各種のコラム -- 3ー176 「健康保険証」はどうなった?!
2025年9月1日
3ー176 「健康保険証」はどうなった?!
マイナンバーカードを健康保険証として使用するマイナ保険証は、一時マイナンバーと健康保険証の番号との
ひもづけに間違いがあることが大問題になりました。おおむね解決したようですが、最近また問題が発生しました。
2025年7月いっぱいで国民健康保険証の有効期間が満了し、マイナ保険証しか使えなくなったからです。
(一部の市町村では、9月30日などに有効期間が満了する場合もあります)
そこで、患者がマイナンバーカードを利用して電子資格確認を受ける場合は問題ありませんが、
マイナ保険証を持っていない人(マイナンバーカードを所持していないか、所持していてもマイナンバーカード
を保険証と連携して使う手続きを行っていない人)に対して資格確認書を発行することになりました。
しかし、有効期間が満了した保険証を持参するなどの問題の発生が予想されたので、
マイナ保険証を持っている人に対して発行される、資格情報のお知らせや有効期間が満了した保険証を持参した
人に対しても、令和8年3月末までの対応として、被保険者番号等によりオンライン資格確認システムに
資格情報を照会するなどした上で、保険診療を行い、あわせて、保険医療機関等から患者に対し、
次回以降はマイナ保険証又は資格確認書を持参いただくよう働きかける扱いをすることに御協力いただくように
との通知が厚生労働省保険局医療課からだされました。
問題の根源は、マイナンバーカードの所有は強制でないのに、マイナ保険証の移行に際して、
健康保険証の発行を中止したことです。ICカード乗車券の発行を始めた日に、切符の販売を中止すれば
大混乱が発生します。しかし、健康保険証については軌道修正して、マイナ保険証も従来の健康保険証も
使えるようにすることは検討されませんでした。健康保険証の発行の廃止の方針のままで、
資格確認書を発行し、さらに当面の措置として、有効期限の切れた健康保険証でも、
保険診療を行うなどの措置がとられました。一度決めたことを遡及して変更することを、
自らの瑕疵と考えて誤りの救済でさらに問題を複雑にする「無謬性の神話」の典型です。
そもそもの原因として、まず最初に、健康保険証よりもマイナ保険証のほうが便利だと思うような制度に
して、ポイントがもらえるからではなく、多くの人が希望してマイナ保険証に移行するような機能を
備えるべきでした。8月21日の読売新聞の社説では、「マイナ保険証」への移行について、
”急( せ) いては事をし損じるという 諺 (ことわざ) がこれほど当てはまる政策も、そうはないだろう。”
と言っています。同感です。
運転免許証とマイナンバーカードとの連携はマイナ保険証とならんで話題になりますが、
連携のやり方はかなり異なります。
運転免許証の更新と同時に、運転免許証とマイナ免許証の2枚持ちをする場合の手続きを見てみます。
マイナ免許証の発行を希望した場合、マイナンバーカードのICチップに、
氏名、住所、生年月日に加えて、免許の種類、免許証の色区分、有効期限等免許証に記載されている情報
が書き込まれます。運転免許証のICチップ用の2つのパスワードに加えて、マイナンバーカードの
利用者証明用電子証明書暗証番号とは別に、マイナンバーカードに記録した免許情報等の読み出しの
ための4桁のパスワードを指定します。免許情報等の記録は、自分ではできません。
都道府県によってことなりますが、免許証のみを発行する場合より、マイナ免許証との2枚持ちにする場合の
更新手数料が100円位高い場合が多いので、警察で免許情報等の記録を行う手数料が100円ということのようです。
そして、マイナ免許証を所有していて、オンライン講習や、住所や氏名が変更になった場合、市区町村への届け出だけで、
運転免許証の記載事項変更手続きが完了し、従来のように警察署に行く必要がないなどのメリットを受けるには、
マイナ免許証をマイナポータルに連携する必要があります。
マイナ免許証をマイナポータルに連携するには自分でマイナポータルにログインして行うか、
警察署に設置された自動受付機でマイナポータル連携のメニューを選択し、マイナンバーカードの
署名用電子証明書暗証番号を入力することで完了します。
さらにマイナ免許証には注意すべき点があって、マイナンバーカードの有効期限と運転免許証の
有効期限が一体化されるわけではなく、マイナンバーカードを更新した場合は、ふたたび警察署で
新しいマイナンバーカードに免許情報等の記録を行う必要があり、これをおこたると免許証不携帯になります。
