東京電力は経営破綻させるべきでした。経営破綻しても電車が走っていたように、電気が止まるわけではありません。
  業務のデジタル化は長期間のデーターの蓄積や分析が容易になることが最大の利点なので、過去の判断に誤りが
  あったのなら、明らかにして、過去のサンク・コストを基準に事業方針を決めるのではなく、原子炉の減価償却か
  減損損失かあるいは資産除去債務を判断基準にするのではなく、将来のキャッシュフローで事業方針を決めるべきです。
    
  1月に大学入試共通テストがありました。情報Iの問題のなかで、大問1の問2のクロスステッチの図案の例では、
  図案を見て、8C8FとかE427とか16進数で読むのは、IT業界で何年か仕事をした人なら、
  日本語を読むのと同じレベルで可能です。しかし、それに続く2進法で桁を逆にするとか16進法で桁を逆にするとかは、
  暗算で行うなど考えたこともないので私はできません。またビッグエンディアンもリトルエンディアンも得意という人も
  少数派です。Pythonなど自分が使う言語で、2進数、16進数、10進数の
  変換やビット演算をする関数を自由に使えるようになる方が重要です。また大問2ですが、マイナンバーカードを
  連想する問題です。設定はA国の役所が発行する住民証明に関する問題なので、氏名、生年月日、住所の
  3要件で本人を特定することにまったく問題ないのですが、なぜか読みがなを含む4要件でない事が気になります。
  コンビニの多機能プリンターで紙媒体の住民証明が得られる形態からスタートして、最終的に、役所の役割が
  住民情報の正しさを証明することになり、請求者が企業などに提出する住民情報を含む履歴書などの
  正当性を立証することになります。私は、なぜ役所は企業などに対して住民情報の正しさを証明するのと並行して、
  請求者に対して、企業にどのような通知をしたかを通知する仕組みにしなかったのかに疑問をもちました。
  セキュリティーを考慮すれば、請求者には処理結果を通知しないことに合理的な理由があるのですが、
  システムが役所の処理にミスが発生するリスクが無いことを前提としたものであることに疑問を感じました。
  そして、今年の大学入試共通テストでは受験票を自分で印刷して持参することも話題になりました。
  それで良いのなら、マイナ保険証でも同じことをするべきです。旅行の時に保険証を携行していたのですが、
  マイナンバーカードを持ち歩くことに不安があります。マイナポータルにアクセスして、
  顔写真付き健康保険証を印刷して持参すれば、とりあえず保険診療が受けられるようにして、
  それほど不正受診が増えるとは思えません。カードリーダーが不調になった時にも、利用できます。
  レセプトの処理を日次処理にすれば、不正を行う人がいたとしても、2回めの診察の時に確認する
  ことができます。マイナ保険証にしてもマイナ免許証にしても、ICチップを読んで、読み込めなかったら、
  全額自己負担にするとか、免許証不携帯にするような、本人には何が起きているか確認できない
  状況で役所の処理に一切のミスがないことを前提として処理は、利用者の不信をまねくだけです。
  
  フィジカルAIが話題になり、日本の強みが発揮される分野といわれています。私は諸刃の剣と思っています。
  AIモデルの中に物理法則が含まれるのは日本にとって有利です。トランスフォーマーなどの人間が考え出した
  モデルと違って、誰にも認められた物理法則が存在するのは有利です。しかし、製造業の匠の技がフィジカルAIに
  かならず活かされるとは限りません。造船業を例にとると、日本の造船所には溶接の技にすぐれた人がいます。
  そのなかでもピカイチに優れた人がいます。私のように溶接した部材はたたくと外れるものだと思っている人は
  溶接を仕事にしようとは思いません。しかし、プロ野球のドラフトに選ばれた選手が皆大谷選手になるわけではないように、
  技にすぐれた人のなかで誰がピカイチに優れた人になるかは、プロ野球のドラフトの順位だけではわからないのと同じで、
  わかりません。日本では溶接の技にすぐれた人も、そのなかでもピカイチに優れた人も、終身雇用が前提であまり給与が
  かわるわけではなく、新しい船を作る時に製造部門の代表として設計会議に出席するなど、権限が与えられる仕組みに
  なっていました。フィジカルAIが広まって、ロボットが溶接の技にすぐれた人並みの仕事をするようになった時、
  ピカイチに優れた人だけを採用するということは不可能です。またコンサルティングの人が、造船業のIT化に
  かかわることがあります。スケジュール管理や倉庫部門と製造部門で材料価格の計算方法を統一するなどを行なって、
  製造業の人は、IT化になじまないということがあります。しかし、現実は、製造業の人は、IT化になじまない
  のではなく、スケジュール管理や管理会計もやらないよりはやるほうが良いがそこが肝ではないと思っているだけです。
  フィジカルAIを考える時、溶接や撓鉄(ぎょうてつ)などの匠の技と、設計部門の熱力学や材料力学に基づいた
  設計が、有機的に結びついていることが重要になります。NVIDIAのOmniverseなどの熱力学や
  流体力学の解析モデルを作っている人は、机に座って数式をながめているだけでなぜ溶接のことがわかるのかと
  思うのですが、不思議と高速に動くモデルができあがります。多くの製造部門の作業がAIロボットでできるように
  なるなかで、どのように技術的優位を保つかを真剣に考える必要があります。
  
