各種のコラム -- 3ー177 ポイント経済圏について、考える
2025年9月15日
3ー177 ポイント経済圏について、考える
ポイントを上手に貯めて上手に使いましょうという話ではありません。私は、現在のポイント残高は0ポイントですとか、
300ポイントがまもなく期限切れで無効になりますというメールがきて、サイトで調べてみると、500ポイントから、
還元可能ですということがあります。
ポイントを使う時ですが、1ポイント1円として、商品の購入に使えるというパターンが一般的です。
まず商品を購入した時は、通常の価格で購入し支払います。売る側の仕訳は、
売上原価 xxx 商品 xxx (売上原価対立法の場合)
現金 yyy 売上 yyy
で通常の仕訳とかわりません。ポイントが必ず使われるとは限らないので、一般に負債を認識する必要はありません。
ポイントを使って商品を購入した時の売る側の仕訳は、
売上原価 xxx 商品 xxx (売上原価対立法の場合)
現金 zzz 売上 yyy (y = z+w)
売上値引 www (ポイントの金額)
になります。
売上値引きの替わりに、販売促進費として、損益計算書の売上金額を変えないことも可能です。
ところが飛行機のマイルとか、鉄道のグリーン車へのクラスアップで、
ポイントが1ポイント1円よりも有利な条件で還元できることがあります。
これは商品の小売の場合、ひとつの商品に個別の売上原価が対応するのに対して、
飛行機が空席で飛び立っても、ポイントで利用しても、実際に発生する原価がほとんどかわらないということが理由です。
もし通常の料金を払って乗る人で満席になる状況なら、販売機会の損失になりますが、
空席がある状況なら、有利な条件でポイント還元することで、宣伝に使うことができます。
IT技術が進歩して、日付毎の利用者の予測が正確になると、利用できる日を制限することで、
利用者に有利なポイント還元条件を設定できます。
最近話題になっているポイントといえば、2024年6月に総務省から発表された、「寄附に伴いポイント等の付与を
行う者を通じた募集を禁止すること」という【ふるさと納税制度のルール見直し】が発表され、
ポイント付与が2025年9月30日で禁止されることになったことです。
ふるさと納税は、所得税の確定申告における寄付金控除の仕組みを利用した、特定の地方自治体への寄付です。
個人のふるさと納税では、基本的に、 ふるさと納税額(寄付額)から2,000円を控除した額が
総所得金額から所得控除され、それに 所得税の税率を掛けた額が所得税の納付税額から控除されます。
また、同じくふるさと納税額(寄付額)から2,000円を控除した額に10%を掛けた額が
住民税の納付税額から控除されます。その他に、
住民税からの控除の特例分(ふるさと納税額 ー 2,000円)X(100% ー 10%(基本分) ー 所得税の税率)があり、
多くの人が、自己負担額、2,000円で、ふるさと納税額分、税額が控除され、しかも返礼品がもらえて
ポイントが付与されるという感覚で利用しています。
税金を受け取る側から見ると、所得税の控除分の金額と、居住自治体の個人住民税が、寄付された地方自治体に還元されることになり、
地方自治体からは、販売のための事務処理費用が、通販サイトに支払われます。
ポイントは、民間の通販業者が、使われた時に売上値引などを行うので、ポイントを付与しても、
ふるさと納税の仕組みとは関連ないように見えますが、実際は、地方自治体の負担分があるのかもしれません。
ポイントが、純粋に民間の通販業者の売上値引なら、総務省が口を出すことではないように思いますが、
ポイント付与の禁止のみに注目するのではなく、国と地方自治体と通販業者間のお金の流れを
地方交付税交付金と ふるさと納税による財源の比率や地方自治体にとっての使いみちの自由度も含めて
明らかにする必要があります。
携帯電話会社の場合は、ポイントが通話料金の値引きに使えるだけでなく、通販サイトでもポイントが使えるとか、
特定のクレジットカードで通話料金の支払いをすると、通販サイトでも買い物の際のポイントがたくさん
もらえるなど、ポイント経済圏を形成する動きがみられます。ポイント経済圏を形成して、長期に契約する人を
増やそうとする一方で、携帯電話会社間でユーザーの取り合いとして、会社を乗り換えるユーザーには、
