各種のコラム -- 3ー186 インターネット vs 生成AI
2026年1月5日
3ー186 インターネット vs 生成AI
インターネットが大きな話題になったのは、今から30年前 Windows 95が発売された時です。
最初は日本では、インターネットは趣味として使うものという位置づけで、企業間の専用線ネットワークとは一線を画すもの
という位置づけでした。インターネットのプロトコールなどがオープンソースだったこともあって、ビジネスでは
あまり重要視されませんでした。インターネットのマネタイズが始まったのは、米国でクラウドサービスが始まった頃です。
クラウドサービスのデーターセンターでは、オープンソースのLinuxが多く使われました。
もしLinuxがなければ、UNIXベースの他のOSが使われたかもしれません。
クラウドサービスでは、AppストアやGoogle Playのように米国にサーバーがあって、世界中にサービス
を提供する形態になりました。
国際租税法は二重課税を防ぐための核心的な概念の一つが「事業所」であり、一般的に恒久的施設があるかどうかが、
課税の基準になっています。米国にサーバーがある場合、ユーザーが日本にいても、日本に、事業者の
恒久的施設があるとはみなされないために、米国で課税されるのが基本でした。
現在ビッグテックとよばれるシリコンバレーの企業がこの仕組みを最初から理解していたかどうかはわかりませんが、
結果的に、クラウドサービスのデーターセンターが米国に多額の法人税収をもたらし、
経済的に米国一強といわれる状況を作り出しました。
大規模言語モデルに代表される生成AIは、インターネット規模のIT業界のビッグイベントあるいは、
それを上回る核兵器並みのビッグイベントといわれます。現状は、OpenAIのChatGPT、
GoogleのGemini、AnthropicのClaudeなどが使われています。どれも私より頭が良いと
いうことはわかりますが、それぞれの機能の詳細は理解していません。
いままでは評判が先行していて、マネタイズの方法は確立していませんでしたが、
OpenAI社から、アプリストア化をめざす、App Directoryの発表がありました。
また、GoogleとMetaからTorchTPUの発表があり、NVIDIAのCUDA 1強の時代が
大きく変わるかもしれません。そして、Googleからは、TitansのアーキテクチャーとMIRASの
フレームワークの発表もありました。人間のように短期的にその場で起きていることを記憶するメモリーと
長期的に知識として記憶するメモリーを区別するものです。大規模言語モデルの基礎となるTransformerは
”Attention Is All You Need”といわれるように、推論の時もAttentionの計算に
大量のGPUとメモリーを消費する状況に変化がありそうです。
そして、GPUが高速になっても、遅いところが速くならないとスループットは向上しません。
トレーニングに使う大量のデーターは、SSDに保存されており読み込むのはCPUです、CPU、SSD、GPU
を接続するためにPCIeインターフェースが使われています。CPO(Co−Package−Optics 光電融合)
の技術が注目されています。NVIDIAのNVLinkにCPOの技術を取り入れ、PCIeインターフェース全体
を置き換えるという話もありましたが、すぐに実現するわけではないようです。光電融合では、NTTのIOWNの
技術も注目されています。またインターネットの技術では米国が中心で、中国は、インターネットの一部を
遮断するというニュースが話題になるだけで、中国発の技術が話題になることはなかったのですが、
生成AIでは、DeepSeekなど中国の技術に注目が集まり、米国と中国がG2といわれる状況になっています。
インターネット、生成AI共にどのようにマネタイズするかは常に課題になります。粉飾決算で問題になった、オルツですが、
会議の議事録の自動作成など、技術的には注目される内容がありました。
三菱電機の「ekinote(エキノート)」は「駅と街のガイドブックアプリ」として好評ですが、
単体で収益をあげるものではありません。企業経営のなかでのIT技術の位置づけはケースバイケースです。
インターネットと生成AIの歴史をたどると、米国の話が中心になり、やっとNTTのIOWNの話がでてきました。
現在高市内閣では、「今こそ官民連携で反転攻勢」ということで、人工知能(AI)戦略本部の会合で、
