各種のコラム -- 3ー183 高市内閣30日間の通信簿
2025年11月25日
3ー183 高市内閣30日間の通信簿
10月21日に高市内閣が正式に発足してから一ヶ月が過ぎました。通常新しい首相が選ばれてから100日間は
批判せず様子を見るそうです。今回のコラムのタイトルは通信簿となっていますが、正確な評価基準があるわけではないので、
内容は、高市内閣に対する私の感想です。就任直後から世界の多くのリーダーとの会見や、重要会議への出席が相次ぎ、
非常に高い注目度でした。久しぶりに予算委員会の中継を聞いてみました。ニュースなどでもよく取り上げられています。
皆、何かやってくれるのではないかという期待感は高そうです。しかし主に経済分野の政策について見てみると、
「期待感は高いが、発言内容は意外と古めかしい」と感じています。
企業の設備投資にかかる費用の全額を初年度に減価償却費として計上する「即時償却」の導入に意欲を示し、
「戦略投資を強力に引き出していく極めて有効な支援策になる」と強調しました。国民民主党が提案している、
ハイパー償却税制も基本的な考え方は同じですが、設備投資した年に減価償却費として計上できる額を増やすことで、
企業の設備投資を促進でき、かつ設備が最終的に廃却されるまでのトータルの費用として計上できる
減価償却費の累計額は変わらないので、 お金の時間的価値を無視すれば、名目上のトータルの法人税収には変化が
ないという財務省が好みそうな内容です。しかし、即時償却で恩恵をうけることができるのは、
黒字の企業で積極的に設備投資する企業だけです。後継者問題もあって、設備投資の予定はないという中小企業の
なかに高度な技術を持っていてロケットの部品などを作っている企業があります、そのような企業は
設備投資しないので、即時償却のメリットはありません。やはり企業献金をしてくれる自民党の支持層に有利な
政策が取られているようです。アメリカのビッグテックでは、最近クラウド機器の償却年数を実際より長くして、
利益を過大に見せているのではないかという指摘があります。法人税を払ってでも利益を大きく見せたい理由が
あるのかもしれません。日本の原子力発電所は、原子炉の設備を稼働初年度に即時全額償却することはもちろん
ありませんが、資産除去債務が正しい金額で計上されているか、資産除去債務の貸借対照表価額は割引現在価値なので
割引率をいくらに設定しているか、毎年の減価償却額がそれをすべてを適切に反映したものになっているか、
将来も使い続けるということで減損損失の計上をさけて利益を大きく見せたい理由があるのではないかを
注意して観察する必要があります。所得税や消費税が対価主義なのに対し法人税は時価主義です。会計上の収益・費用と
税法上の益金・損金の違いで法人税の場合、どの業種の会社でも、加算対象になる典型的な項目が、
減価償却超過額加算です。政府の経済政策を見る時、減価償却という言葉がでてきたら、それによって
恩恵をうけるのはどの業界かつねに注目する必要があります。
企業が設備投資で備品を購入した場合、常に資産計上しなければならないということではありません。
現行の法人税制で、取得価額が10万円未満の資産は、原則として購入した年度に全額経費として一括償却(損金算入)できます。
また取得価額が30万円未満の資産は「少額減価償却資産」として扱われるため、一定の条件のもとで、
その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます。新たに 「即時償却」の制度が導入されると、
BtoBビジネスの世界で、購入する側の設備投資額が一定だとすると、新たに、「即時償却」の制度が導入される
設備を販売している業界に有利で、従来から、全部の金額を損金の額に算入できていた業界は相対的に不利に
なるかもしれません。減価償却はキャッシュアウトなしに会計的に費用に計上できる項目で、かつ法人税法上も
一定の制限のもとで損金算入できる項目です。繰り返しますが、経済政策に減価償却という言葉がでてきたら、それによって
恩恵をうけるのはどの業界かつねに注目する必要があります。