有利な契約を提供する動きが見られます。これに関しては、データーを分析して、何が有利になるかを
見極めなければなりません。乗り換えユーザーを獲得するというのは、一見頑張って営業を行っているという
雰囲気になるので、熱心に行う動きがありますが、冷静にみると、広告宣伝費を使って、
営業活動を行い、契約と解約の営業業務に販売費を使っているだけということがあります。
携帯端末の設定を行う際に、付随するアプリを多く導入して、1ヶ月以内に解約処理をしない人から
サブスクリプションの毎月使用料金を受け取るというのは、本来の営業の姿ではありません。
以前、海外資本のコンピューター会社に勤務していた時、PCは、大型コンピューターと違って、
プッシュからプルの営業スタイルに変えて、積極的な売り込みの営業はしないという発表があったのですが、
日本ではなかなか馴染みませんでした。
データーの分析ではなく、とにかく頑張って営業をするのがよいという思い込みが強かったです。
ポイント経済圏を形成する際は、販売費などを抑えて、利用者にとっても事業者にとっても、
Win−Winの関係になるような仕組みを考えなければいけません。
最近、医師と医療機器メーカーの癒着をめぐる事件で、医師が導入機器の選定で便宜を図るかわりに、
業者から、飲食店などで使えるポイントを受け取るということがありました。
医師のような一般に高額所得者の人は、所得税の税率が高いので、
いろいろな手段で税務署に申告しない裏金がはいると、そのまま使えるので歓迎する人がいますが、
この事件のポイントは違法です。
消費者として、ポイント還元を利用した時は、得をしたという感覚になります。
事業として購入するものの場合は、
仕入 yyy 現金 yyy と仕訳しても、
仕入 xxx 現金 yyy
雑収入zzz として、仕入金額を変えずに、ポイントを収入として認識してもかまいません。
いずれにせよ商品を仕入れた時には、その時点で費用として認識するのですが、
事業用設備を購入したような場合は、
機械設備 xxx 現金 xxx
として、購入した物を資産として認識し、機械設備を使用して、収益が得られる時にあわせて、
機械設備の使用期間にわたって減価償却することで、減価償却費として費用を認識します。
そこで減価償却が終わるまでは、設備を使い続けるのが一般的です。
しかし、原子力発電所のように大きな事故を起こして、未償却の設備でも使用を中止して、
将来の収益が期待できなくなった時は、減損損失を計上して、一時の損失として処理します。
太陽光発電は、メガソーラーによる環境破壊が問題になることもありますが、
家の屋根に設置するタイプの太陽光発電を、ほとんどすべての家に設置すれば、相当な発電量をまかなえるのか、
原子力発電所を使うことを考えないと将来の必要な発電量がまかなえないのか、専門家でも
かなり発言が異なるので、よくわかりません。
過去に建設した原子力発電所は、たとえ未償却額があるとしても、建設した時点で、建設費は支払っている、
サンクコストであることを考慮しなければなりません。財務会計上の費用認識がどうであれ、
支払った建設費を取り戻すことは不可能で、これから、原子力発電所をふたたび使うための安全対策に
いくらコストがかかって、発電収益でどれだけのキャッシュインフローがあるのかという
将来のキャッシュフローで判断しなければなりません。
具体的に東京電力ホールディングスの有価証券報告書によると、 福島第一原子力発電所の廃炉には、
影響度 特大、発現可能性 高の事業等のリスクがあるとなっています。
財務諸表の数字でみると、固定負債が3兆3400億円 流動負債が3兆7500億円 純資産合計が 2兆900億円です。
固定負債の内訳で、未払廃炉拠出金、特定原子力施設炉心等除去準備引当金、特定原子力施設炉心等除去引当金
災害損失引当金、原子力損害賠償引当金、資産除去債務など、原発事故に関係するものの合計は、
およそ2兆3000億円です。
福島第1原発の事故処理費用は23兆円で、そのうち東京電力が16兆円を負担すると言われているのと
比較すると、財務諸表の貸借対照表に計上されている金額はわずかです。
有価証券報告書に対する、監査意見は、無限定適正意見なので、財務諸表が企業会計の基準に準拠して作成