開発や利活用に向けた政府の方針を示した初の「AI基本計画」案を取りまとめました。
高市内閣の「責任ある積極財政」というキャッチフレーズはシンプルでわかりやすいのですが、
重点投資対象が17分野あり、信頼できるAIによる日本再起を実現するための項目が、6項目もあると、
総花的になり、あまり記憶に残りません。
生成AIを支えるために、HBM(広帯域メモリー)の需要が旺盛でPCにつかわれるDDR5メモリーの
価格もお米の価格以上に高騰しています。政府が財政支援したエルピーダメモリは、経営破綻後、
米国マイクロン・テクノロジーに買収されましたが、現在HBMの需要で経営は絶好調です。
今も、日本の会社であれば、おこめ券、たまご券に続いて、メモリー券も支給できたかもしれません。
NTTのIOWNの技術を世界標準にする必要があります。
そして、最先端の生成AIの技術が活性化すると、行政のデジタル化がすべてうまいこといくというわけではありません。
12月から、従来の健康保険証が使えなくなり、原則マイナ保険証に一本化されましが、診療機関で
問題が発生しています。主に3つあります。
「資格(無効)」や「資格情報なし」と表示される
名前や住所の一部が●になる
カードリーダーの誤動作
最初の「資格(無効)」になるのは、転居に関連して国民健康保険の登録が遅いあるいは正しくおこなわれていないこと
が関連しています。2番めも、マイナポータルの氏名・住所の漢字と健保機関のシステムの氏名・住所の漢字が異なることが
原因です。スマホ・マイナ保険証の利用もはじまりましたが、問題の改善にはつながっていません。
どのようにすれば解決するかのアイディアを示します。これはイメージであって、セキュリティーやプライバシーの保護
などすべてを考慮したシステムの仕様書ではありません。
まず転入・転出の処理と国民健康保険の変更の処理を同期化しなければなりません。転出処理だけして、
転入処理をしないのは、長期に海外に赴任するなどの場合以外ありません。せっかくマイナポータルを作り
ガバメントクラウドを構築したのなら、転出処理をする段階で、転入先の住所は決まっているはずなので、
同時に処理できるようにするべきです。そうすれば国民健康保険の登録がなくなる期間がなくなります。
国民健康保険の登録処理の外注先に処理の迅速化を促しているそうですが、そのような中途半端な指示ではなく、
システム的に「資格(無効)」や「資格情報なし」が発生しない状況にします。そして、健康保険組合の
システムには、マイナンバーと健康保険の種別のみを記録して、名前や住所は、マイナンバーをもとに
マイナポータルのシステムに問い合わせて得られた名前や住所を用いるべきです。
そして、スマホ・マイナ保険証の機能を変えて、アプリを起動すると、従来の健康保険証の内容が記載された
画面が表示されるようにします。そうすれば自分で自分の健康保険証の種別や自己負担割合を確認できます。
自分で自分のデーターを確認する時の注意力は、行政機関で一律にデーターの正確性を確認する時の
注意力を上回ることが多くあります。
またカードリーダーの誤動作が発生した時は、受付の人が画面表示を見て受け付けることができます。
健康保険証の内容が記載された画面が表示される仕様にすると、類似の画面で不正を働く人が
でるおそれがありますが、受付の人が怪しいと思えば、マイナポータルで確認できる仕組みにします。
そして、翌月10日にまとめて提出することが多いレセプトを日次処理で提出するようにすれば、
次回に来院した時点で、確認できます。
アプリの画面で、自分で自分のデーターの確認が出来るようにするという発想が重要です。
「水俣病の住民健康調査 救済が目的ではないのか」と題した12月23日の毎日新聞の社説で、
”住民健康調査の手法が疑問視されているだけでなく、結果も伝えないという。何のための調査なのだろうか。”
と述べています。このような都合の悪いことは本人に伝えないという発想では、
予算を取ってガバメントデーターハブを構築しても有効に活用されません。
コロナ感染者の人数を把握するために、システムが構築されましたが、インフルエンザと同じ
一部の病院で把握する方法に戻りました。コロナ感染症が問題になっていたころは、
感染の波が来るたびに何度も予測が発表され、当たる場合もあれば当たらない場合もありました。
行政のデジタル化を推進するためには、今こそ、システムに記録されたデーターをもとに、
報告された感染者数の推移と真の感染者数の推移を分析して、次の感染症に備えてロジスティクスを
どのようにするかの検討を行うべきです。
