各種のコラム --  3ー170 平成の米騒動、令和の米騒動

                                      2025年6月20日  

    3ー170 平成の米騒動、令和の米騒動
    
   
   2025年上期の日経MJヒット商品番付の、東の横綱はコメのインフレによる消費の変化を表した
  「米(コメ)フレーション」でした。
  お米の店頭小売価格は、2024年夏ごろから上がり始め、5kgの価格が、2,000円程度だったものが、
  半年で、2倍の4,000円を超すレベルになりました。
  2024年には、小売店の売り場にお米が無くなるという事態も起きました。
  およそ30年前の、1993年にも冷夏で記録的な生育不良になり、小売店の店頭から米が消えるといった混乱が発生し、
  タイ米を輸入するなどの対策がとられました。
  翌1994年には、一転して水不足と言われた夏の猛暑により米の作柄が回復したことを受け、米不足は同年後半に収束しました。
  輸入したタイ米が、日本とは品種が異なり、日本米のように炊飯器で調理するとまずかったこともあって、
  一部で廃棄されるものがでるなど、問題になりました。
  1993年当時のお米の標準の供給量は約1,000万トンでしたが、1993年は、およそ30%減少し、700万トン
  余りになりました。
  今回の令和の米騒動の発端は、2023年が不作だったことですが、現在の標準の700万トン程度に対し
  約30万トン程度の供給不足が発生したことがきっかけとなりましたが、生産量が激減したわけではありません。
  価格については、5kgの小売価格は、1993年当時が2,500円から3,000円で、
  2024年の始め頃は、2,000円程度で若干安くなっていました。
  一方で、「相対取引価格」と呼ばれる、「集荷業者が卸業者に販売する価格」は、1993年当時は、
  60kgあたり、22,000円位でしたが、2022年当時は、12,000円位まで下落していました。
  そこから急激に上昇し、現在は、23,000円位です。
  60kgあたり、22,000円は、5kgあたり、1,800円位です。これに流通費用や精米の費用が
  加算されるので、当然小売価格はこれより高くなります。
  生産者の卸売価格が、、1993年から、2022年までの30年で、半分近くになっているのは、
  合理化による生産性の向上とは思えず、生産者が今後も継続して事業を継続できるよう、
  適正価格を維持する必要があります。それに応じて、小売価格もしだいに上昇するのは、やむを得ませんが、
  2024年半ばからの1年で2倍になるような価格の上昇は、お米が主食であるだけに大問題です。
  政府備蓄米を放出しても、小売価格にほとんど変動がなかったのですが、江藤拓前農林水産大臣が失言で更迭され
  小泉進次郎氏にかわり、随意契約で低い価格で、政府備蓄米の放出がはじまり、古古米や古古古米については、
  5kg2,000円程度で、小売の店頭に並びました。江藤氏は失言により更迭されたことが唯一の業績だった
  という状態になりました。古古古米も味にそれほど問題がないというコメントが多かったのですが、
  あるラジオ番組で、お米マイスターの人が調理したご飯を食べてみるという調査をおこなっていました。
  古古古米は袋を開けた時点で、かなり悪臭があるので、いきなり5kg買うのではなく、ためしに1kg
  などを買うのがよいとも言っていました。上手に調理するとけっして食べられない味ではないそうです。
  ユニークで役に立つ番組だと感じました。古古古米という名称もあまり受けがよくないので、私は、3K米などに
  変更したほうが良いと思いますが、3K米はもっとよくないかもしれません。
  平成の米騒動については、お米の供給量が冷害で3割程激減して、翌年は奇跡的豊作だったので、問題が
  解決したということで納得がいく現象ということもできます。お米の冷害というのはよく聞いていたのですが、
  高度経済成長とともに、味の良いお米を作らないと高く売れないということで、宮城の「ササニシキ」のような
  美味しいお米が作られていたのですが、平成の米騒動ではほとんど収穫できないという大損害が発生しました。
  それに対して、令和の米騒動ではそれほど極端なお米の収穫量の減少が起きたわけではありません。
  何か農業従事者の減少のようなもっと根本的な問題が起きていて、誰も把握できていないのではないかという
  不気味さがあります。例えていうと、世界的なリセッションが起きた時、日本はたいてい、日本国内で
  深刻な事態が起きているわけではないので、事態を冷静に見守るというのですが、
  結果的に世界中でもっとも貧乏くじを引くような影響が持続することがあります。
  同じようなことが起きているのではないかという漠然とした不安があります。
  お米の流通に関しては、実際の状況をよく知らないので、平成の米騒動があり、令和の米騒動が起きている
  という以上に具体的なことはよくわからないのですが、今回の令和の米騒動が、2023年の不作がきっかけとなっており、
  しかもそれほど異常な生産量の減少ではないことは注目する必要があります。
  ウクライナ戦争があり、世界的な食料供給不足の懸念が危機をあおったとか、買いだめがあるなど、定性的な
  コメントではなく、流通の実態を把握した分析をおこなう必要があります。
  このこととも関連しますが、スーパーなどでの食品の小売に関してぜひやって欲しいことがあります。
    
