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2025年6月10日
3ー169 マイナポータルは有効活用されているか?
マイナポータルは皆に有効に活用されているか、調べてみました。
デジタル庁のホームページの、
政策、2024年デジタル庁年次報告、データから見た成果:社会におけるデジタル活用の進捗
によると、アカウント登録数は7,197万件で、2022年の1,750万件から激増しており、
52.2%の人が、マイナポータル利用に満足しているそうです。満足していない私が異端児なのか、
満足度調査は、7,197万件の登録者のうち満足していそうな、1,000人の調査対象者のうちの
522人が満足していたのかはわかりませんが、私は不便だと感じています。
国税庁のホームページの、
令和5年度におけるオンライン(e−Tax)⼿続の利⽤状況等について
によると、所得税や個人事業者で消費税の申告をする人の、およそ7割がオンライン申告を利用しています。
e−Taxを利用するといっても、多くの人は1年に1回なので、何をもって有効に利用しているというかの
明快な定義はありませんが、私はe−Taxは有効に利用されているように感じる一方で、
マイナポータルはあまり有効に利用されていないように感じています。
会計ソフトメーカーの弥生の調査では、e−Taxの利用率は41.7%ですが、さらに年代別調査では、
20~30代(55.4%)が最多となった一方、70代以上では26.7%に留まったそうです。
高齢者はITの利用が不得意であるという報道に対し、私はそのようなことはないと思っていましたが、
事実としてそうなのかもしれません。生まれて最初に手にするIT機器は、日本生まれなら、自然に日本語が
話せるようになるレベルで、使えるようになりますが、それ以外のIT機器については、年齢による差はないと
思っています。例えばブルートゥースがつながらない時、Linuxを使っている時なら、まず
bluetoothctlのコマンドで状況を調べて、アダプターが認識されていないのなら、
他の認識するOSでlsusbなどのコマンドで、アダプターのメーカーと型番を調べて、型番とOS名で
検索を始めるような人がITが得意な人だと思っていています。2重飛びができる回数なら、
高齢者は不得意だというのに同意するのですが、ITが不得意とは思っていません。
ITが得意な人の見解とは異なるかもしれませんが、私がマイナポータルは不便だと感じるのは、年に1回程しか使わないので、
使うたびに、セキュリティー認証のための新しいバージョンのプログラムを導入しないといけないなどの
使う上での不便さもありますが、もっと根本的に、何のためのポータルサイトかが直感的につかめません。
e−Taxは、申告納税のための確定申告書を作るためのサイトというのは明らかです。
マイナポータルのアカウント登録数が急増したのは、マイナポイントの申請のために、多くの人が
登録したからだと思いますが、その後どのように利用しているのかは不明です。マイナポータルはマイナンバーカード
のためのサイトかと思ったのですが、マイナンバーカードの更新などは、地方自治体の窓口で行うので、
マイナンバーカードをマイナポータルにアクセスするために利用するだけで、マイナンバーカード
のためのサイトではありません。ガバメントグラウドは、地方自治体の自治体側の業務を行うための
クラウドシステムで、一般利用者が使うシステムではありません。各省庁からのお知らせは、各省庁の
ホームページに掲載されており、たとえマイナポータルに掲載されていても、マイナンバーカードを使って、
アクセスして各省庁からのお知らせを見ようと思う人はいません。このような行政のデジタル化推進の
方針が明快に説明されていないことが、マイナポータルは不便だと感じる原因かもしれません。
マイナポータルにアクセスすると、いろいろなメニューがありますが、各省庁に縦割りの壁があり、その状況を
マイナポータルに持ち込んでいるように感じます。一旦利用者本位で、各省庁、地方自治体のシステム全体の中での
マイナポータルの位置づけを定義して、どのようなメニューをどのように提供するかを見直すという