東海道・山陽新幹線の総合指令所は東京にあって、大阪にバックアップの指令所があるというのは有名ですが、
鉄道の総合指令所は必ずしもバックアップがあるわけではありません。線路の地上設備が大きく損壊しているのに
遠隔地の指令所だけが稼働していても役にたたないからで、会社全体の訓練用の指令所があって、
特定の線区の指令所にトラブルが発生したら、訓練を中止して、トラブルが発生した線区に対応する
データーをロードすると、全社の線区に対応できる構成にしている会社もあります。
そして、東海道・山陽新幹線の総合指令所は年に一回、大阪のバックアップの指令所で運用するというのも有名です。
その際は、翌日に訓練があるからといって、夜の新幹線で東京の人が大阪に移動するわけではありません。
大阪の鳥飼車両基地で勤務している人や、大阪地区で運転士や車掌をしている人のなかに、訓練をうけて
指令員の社内資格を持っている人がいます。そのようなひとが在来線の電車や徒歩で大阪のバックアップの指令所
まで到達できるかもあわせて確認しています。そして、年に一回本番の指令の仕事をすることで、
技術レベルを維持しています。
同じように、最先端の生成AIの技術を取り入れるだけで行政のデジタル化が推進するわけではありません。
システム構成を考え、誰がどのように運用するかを考えなければいけません。
マイナポータルのように一般の人がログインして利用するシステムでは、
システムの運用とシステムのユーザビリティーの検証がさらに重要になります。
民間のシステムにも課題があります。携帯のアプリで記事を読もうとすると、CMが表示されて5秒間待たされたり、
左右からCMが出てきて、どのようにスクロールするか常に考える必要があります。さらにCMを消すボタンが
どこにあるか探すのが大変だったり前面にCMが表示されて、その後ろにある影の薄い記事を読むなど
いろいろ障害がありますが、障害物競争だと思って楽しんで使うようになりました。しかし、CMが収益源だという観点で、
さらにまずい点があります。消したあと気になりはじめて同じCMを見ようとしても
呼び出す方法がありません。クラウドサービス企業が、最終的な利用者である消費者の観点でものを見てなく、
CMが表示される回数やクリックされる回数などのパラメーターで見ていて、CMが最終的に商品の購入に
つながったかどうかには注目していません。カナダ人SF作家、コリイ・ドクトロウが提唱し、2023年に
「今年の言葉」にも選ばれた、Enshittification、オンラインプラットフォームが3つの
段階をへて、ユーザーでも広告主やサプライヤーでもなく、プラットフォーマー自身の利益を最大化してshitに
なるという指摘通りになっているように感じます。4半世紀続いてきた、シリコンバレーのビッグテック企業による
クラウドが世界を席巻する状況が、トランプ政権の終了とともに終焉を迎えるかもしれません。
日本維新の会の地方議員の中に、高額な国民健康保険料の支払いを免れるために、一般社団法人の理事になって
安い報酬に基づく社会保険料を払うという仕組みを利用している人が居ることが問題になっています。
日本維新の会は社会保険料改革を党の方針にしているのに、知り得た健康保険料の矛盾を、
正しい政策を検討するために使うのではなく、自己の利益に活かそうとする人が居るのは
行政のデジタル化、マイナ保険証以前の根本的考え方として大きな問題があります。
2026年はどのようなIT技術が注目されるでしょうか? 私の予測はほとんどすべてハズレですが、
予測がはずれる人は予測してはいけないという規則はありません。
米国と中国によるG2の世界にはならず、Gゼロの世界になると思います。
そして、注目の技術は、GoogleとMetaから発表があったTorchTPUです。
素人にとっては、PyTorchでAIモデルを自作できることが重要で、
torch.device("cuda")と指定した後内部で何が起こっているかまでは考えません。
Google Colabのようなクラウドから、自分のPC、そして携帯電話を含む、モバイルデバイスまで、
PyTorchでAIモデルを自作したり稼働できるようになると参加者が増えます。
ビッグテックの企業によるプラットフォームは今後も重要なものとして存在しますが、それが主役ではなく、
国の予算を投入しての最先端の生成AIの技術もあくまで主役を支えるものとして重要なだけで、
民主主義の考え方のもとで、自分の意志で自分の生活のためにIT技術を活かそうとする人がどれだけ多く居るかが主役となる、
自律分散型のGゼロの世界になると思います。