  現在の紙のレシートにかわるデジタルインボイスの導入です。デジタルインボイスは、消費税の仕入税額控除に関して
  取り入れられたため、嫌悪感を持つ人が多いですが、請求書や領収書などの証憑書類を紙ではなく、
  世界標準規格のPeppol仕様のxmlファイルでやりとりするものです。
  スーパーなどでは、携帯電話での決済が広まっているので、合わせて紙のレシートではなく、xmlファイルを
  受け取るサービスが始まると、Peppol仕様に対応する会計ソフトなら、自動仕訳できます。
  レシートを写真に写して家計簿に記帳するのが悪いとは言いませんが、自動仕訳のほうが簡単で確実です。
  また、冷蔵庫の商品を取り出して写真を写して、レシピを考えてくれるアプリがありますが、
  Peppol仕様のxmlファイルがあれば、レシピアプリと連携して、現在冷蔵庫のなかに在庫されている食品は
  管理できます。さらに、xmlファイルのなかに、商品のバーコードを含めておけば、
  アレルギー物質が含まれていないかの管理も自動で出来ます。バーコードのなかには、最初の2桁が02または20〜29
  ではじまる、国別コードから始まるものではない、価格コードなどのインストア・コードのものがあります。
  たとえば精肉などで、13桁の最後のチェックデジットをのぞいた、8桁目から12桁目までが、
  商品の価格になっているコードでは、アレルギー物質の確認ができないかもしれませんが、
  実際に、デジタルインボイスを使い始めることで、対応方法が見つかってきます。
  また、塩の取り過ぎがよくないと言われますが、例えば市販のカレールーや、レトルト食品を食べた時、
  何グラム塩が入っているかを管理するのは大変ですが、xmlファイルと、レシピアプリの連携で、
  健康管理に使うことができます。ITの利用が得意か不得意かは、IT機器に器用に正確にデーター入力が出来るかどうかではなく、
  自分の生活にどのようにIT技術を取り込めば、生活の質が向上するかを考える事が出来るかどうかが、重要になります。
  
  Webブラウザーの閲覧履歴に基づいて、関連する商品の宣伝が表示されるのは、20年くらい前にはじまった頃は、
  斬新なアイディアだと感じました。しかし、最近は携帯の画面を開くたびに広告が表示され、閉じるマークの位置が
  わからず、広告を閉じるつもりが、画面を閉じてしまうなど、Web広告がじゃまだと感じることが増えています。
  どのような広告が表示されるかは、そこの表示場所にリアルタイム・オークションで一番高い値段をつけた業者のものが
  掲載されます。しかし、業者の意見をとりいれるのなら、ユーザーの意見もとりいれるべきです。
  目立つことを目的にした、動画のイラストなど、画面をみるのにじゃまだと感じる広告を
  消して2度と表示されないようにする機能をブラウザーに追加すべきです。
  逆に直前に表示されて見逃した広告を、もう一度見たいと思っても再表示する機能はありません。
  Webブラウザーをユーザーは無料で利用することができ、Webブラウザーを提供するメーカーの収益源は、
  広告を表示する会社です。しかし、ユーザーの意見が取り入れられなくなると、
  関連する技術や事業が衰退することがあります。
  
  参議院選挙が近づいており、各党が消費減税や定額給付金などの政策を発表しています。
  そのなかで、定額給付金の支給は、一般のアンケートでもバラマキ政策として評判が悪いのですが、私は賛成です。
  現金給付を歓迎するのが一番の賛成の理由ですが、もうひとつ理由があります。
  コロナ禍の時に、ひとり10万円の定額給付がおこなわれ、マイナンバーカードと、公金受取口座登録制度があれば
  ただちに給付が可能だという政治家がいて、郵送による方法と並行して実施されましたが、
  大混乱になりました。初めてだから混乱があったのはやむを得ないとしても、
  その後どのような対策がとられたのかが明らかになっていません。
  公金受取口座登録制度はマイナポイントがもらえたから良かったではなく、実際にどのように運用される
  のかを知ることができることが重要です。重要な個人情報なので、どのように管理され何に使われるのか、
  もし、ユーザーが公金受取口座に登録した口座を廃止し、公金受取口座の登録の変更を失念していた場合、
  どのような不都合があり、公金受取の機会をのがした時の法律的な扱いはどうなるのかなどが周知されていません。
  今回、定額給付が低額給付でも良いので、マイナンバーカードと公金受取口座登録制度が
  有効に活用できることを示して欲しいと思います。行政がデジタル化されると便利になるといわれますが、
  「誰一人取り残されない」を実現するのは困難です。郵便ですべての人に連絡することに関しては、
  海外居住の人はどのように扱うか、ホームレスの人はどのように扱うかなどが長い歴史のなかで、
  一応確立した方法があります。これらをデジタル化した行政手続きでどのように引き継ぐか、
  IT機器を持っていない人の扱いはどのようにするのか、実績を積んで検証して行く必要があります。
  定額給付に関連して、所得税の給付金付き税額控除は
  いろいろな政党が、将来の制度として検討するといいますが、今すぐ実施するという政党はありません。
  政治家が将来に向けて検討するという時は、何もやらないという意味だといわれますが、
  すくなくとも何が実施するための課題かをもっと具体的に説明してほしいと思います。
  給付金付き税額控除のためには各個人の資産の把握が必要だという人がいますが、そんなことを言っていたら、
  いつまでたっても実施できません。現金預金をもっている人と、有形固定資産を持っている人の
  資産保有額をどう扱うのか、公益財団法人の出資金を保有している人、社会福祉法人や宗教法人を保有している人
  そして何より政治資金管理団体を保有している人に課税するためには、政治資金収支報告書に、
  繰越現預金の残高を表示するだけでなく、貸借対照表(財政状況報告書)を含める必要があります。
  それから、相続税は、資産課税でありかつ所得税を支払った後の残余財産に関する課税ですが、
  相続税を支払った後の相続財産にさらに毎年所得税を課税するのでしょうか。
  所得税の徴収は財務省・国税庁・税務署がおこない、給付金は総務省と地方自治体の窓口で行うなど、
  デジタル技術とは無関係の、組織の問題を解決するのが先かもしれません。
   