ガソリンおよび軽油の暫定税率廃止が実施されますが、これは野党7党共同で再提出されたもので、自民党総裁選挙
がなければもっと早く実施されていたかもしれないのであまり新鮮味はありません。
国民民主党が中心になって提案されている所得税の基礎控除額の引き上げも、現役世代の手取りを増やすが
キャッチフレーズですが、所得が高い人のほうが税率が高いので減税額は大きくなります。どこかで
「うまいことやった」と言っている人がいるような気がします。
総合経済対策の一環で、電気・ガス代の補助が行われますが、これは、消費者に対する補助金でしょうか
それとも事業者や業界に対する補助金でしょうか。形式的には消費者に対する補助金ですが、現実的に電気を使わないわけに
いかないので、電力会社に補助金を与えるのとかわりません。例えば電気代の月額が10,000円だとして、
補助金が2,000円出ると、消費者は実質的に8,000円払うことになりますが、
電気代が8,000円になって、電力会社に2,000円相当の補助金がでるのと実質的にかわりません。
そして、もしイノベーションで、本当に電気代を8,000円にできる会社があらわれても、
消費者は実質的に8,000円しか払っていないので、それほど興味を引きません。
福島県も新潟県も東北電力の地域です。東京電力の原発を建設して、交付金を増額するという昔ながらの
やり方を見直すべき時です。オーストラリア政府は2026年7月、日中の最低3時間、
電気料金を無料にするよう電力会社に義務付けます。日本でもペロブスカイト太陽電池の開発を促進して、
一軒家やマンションの屋根や壁に貼り付けたら、総発電量では総需要に対してどの位の量なのか、
夜の電気をまかなうための方法にどのくらいの設備投資と運転費用がかかるのかの、
本当のデーターを公開して欲しいと思います。既存の原発を延長運転するための口実としてのデーター公開でなく、
ほとんど晴れているサウジアラビアの砂漠で太陽光発電して、液体水素にしてタンカーで運んできたら、
どのくらいの価格になるのかなど、将来の計画を建てるためのデーター公開が必要です。
また給付付き税額控除について、高市首相は「私のこだわり」であり、「早期に制度設計を進める」と発言していますが
また設計するのかという感じです。民主党政権下の平成22年度税制改正大綱に記述されたもので、
日本維新の会も3年ほど前から、給付付き税額控除の制度設計を行っているといっていましたが、
まだ設計するのかという感じです。英国のユニバーサル・クレジットなど、各国で仕組みは異なるものの、
すでに実施されているのに日本では何も進みません。本音では実施したくないのかと疑っています。
関係者から、「給付付き税額控除を実現するには、各世帯や個人の所得、資産などをきめ細かく集める必要がある」
という発言もあったのですが、岸田元首相の時行われた4万円減税と同じ仕組みで問題ないと思います。
一箇所だけ変更すべきなのは、所得税の控除額が不足した時の給付金の支給を市町村がおこなうのではなく、
所得税の還付金と同じ手続きで税務署が行うべきです。公金受取講座が機能する前提なら、
住民税の控除と給付金の支給もそれほど市町村の事務処理の負担にならないはずです。ただ市町村にとっては
個人住民税収の減額になるので、給付付き税額控除を所得税だけで行うか、あるいは軽油取引税額の減収
を補うために、地方交付税交付金を増額するのに合わせて住民税減収分も増額するか、または
地方税である自動車税を軽自動車は現行のままで据え置いて、「ビースト(キャデラック・ワン)」などの
重くて道路に負担をかける車については、思い切って100万円に増額するなどの対策が必要です。
キシバ(岸破)時代と同じことは決してやらないというような内部もめはやめて、一日もはやく実行に移すべきです。
岸田元首相の時行われた4万円減税の事務処理が大変だったのは、1回だけ行ったので、所得税と住民税では
課税のための所得の基準年度が異なるからです。継続的に行えば混乱はありません。給付付き税額控除には
自由民主党、日本維新の会、立憲民主党が共に賛成しているので、他の党も含めて、賛成の党は、