  モンロー主義は、モンロー大統領が提唱した外交方針で、「アメリカ大陸への欧州諸国の干渉を禁じ、アメリカも欧州の紛争には不干渉」
  というもので、中南米の国がスペインなどの支配から独立していくなかで、再植民地化や経済的支配などを排除し、
  独立を支援するという面もあったのですが、セオドア・ルーズベルトがモンロー主義を「欧州の干渉排除」から
  「米国の地域介入権」へと拡大させたのに対し、フランクリン・D・ルーズベルトはそれを修正し、協調と内政不干渉を掲げました。
  セオドア・ルーズベルトのSpeak softly and carry a big stickの発言から、
  棍棒外交とよばれます。そしてドナルド・トランプ大統領のドンロー主義は、Speak softlyがなくなり、
  棍棒のみになりました。ベネズエラという国名は、ベネチアに由来しているという説があるように、美しい国で、
  カラカスなどの高地にある都市は、それほど暑いわけではなく、快適な気候で、20世紀には地下鉄も走っている
  中南米では発達した国でした。コロンビアからベネズエラに避難する人はいてもベネズエラからコロンビアに避難する
  ことは考えられない状況でした。ところが、米国の石油資本などの利益が一部の人のみに与えられ貧富の差が
  拡大しました。最初は政府に反対するデモを取りしまる側だった、ウゴ・チャベスが「貧者の救済」を掲げ1998年の
  大統領選挙に立候補しました。石油資本側は、チャベスを排除しようとし、2002年にCIAの資金と指導によるクーデターを起こし
  一時軟禁したのですが、その時は、一斉に市民による抗議行動が起こり失敗しました。これを機にベネズエラは、
  社会主義国家になりました。キューバの社会主義革命も、フィデル・カストロは最初から共産主義者・社会主義者だった
  わけではなく、革命に成功しても、必ず米国の報復があるので、強力な後ろ盾が必要だと感じて、ソ連と結びつきました。
  実際に、フィデル・カストロの考え方に共鳴した、アルゼンチン出身の医師のエルネスト・ゲバラは
  極左的色彩を有する革命家(本人は否定)といわれながら首相特使の資格で日本に来たこともありましたが、
  CIAとアメリカ陸軍特殊部隊群(グリーンベレー)の軍事顧問団の支援を受けたボリビア国内の勢力により
  拘束され射殺されました。今回ドンロー主義によるニコラス・マドゥロ大統領の誘拐は民主主義を取り戻すためと言われていますが、
  20世紀の米国石油資本による支配にもどるだけかもしれません。
  それに比べると、いろいろ課題はあっても、自由に投票できる選挙が継続的に実施されていることは貴重なことです。
  誰にでもよいので投票すべきです。
  
  追伸)日本の報道では、マドゥロ大統領という人とマドゥーロ大統領という人がいます。
  スペイン語はアクセントの位置が厳格に決まっているので、Nicolás Maduro Moros はニコラスはラのá、マドゥーロは
  uにアクセントを置くのが正式な発音です。英語のニュースでもスペイン語の発音を使っています。
  中華人民共和国の最高指導者、習 近平はシージンピンではなくしゅうきんぺい
  と読むのは日本が漢字を使う国で、ハイチの首都のポルトープランス(フランス語で「王子の港」)をスペイン語で
  プエルトプリンシペ(スペイン語で「王子の港」)というのと同じ理由だと思っていたのですが、
  日本で誰が最初にマドゥロ大統領と言い始めたのでしょうか、GoogleのGeminiをジェムナイと読むか、
  ジェミニと読むかについて、日本ではジェミニと読むのが正式ということになりました。
  スペインのアントニ・ガウディはスペイン語(カスティーリャ語)表記では、アントニオ・ガウディ(Antonio Gaudí)
  ですが、本人はバルセロナを含むカタルーニャ地方の出身なので、カタルーニャ語表記では、アントニ・ガウディ(Antoni Gaudí)
  です。どちらでもガウディのィにアクセントがあります。モバイルSuica・モバイルPASMOのアプリがあれば、
  そのままコード決済「teppay」が利用可能になります。鉄道とペイからつくられた造語のようですが、私は
  ナミヘイのほうが馴染みがあります。