ただこれについては、今年度中に更新した新しいマイナンバーカードに、免許情報が引き継がれるようになります。
マイナンバーカードの券面には、免許情報等は何も記載されていないので、専用のアプリで読み出す必要があります。
このアプリの画面に表示される免許情報等では、運転免許証としての効果はなく、マイナンバーカードを
携帯する必要があります。 「マイナ保険証」の機能を搭載したスマートフォンの場合は、医療機関で
読み取りができない場合、マイナポータルにログインして、資格情報の画面を提示すれば、
保険診療を受けられるということですが、運転免許証の場合は、マイナンバーカードを
携帯する必要があります。
マイナ保険証の場合、マイナンバーと健康保険証番号の連携は、政府関連のシステムで行われており、
連携情報はマイナポータルで確認できます。医療機関で確認しているのは、マイナンバーカードによる
本人確認で、オンラインで、マイナポータルにアクセスし、システムから健康保険証の連携情報を読み出しています。
それに対して、マイナ免許証では、マイナンバーカードに、免許情報等が記録されます。
高齢者はITに不慣れであるといわれます。それは本当かもしれませんが、若い人はすべてITに慣れ親しんでいるかと
いうとそうではなく、得意な人もいれば、ほんとうはさっぱりわからんという人もいるのではないかと思います。
マイナ保険証もマイナ免許証も手続きは正確に行われていて、ミスの割合は外国にくらべて日本は低いといわれます。
しかし、読み取りができないなどミスが起きた時、ミスに遭遇した人には重大な影響がでます。
例えば、仮にマイナ免許証のICチップの読み取りエラーで免許証不携帯になった場合、
処理の取り消しがおこなわれないと、重大な不利益が発生します。
マイナンバーカードは一時的な処理のミスがあっても許容できて、面倒な処理が大幅に簡略化されるような
利点が得られる分野に使うほうがメリットを享受できます。
例えば、最初に「みどりの窓口」ができた時、同じ座席に指定券が2枚発行されるミスがあっても、
全国の列車の座席の指定券が購入できるというメリットのほうが大きかったので、ほとんどの人は歓迎しました。
現在なら、公共交通機関の料金支払いが便利になれば、多くの人が、マイナンバーカードや
ICカード乗車券のマイナンバー連携を利用します。
はじめての場所にいって公共交通機関を利用する時、どのICカード乗車券が使えるのか、
クレジットカードが使えるのか、あるいは現金しか使えないのかがわからず苦労します。
どの乗車口から乗って、乗った時にICカードを読み取らないといけないのか、降りる時はどの
扉を使えばよいのか、わかりません。JRの指定券でも、チケットレスのほうが安くなるものや、
オンラインで予約していても、指定券を発券しないと乗車できないものがあります。
これらすべてがマイナンバーカードあるいはマイナンバーカード連携した携帯電話があれば利用できるとなると
多くの人が利用します。マイナンバーカード連携した携帯電話であれば、GNSS(GPS)センサーや
加速度センサージャイロセンサーで、どこをどのような手段で移動しているのかを記録することが
可能です。個人情報を削除した形で、すべての交通機関の利用状況を収集すれば、
どこからどこに行きたい人が、どの特定の交通機関を利用するのかの分析も可能です。
利用料金は、公金受取口座のような口座を登録しておいて、各交通機関への利用料金の按分は
記録された利用状況により行います。
そのためには、各交通機関への利用料金の按分方法が法人税法上の収益、費用の按分方法として
認めれたものにするなど、法的な整備が必要になりますし、インバウンドの観光客にどのように対応
するかも考えなければなりませんが、現在のように、限られた区域で、ICカード乗車券のマイナンバー連携を
試してみたという言い訳のように実施するのではなく、多くの人の意見を集約した上で、
人と1対1に対応するマイナンバーを、生活の利便性向上に活かす方法を考える必要があります。
トラックドライバーの時間外労働時間の上限規制がおこなわれ、荷物が運べなることが問題になっていますが、
トラックの平均の積載率は40%です。すなわち60%のトラックは空で走っています。
部分的には共同輸送など改善の取り組みがされていますが、なかなか全体に効果が波及しません。
全体に効果が波及させるためのIT技術AI技術の利用について、全国的に検討する必要があります。
最近Google検索すると、AI GeminiがAIによる概要を表示します。