2026年の6月までに設計書を提出して、国民投票でコンテストをやって、最高票数を集めた設計書を
もとに2026年12月の年末調整から実施するくらいのスピード感が必要です。
現行税制で、「各世帯や個人の所得、資産などをきめ細かく集める必要がある」のは、1億円を超える
株式譲渡所得がある人も同じ税率が適用される源泉分離課税制度の改革です。
内閣が好きな、世帯主と配偶者、扶養家族2人の合計4人の世帯を考えます。世帯主が給与所得者で
年収は500万円、配偶者と22歳と20歳の子供3人とも株式譲渡所得が1億円づつあったとします。
配偶者とふたりの子供は、源泉徴収ありの証券口座で、それぞれ2,000万円あまりの所得税を払えば
確定申告は不要です。そうすると世帯主は、配偶者控除38万円 特定扶養者控除63万円の2倍の
所得控除を得ることができ、配偶者は第3号被保険者になり、国民年金保険料を納付することなく
満額の支給をえられます。配偶者と扶養家族は健康保険料を払う必要もありません。22歳と20歳の子供が
本当に自己の勘定で株式投資を行っているとは考えにくいので、親からの贈与があったのではないかという
相続税法上の観点から税務調査がはいるかもしれませんが、所得税法上は合法です。
これはまずいので、ガバメント・データ・ハブを構築して、各世帯や個人の所得、資産などをきめ細かく集める
ことを検討しているそうですが、そのような必要はありません。
証券口座を保有している人はマイナンバーを登録しているので、株式譲渡所得が2,000万円を超える人は、
源泉徴収ありの証券口座であっても確定申告が必要なことにして、所得税の税率を40%にすれば解決します。
簡単にできるのに検討を続けてやろうとしないのは、証券業界が大反対で、自民党の支持基盤だからでは
ないかと思います。じつは源泉徴収ありの証券口座での株式譲渡所得に関連する問題は、高齢者が診療の際に窓口で
支払う自己負担割合が、確定申告するかどうかで大きく変わることもあります。この問題は、
株式譲渡所得が2,000万円を超える人は、源泉徴収ありの証券口座であっても確定申告が必要なことにするだけでは
解決しません。このコラムは他人の主張・行動にきびしく自分の発言に甘い人が書いてるということになります。
マイナポータルなどの話になると、ITに不慣れな高齢者が必ず話題になりますが、杉下右京氏のように
超高速でメールが打てなくても、ほとんど困ることはありません。また若者もIT機器を器用に操作するだけで、
一部の開発研究者などを除けば、日本人はIT技術に興味がないように感じます。そちらのほうが問題です。
若者がIT機器を器用に操作することが出来るのは、日本で生まれた子供がほとんど自然に日本語が話せるように
なるのと同じように、生まれて最初に接するIT機器だけは苦労なく使えるようになるからです。
スマートフォンは器用に操作しますが、PCになると、1995年頃から2008年頃までの間の
生まれて最初に接するIT機器がPCだった人のほうが器用だと感じたことが何度かあります。
スマートフォンもタブレットも画面が縦向きか横向きかを決めるために必ず加速度センサーがついています。
自分のスマートフォンの加速度センサーのメーカーと型番を知っている人はほとんどいません。
Androidの携帯であれば、
SENSOR_SERVICE を引数にして getSystemService() メソッドを呼び出すことで、SensorManager クラスのインスタンスを作成し、
TYPE_ALL 定数を引数にして getSensorList() メソッドを呼び出すことで、デバイス上のすべてのセンサーをリストアップできます。
このことを知識として知っている必要は無いのですが、プログラミングなどに興味を持つ人がもっと増えたほうが良い
と思います。私は、電車が駅から出発する時の加速度を測定してみようと思ったのがきっかけで
趣味で慣性センサーに興味を持つようになりました。今は専用のセンサーで測定していますが、その結果何が