されているのは間違いありませんが、監査上の主要な検討事項として、”福島第一原子力発電所の廃炉は過去に実例のない
困難な取り組みであり、廃炉中長期実行プランに基づく費用の見積り及び海外原子力発電所の事故における費用実績額に基づく
概算額で計上している廃炉費用の見積りは変動する可能性があるものの、
会社は以下のとおり現時点 ・ 個々の対策に要する費用の見積額を評価するため、入手可能な情報に基づき合理的な見積りが
可能な範囲における概算額を計上している” と述べています。また122頁には、”福島第一原子力発電所1~4号機の廃止に
関する費用又は損失について、具体的な作業等を検討中であるものについては、将来の処理に要すると見込まれる費用の
現価相当額(割引率4.0%)を計上している。”となっています。
ここで、割引率4.0%に注目します。将来発生する費用について、割引現在価値で計上するというものですが、
仮に30年後に1億円の支出があるとした時、4.0%で割り引く(1.04で30回割る)と、3、000万円になります。
1.0%で割り引く(1.01で30回割る)と、7、400万円になります。 費用は継続的に発生するので、
30年後に一時に発生するものではありませんが、将来の費用の割引現在価値は、割引率で大きく異なる
事例です。日本は10年物の国債の利率が1.5%位で以前はもっと低かったのに、
なぜ4.0%で割り引くのか疑問です。これは福島原発に限ったことではありませんが、
実質長期金利が1%程度の時に4%の割引率を使うと、投資の収益は低く見積もられ、なかなか設備投資をしても、
採算がとれないということになります。一方、負債や、資産除去債務などは返済や発生する時期を先延ばしすればするほど、
割引現在価値が下がって、貸借対照表は美しくまとまります。日本はデフレの時代が30年続きましたが、
割引率を実質長期金利より高く設定したために、金融緩和しても投資が促進されなかったのか、デフレの時代に投資したくない
という気持ちがあったので、貸借対照表を美しくまとめるための手段として、4%の割引率が使われたのかはわかりませんが、
先進国で、デフレの時代が30年も続いたのは、日本だけだといわれているので、日本の経済学者が
分析していろいろな見解を発表することが期待されます。コンクリートから人へといわれた時代がありましたが、
結局コンクリートにも人にも投資しない時代が続きました。以前なら定年退職していた高齢者を安い給料で
雇用し続けることが続きました。若いうちは給与にあまり差がなくて、退職後に実質天下りする公務員や
管理職として納品業者からポイントなどの恩恵をうけた後個人で開業する医師などの高額所得者と、現役当時より安い給料で
働く人の間に経済格差が生まれて、世代を超えて格差が引き継がれる現象が見られます。高額所得者が株式投資
することで、株価は上昇しましたが、増加した企業価値は、利益剰余金として企業内部に蓄積されました。
このように、文章で書くのではなく、経済学は、素人が見てもわからないような数式を
たくさん並べないと論文にならないようですが、日本の経済学者が分析していろいろな見解を発表して、
ノーベル経済学賞を受賞するようになれば、諸外国の日本にたいする見方が変わります。
一方で、トランプ大統領がノーベル平和賞を受賞するようなことがあると、ノーベル賞の品位が下がります。
コロナ禍の頃、将来の感染者数のAI予測モデルが何度もニュースで紹介されました。また予測がはずれるだろうと
思っていたら、やはりはずれたということが何回かありました。はずれた時だけニュースになったので、
そのように感じたのかもしれませんが、感染者数は、潜伏期間とどれだけの割合の人に感染するかと、
接触人数から予測できるので、AIモデルとしては、言語モデルほど大規模モデルでなくてもよいのではないかと思います。
にもかかわらず感染者数の予測がはずれたのは、正確な感染者数と、接触人数が正しく測定できていなかった
からではないでしょうか。素人考えなので、間違いかもしれませんが、AIモデルが正しくても、
正確な現状のデーターを入力しないと、正しい将来の予測はできません。
接触人数を人流データーだけから予測するのは無理があるのかもしれません。
接触人数の測定というと、COCOAというアプリがあって、ある日まったく動いていないことがわかって、