それだけで用が足りて、概要の下に表示されるサイトをクリックしないことが増えました。
各サイトでCMが表示される回数が減ることが問題になっていますが、もっと大きな生成AIによる
IT技術の利用方法の変化が起きています。
AIによる概要でわかった後、表示される関連サイトに行って、サイト内検索すると、
必要な情報に行き着けないことがあります。トップ画面にイメージ動画が長いこと表示されて
メニューが表示されないことがあります。また携帯で、画面が替わるたびにCMが表示されて閉じるボタンが
見つからないことがあります。新聞の広告欄が大きくなりページ数のわりに記事の量が減った頃から、
新聞がリアルタイム性にとぼしいオールドメディアといわれるようになった頃を思い出します。
どういうCMが表示されるかは、ユーザーは制御できず、子ども用などアクセスサイトの制限をかけても、
CMの表示を制限できない点は、新聞広告より問題が大きいです。
生成AIによるサービスは今の所CMを表示しない方向なので、今後生成AIを含むWebサイト全般がどうなるか
注目です。SEO(Search Engine Optimization)を考慮して、
サイトの検索表示順位をあげるより、基本的に必要な情報をわかりやすく表示
することを考え直す必要があります。
最近、東海道新幹線のN700Sの電車から煙が出るという事故がありました。
原因となった、「主変換装置」は、16両編成なら、24台あり、1台で1両分の4個のモーターを制御できるので、
絶対に故障してはいけない部品ではありません。しかし、発煙は許されません。ただ、絶対許されないと言っても
発火に比べると発煙は、絶対許されないレベルが異なります。
再発防止のための原因究明を徹底的におこなう必要があります。
システム設計にあたっても、同じように、処理のミスがあっても、それを補う措置がとられるものと、
絶対ミスがあってはいけないものを区分して対策をとる必要があります。
また最近、台湾の高速鉄道に、N700SをベースにしたN700STが導入されるという発表がありました。
12編成144両で契約額はおよそ、1240億円です。1両およそ8億6千万円です。
JR東海が2020年から2022年にかけて40編成640両を導入した時の契約額はおよそ、2400億円だったので、
1両およそ3億7千万円です。天候不順によるインフレとトランプ関税の影響ではないようです。いくらトランプ大統領でも
日本と台湾の貿易に割り込んで関税をかけることはないはずです。本当の理由は知りません。
さらに完成予想図をみて注目する点があります。先頭車両の運転席用のドアがついています。
台湾高速鉄道のドラマで、台湾側が台湾高速鉄道は日本の技術とヨーロッパの技術のベストミックスであり、
日本の車両をそのまま導入するのではないといった時の象徴が運転席用のドアで、結局700Tでは、
運転席用のドアをつけないかわりに、先頭の客室ドアに手すりがつけられたのですが、
今回は日本と同じになりました。
さらに発表された完成予想図だけではわからないのですが、座席配置に注目しています。
700Tの車両をトイレと洗面所が奇数号車の東京寄りになるように置くと、山側(富士山側)が3列席になります。
これは台湾側の要求ではありません。16両編成を12両編成にする時、床下機器の収納が難しく、無理やり配置しましたが、
車両の左右の重量バランスがとれませんでした。最終的に重い3列席と軽い2列席との配置を入れ替えて、
バランスをとりました。N700STでは、主変換装置なども小型化され、冷却用のブロワーも不要になったので、
4両単位で編成の車両数を増減できるので、16両編成を12両編成にするのは簡単にできます。
座席配置は、日本のまま山側(富士山側)が2列席で問題ありません。
ただし、台湾の高速鉄道の場合、700Tの車両からN700STの車両に切り替えている時は混乱するので、
700Tの車両にあわせてN700STの車両も、山側(富士山側)を3列席にするかもしれません。
その時、車両の左右の重量バランスがとれるのかが問題になりますが、山陽新幹線の「みずほ」「さくら」などの
車両には、普通車で2列2列の座席の車両があるので問題ないかもしれません。
N700STは空気バネ車体傾斜なので、振り子電車ほど車両の左右の重量バランスを厳重に管理する必要はありません。
「みずほ」「さくら」のN700系電車は1号車の座席が12列です。「のぞみ」のN700系電車は
1号車の座席が13列です。これは、「みずほ」「さくら」が他の号車と座席の間隔を同じにしてあるのに対して、