わかったかというと、「慣性質量と重力質量は等価である」という国際宇宙ステーションの中がなぜ無重力になるかという説明に
登場するアインシュタインの一般相対性理論の等価原理が確かにそうだと思えるようになりました。
またジャイロセンサーのドリフトのキャリブレーションをやってみると、南北方向の軸と東西方向の軸ではドリフト
の大きさが異なるので、地球が自転していると思えるようになりました。
またGNSS(GPS)にも興味を持ちましたが、水平方向の精度に比べて垂直方向の精度は一般に劣り、
気圧センサーのほうが精度が良いことがあることもわかりました。ただし気圧は日によって変わるので
キャリブレーションが必要です。また慣性センサーのような積分して値を得る測定では時間の測定が鍵で、
セシウム原子時計より光格子時計のほうが精度が良いという話は、自分とはほとんど無関係という気がしますが、
リアルタイムOSよりFPGAにつなぐほうが、正確な時間でセンサーの値を取得できるというのは経験しました。
仕事でこのようなことをやっているわけではないので、IT技術の発展とは無縁ですが、
成長投資促進でAIや半導体に投資するだけでは、イノベーションは起きません。少年野球の参加者が減る一方で、
将来の大谷選手だけを育てようとするのが無理なように、趣味も含めてIT技術に興味を持つ人を増やして
全体のレベルを底上げしないと、AIや半導体で、イノベーションは起きません。
また政府が特定のプロジェクトに投資するのが妥当かどうかの検討も必要です。金融投資も設備投資も
共通ですが、リスクとリターンは比例します。税金を投入するので失敗できないという考え方は
大きなリターンを得る事と両立しません。HuaweiのHarmonyOSも開発としては大成功ですが、
アプリの数が増えないという課題をもっています。まだ20世紀のIBMのOS/2になるリスクをもっています。
プロジェクトXで紹介されたソニーのプレーステーションもソニーをエンタメ企業にするという大成功のプロジェクトですが、
21世紀初頭に発売されたPS3は、IBMのセル・ブロードバンド・エンジンを使う世界レベルで
エポックメーキングな製品だったのですが、ゲームの数が増えずビジネス的には失敗でした。
何が成功するかはわからないので、大きなリスクがとれる民間のほうが適していることがあります。
グーグルなどの企業が、宇宙にデーターセンターを作って、太陽光エネルギーで稼働させることを考える時代です。
政府が特定のプロジェクトに投資するのは地下資源開発のような、民間ではあまりにもリスクが大きすぎて
スタートできないというようの分野に限るほうがよいかもしれません。
同じことがいえるのが、農業分野で、キシバ(岸破)時代にお米を増産することにしたので、それを打ち消して
お米券を配るというような政策ではなく、農業従事者が高齢化しているので、将来の農業の持続可能性を本気で考える必要があります。
その時、大規模化や法人化、輸出の促進が主流の政策になるでしょうが、それだけでなく、
兼業農家の人や趣味で野菜を育てるような人も無視すべきではありません。
人の数でいえば、圧倒的多数です。多くの人が食料の自給に興味をもつことは非常に重要です。
自宅の庭や、レンタルの農地で野菜を育てるのが趣味という人はたくさんいます。
葉物野菜は収穫してすぐ食べればたいてい美味しいし、基本的に自分が栽培したものは美味しいと感じます。
趣味の人にとって水田の管理はハードルが上がるので、水を張らない田んぼに種を直接まく「乾田直播」も広めるべきです。
ぎっくり腰になるくらい苦労しても、精米するとほんのちょっとしか収穫できないということを自覚した人が増える
ことが、大規模化などの主流の政策とあわせて重要です。
高市首相がサッチャー首相を尊敬しているのは良いことですが、サッチャー首相の新自由主義政策は、20世紀の政策で
それから40年経って欠陥も指摘されています。同じく高市首相が支持するアベノミックスも、デフレ脱却に効果を
発揮しましたが、欠陥も指摘されています。与党野党の審議を通じて、21世紀を見通す新しい新鮮な
政策がたくさん出てくることを期待します。