けちょんけちょんになったのですが、ブルートゥースv6.0になると、現在の電波強度による距離の
測定から、対象物に当たって跳ね返ってくるまでの時間差を計測し、距離や方向を測定できるようになります。
ライダーセンサーほど正確ではないようですが、再度チャレンジすることも考えられます。
中央省庁のアプリで、けちょんけちょんになったものが再登場することはないかというと、
そうとも言い切れません。
1990年代にKSK(国税総合管理システム)というシステムがあって、数千億円の開発費をかけたのに、
完成の目処がたたないといって、けちょんけちょんになったことがあります。しかし、このシステムは
2001年に完成しており、しかも2026年にはKSK2に進化する予定です。
20年あまり稼働していて、何に使われているかというと、国税庁や税務署などでの業務に使われています。
全国の税務署を通じて、基本的にすべての法人の確定申告書が国税庁に集約されるので、
例えば、日付、金額、勘定科目などの要件で、仕訳を突合して、取引の実態を明らかにすることができます。
あるいは、所得税の確定申告書の各年度分を保存していて、相続税の申告があった時の被相続人の財産状況の検証に
使ったりします。正しいデーターを大量に保存して業務に活かすを実践しています。
政治資金収支報告書の作成に、クラウド会計ソフトを使うのも良いのですが、やり方がわからないという
会計責任者の人は、国税庁に外注すれば、検察から何も指摘されることがないような完璧な報告書が出来そうです。
日本の台風の予測は、富士山頂に観測所をつくって以来、世界最高レベルだったのですが、
日本近海で突然台風が発生したり、線状降水帯が発生するようになって、
従来のやり方ではカバーしきれない部分が出てきたようです。
南方で発生した台風が、どのようなルートでいつ頃日本に接近するかは正確に予想できても、
海から発生する水蒸気が多くなって湿度が高くなっている時、どこで、雨を降らせる雲ができるのか、
低気圧が発生するかは、それほど正確に予測できていないように感じます。
海の温度が高くなっているので、同じ飽和水蒸気と言っても、中に含まれる水の量は、以前より多くなっています。
新しい、AIモデルを使った予報も併用するとか、所定のアプリで一般の人が撮影したした画像も
予報に活かすなど、新しい取り組みが必要になりそうです。大量の情報で学習済みのモデルがあっても、
毎日新しい言葉や情報を追加して学習する必要がある、大規模言語モデルに対して、
PINN(Physics Informed Neural Networks)と Transformer
を組み合わせたAIモデルというのは日本人の気質に合っているように感じます。(個人の感想です)
特定の海域の天気予報なら、ほとんど正確にわかるという漁師の人などがいます。日本のデーター処理は、
公的に信頼されるデーターのみに基づいて行うということで、一定の信頼を得てきたのですが、
幅広くデーターを集めて、ノイズを含むデーターも処理できるような能力を身につける必要があります。
AIモデルは、大規模言語モデルのように大きければ大きいほど良いという面もありますが、
特定の領域に区分して信頼されるデーターを集めるというアプローチも無視できないかもしれません。
近年、急速にアメリカが信用を失っている、感染症対策や気候変動対策の分野で日本が科学的に存在感を示せば、
世界から注目されます。ここでも、正確な大量のリアルタイムのデーターの入力があって、
はじめて、AIモデルが活かされます。
将来の感染者数のAI予測モデルを作る時、コロナ感染症のデーターとインフルエンザのデーターなど、
数多くのデーターを集めて学習するのが良いのか、モデルもデーターも区分しておこなうのが良いのか、
線状降水帯の予測なら、毎年いくつか発生するので、学習データーは十分なのか、
「解党的出直し」と解党して出直しは、同じ意味なのか、異なるのかなど、
これからは、AIを使うことを前提として、AIでも人間でも正しく判断できるような
データーの収集と集積を考える必要があります。
現在のポイント残高が0ポイントだったりする人が言ってどれほど説得力があるかは疑問ですが、
IT技術やAIが進歩した現在では、より信頼ある良質なデーターとその分析力が重要になります。