サイトの設計時に行わなければならないことが十分に行われていないように感じます。
マイナポータル以前に、各省庁が独自に行政のデジタル化をすすめて、いろいろなサイトを開設していて、
それらは現在も使われているので、何を、マイナポータルに統合するのか、それとも各省庁のホームページには変化がなく、
マイナポータルで新しいサービスが始まったのか、それによっていかに利便性が向上し、システムの維持管理費が節約されたかの
具体的な数値による検証が必要です。
マイナポータルサイトのどこがどのように具体的にだめかを検証したわけではないので、マイナポータルは有効活用されているか?という
タイトルに対して結論は出てないのですが、今回のコラムでは行政・医療・教育など今までより、幅広い分野で、
IT技術について考えてみる必要があるということをとりあげます。
政治資金収支報告書の問題については、わかったようなわからないような状況が続いていましたが、
最近この問題に一石を投じる報告がありました。
東京大学大学院(法学政治学研究科)の博士課程に在籍する西田尚史氏(36)が今年4月に立ち上げた
「政策推進機構」のサイト「政治資金収支報告書データベース」で政治資金パーティーの寄付金の
流れが明らかになり、
献金先を政党別に見ると、ほとんどが自民党で、総額に占める割合は9割ほどだったそうです。
受け取ったほうでも、どこの企業・団体から受け取ったのかよく把握できてなかったような
ことも書かれていて、やっと数字をもとにする解明が始まったという印象です。
医療機関で、電子カルテが普及しています。それを見て私は、人件費が高い医師がキーボードを使って
データー入力しているのは時間の無駄だと感じています。実際自分が使っているわけではないので、
何語かわからない言葉で、紙に手書きで書くより、後々参照することも含めて、医師の人が
現在の電子カルテのほうが優れていると思うなら現状でかまわないのですが、手書きのカルテを読んで、
システムに入力するしくみは生成AIを使えば可能なように思います。投薬指示のミスを防ぐ仕組みも
注意のメッセージが表示されるという一般的なシステムではなく、航空機の航路の入力ミスを防ぐ
システムを参考にしたり、生成AIの仕組みを使って、本当に危険な時だけ、強力に警告する仕組みが必要です。
画像判定は、もし生成AIでも人間並みの精度が確保できるのなら、判定速度は、10倍以上になるはずです。
地方の中核病院をはじめとして、医療機関の経営赤字と医師の人員不足が報道されます。
病院の過半数が赤字ということは良く聞きますが、クリニックが赤字で、自宅が抵当にとられているという
話はほとんど聞きません。保健医療の診療報酬などもっと根本的な問題があるように感じます。
それから、病院の院長のほとんどが医師というのも問題です。一部の人は医師としては優秀でも
経営者としては基本的資質を欠いているように感じます。
人員不足も常に問題になりますが、普通科の高校で成績が良いから医学部を受験するというような、
なぜ医師を目指すかという根本的な問題を議論する必要があると感じます。各個人が何を目指して
医師になるかは自由ですが、全体の傾向として、偏差値が低い人が医師になるべきとは言いませんが、
医学部に合格する人が一番偏差値が高いという仕組みを改めるような変更が必要です。
そして、医師は自分では専門性を磨きたい人が多いのか、総合診療医になりたいのか、
民間病院で働きたいのか、大学に残りたいのかどのようなコースが勝ち組だと考えているのかなど、
根本的に見直す必要があります。
義務教育のなかに、IT教育が取り入れられたのは好ましいことですが、始まったばかりで、課題もあると
感じます。ノートパソコンがよく壊れるそうです。通勤や通学で、ノートパソコンを持っている人をみると、
電池を運んでいるように感じます。最近ラズベリーパイというマイコンを使ったのですが、1万円あまりの
とうふ半ちょう位大きさの箱ですが、YouTube動画の視聴や、
LibreOfficeというMicrosoft Office類似のソフトはさくさく動きます。
学校でも一部に、ディスプレーやキーボード、マウス、電源を備えた教室を用意して、
持ち運ぶのはマイコンのみという使い方も考えられます。ラズベリーパイの利点として、