  以前、消えた年金が大問題になったことがあります。
  過去の消えた年金をすべて回復することはできませんでした。厚生年金の保険料を給与から控除するだけで、
  本来、事業者負担分を加えて納付しなければならないのに、法人事業者が自分の懐にいれたのが、
  大きな原因といわれています。法人事業者は赤字でも黒字でも法人税の確定申告をする必要があるので、
  社会保険庁(現在は日本年金機構)と国税庁の記録を照らし合わせれば調査可能ですが、行われませんでした。
  しかし、再発防止策として実施された、年金定期便は有効な対策でした。
  公的年金の保険料納付実績や将来受給できる年金額の見込みなど年金に関わる個人情報を、
  国民年金・厚生年金保険の被保険者に郵便で通知書を発送することになりました。
  皆自分のことになると注意して中身を検証します。すぐに気づいて、保険料納付実績の調査を行うと、
  消えた年金の発見が可能になり、発生しないようになります。
  ここで、通知書を郵便で発送するというのも、関係する人全員に届ける、マイナポータルなどで、
  調査可能と言うより、とにかく開いて見るであろうという点でもすぐれています。
  
  令和の米騒動は、政府備蓄米が、5kg2,000円程度で販売されるようになったことで、
  大きな転換点を迎えましたが、長期的に、生産量や流通過程をリアルタイムで詳細に追跡できる手段が必要です。
  新発売のゲーム機でも転売が問題になりました。転売自体は違法行為ではありませんが、詐欺的なまぎらわしい文言で
  高額で転売するとなるとまったく問題ないとはいえません。
  このような時に絶大な効果を発揮するのがマイナンバーです。個人も法人もマイナンバーカードを持っていない
  人も含めてマイナンバーをもっていますから、取引に任意で業者に対してマイナンバーを提供する事が
  できる仕組みを作ります。取引相手に直接マイナンバーを通知するわけではないとことろが重要なところで、
  信用できる取引業者に対して任意で、必要な捜査などに対しては捜査機関にマイナンバーを提供することに
  同意したうえで、提供することで、信頼できる商品提供者だということを示すことが可能になります。
  デジタル技術は、「誰一人取り残されない」を実現するのはかなり困難で、それを認識した上で、
  「誰一人取り残されない」を行政のデジタル化の目標にすることにまったく依存はありませんが、
  マイナンバーカードを保持して使うことに積極的に同意した人が、付加価値を得られるという
  デジタル技術の利用方法も、将来のサービスの方向を決めるための先行指標として、
  有効に利用するべきだと思います。
  
  ホームドアが設置されている駅が増えてきました。好ましいことです。
  その運用にはいくつかの課題があります。例えば、設置場所は屋外でしかも設置場所を選べないので、
  夏は温度が上がります。金属製の箱が直射日光が当たる場所に置かれると温度が上がります。中のロジック回路
  が壊れることがあります。高温の物質が、電磁波や赤外線として熱を放射することで冷却する、放射冷却の効果が得られる
  新素材を貼り付けることで、ホームドアの中の温度を下げる試みがあります。
  また、快速や急行が通過する駅では、ホームの端から、少し隙間をあけてホームドアが設置されています。
  この隙間に人が取り残されると重大事故につながる恐れがあるので、ホームドアにはイメージセンサーがついています。
  隙間に取り残された人は発見できるのですが、汚れや虫が飛んでいて、人が取り残されていると
  誤った警告をすることがあります。本当に人が取り残された時の見逃しをまったく無いように設定すると、
  誤った警告を完全に無くすことは困難です。イメージセンサーの表面をきれいにしておくことが大事なのですが、
  通過電車があるなかで、清掃をするのは見張りを立てる必要がある危険な仕事です。そこで、ある駅員の人が
  考えました。各駅停車の電車がくる時に、先頭に並んでいて、ホームドアが開いているあいだにこまめに清掃
  することを考案し実施しました。その結果誤った警告は激減しました。
  行政のデジタル化にあったては、このように、不具合を防止するためのノウハウを、実績を積んで習得する必要が
  あります。