「のぞみ」は、700系電車とN700系電車が走る時期があったので、座席の間隔を縮めて定員を同じにした
からです。700系電車とN700系電車は車両の長さは同じですが、先頭の流線型の部分がN700系のほうが
長いので、客室が短くなっています。台湾の高速鉄道の場合、700Tの車両からN700STの車両に切り替えるので、
「のぞみ」のように1号車の座席を13列にするかもしれません。
700系電車とN700系電車は流線型の部分の長さは違いますが、運転席の位置は同じです。
電車を駅に止める時、運転席から見て停止位置目標と横の窓の印が重なるように止めます。
運転席の位置が同じなので、停止位置目標は共通です。運転席の位置は同じですが、運転席用のドアの位置は異なります。
「のぞみ」が、700系電車とN700系電車が走っていた時期は、駅に止まると、最後尾の車両の
車掌さんがドアを開ける前にホームを指差して、”N700系停止位置オーライ”のように確認していました。
台湾の高速鉄道は、運転席用のドアが無いので、車掌さんがドアを開ける手順が異なります。
システム開発にも似た部分があって、新しいシステムを作る前には、現行のシステムでの業務手順を
確認して、移行手順を考える必要があります。システムの刷新にあたって、業務に業界のベストプラクティスを採用し、
効率化を目指すということがあるのですが、たいていは、新しいシステムを使うための
業務時間が余計にかかって、マイナ保険証の移行に際して、健康保険証の発行を中止したら
数多くの問題が発生したというような状態になります。
マイナ保険証だけでなく、マイナンバーカードにも問題があります。
マイナンバーカードには、署名用電子証明書用、利用者証明用電子証明書用、住民基本台帳用及び券面事項入力補助用の
4つの暗証番号がありますが、これらの用途を正確に理解している人はまれです。
4桁の数字の暗証番号と確定申告などの際に使う長い暗証番号があるという理解の人がほとんどで、
若い人も高齢の人も、ITに慣れている人も不慣れな人も、住民基本台帳用暗証番号や
券面事項入力補助用暗証番号をどのような時にどのような目的で使用するかを理解している人はほとんどいません。
物理的な鍵に例えると、どの鍵がどこの鍵かわからなくなったので、
署名用電子証明書用の鍵だけ特別な鍵にして、他は全部同じ鍵にしたという状態で、
どこの鍵が何のために鍵をかける必要があるかを理解していない状態です。
これは、マイナンバーやマイナンバーカードの仕様を決める人が、法律に違反していないか、
国会で質問されたらどのように答えるかを考えて作成して、多くの利用者がどのような場面でどのように使うかを
考えて作成していないからです。マイナンバーカードの仕様が、法律に違反していてもかまわないと言っている
のではありません。詳細設計の仕様書は素人が読んでも理解できないでしょうが、機能設計の仕様書は
読まなくても、使っていれば、自然にどのような目的でどのようになっているかが
想像できるような仕様書になっている必要があります。自民党の臨時総裁選挙について、
選挙の実施を求める議員が署名となつ印をした書面で申し出るとともに、
選挙管理委員会は議員の名前を公表することになりました。マイナンバーカードを利用した顔認証システムにより
行うのだと思っていましたが、自民党の国会議員のなかには、マイナンバーカードを保有していない人がいるのでしょうか。
マイナンバーカードの所有は強制でないので法律違反ではありませんが、衆議院共済組合診療所でマイナ保険証を
利用する時困るのではないかと思います。それ以上に、マイナンバーに関する法案を審議する人が、
マイナンバーカードを利用していないと、どのような機能設計の仕様書にすべきかをユーザーの立場で
考えられないことが、大問題です。
それから最後にもうひとつ、減税定数というパラメーターがあります。
諸外国は、3とか4とかですが、日本は0.2とかいうので、パラメーターの定義が異なると思い込んでいました。
しかし、本当はパラメーターの定義自体は同じで、日本人は貯金が好きなので、減税で手取り所得が増えても、
消費に回さないので、限界消費性向が0.5より低く、景気が良くならないので、減税定数が低くなるという
のが財務省の考え方で、増税したほうが景気がよくなるそうです。(直接財務省の人に聞いたわけではないので、
これも間違えた理解かもしれません。)しかし、機能設計の仕様書が、使っていれば、自然にどのような目的で
どのように作られたシステムかが理解できるものでなければならないように、政策も、消費者が生活の中で
感じる感覚で自然に理解できるものでなければなりません。