SDカードか外付けのSSDから起動するので、ソフトウェアー的にOSが壊れた時も、すぐに入れ替えることができます。
そして、Raspberry Pi Imagerというソフトで、導入プログラムをダウンロードするのではなく、
ブートイメージをSDカードやSSDに書き込むことができます。
学校では多くのノートパソコンや、タブレット端末が使われているので、各自治体がいろいろな
やり方を考えてみるべきです。どの教科でもIT機器を使って検索することで、教育の効果があがるのか、
多くの授業は、紙の教科書でおこなって、IT機器を使う時間を設けることでも、教育の効果があがるのか、
など、現場の先生の考えを取り入れて、まずIT技術が進歩した時代の教育のやり方を考える必要があります。
一般のセミナーでも、IT機器を使っておこなうと宣伝には書いてあるのですが、机の前にノートパソコンが
置いてあるだけで、講師が延々と話続け、短時間表計算ソフトを使って電卓でもできる程度の計算を
するだけということがあります。
学校の授業も、IT機器を使ってプレゼンテーション資料を作るなどは、これからは生成AIに頼めば
数分で出来る時代になるので、ITソフトで編集のやり方を覚えるより、義務教育の間に、
コンピューターとは何かというIT技術を身につけるほうが、幅広い分野でIT技術が使われる社会で、将来
役立つかもしれません。例えば、Raspberry Pi Imagerのソフトで、導入プログラムを
書き込む方法をやってみた後、Linuxのカーネルをソースコードをコンパイルしてビルドしてみて、
さらにブートローダーについて学習すると、コンピューターがどのように動いているかについての見方が変わります。
「こまち・はやぶさ」で走行中に連結がはずれるというトラブルがありましたが、2度の事故で、
問題となった、連結器を開放するための回路が入った基盤は同じものだったそうです。
くわしい原因の解析は現在も行われている最中ですが、この問題も世の中のデジタル化の関連でとらえることができます。
鉄道が機械装置やアナログ回路だった時代は、現場の高度な技術を持ったエンジニアなら、図面などから
壊れた部品を作ることができました。しかし、1980年代後半の、鉄道部品に半導体が使われるようになった頃から、
使われている半導体が廃盤になると現場ではお手上げという状態になりました。
車両が古くなると、一部の車両は継続して使用して、他の車両は部品取りのために保存しておくなどして
対応していますが、だんだん古い車両を使うのが困難になりました。「こまち」の車両のE6系も、
2010年から2014年にわたって製造されてから、すでに10年以上経っています。いずれ修理用部品の
製造が終了する時期になりますから、編成間で部品を融通して使うようになります。
いろいろな機械装置に、デジタル技術が広く使われるようになるので、半導体が廃盤になった時、
古い部品の設計書を保存しておいて、新しい半導体で、同じ機能を持った部品をつくるとか、
一部の部品は、設定を変えることで古い部品と同じ動作をするなどの対策が必要になります。
2030年代には、量子コンピューターが使われるようになるかもしれませんが、現在のシリコン・コンピューター
を置き換えるというより、量子コンピューターにより新しい事ができるようになりそうです。
そして、シリコン・コンピューターの発展も継続しそうです。
MPUとメモリーを一つのシリコンチップの上に載せた、SoCは一般的になりましたが、
もっと進んで、センサーとMPUメモリーを一つのシリコンチップの上に載せた、SoCも登場するかもしれません。
あるいは、マルチコアがGPUだけでなく、MPUでも劇的に進むかもしれません。
シリコン・コンピューターは、すごくおおまかに言うと、ハイエンドMPUの性能の向上がゆるやかになる一方で、
マイコンなどローエンドのMPUの性能がハイエンドに近づいています。OSの分野では、
開発が始まったときからいえば、還暦を迎えるUnixの流れを引き継いだLinuxがクラウドなどで、
使われる機会が増えています。リアルタイムLinuxがついにメインラインカーネルに統合されました。
以前は、マイコンはOSではないボードサポートファイルを使って、C言語のようなプログラムを動かしたり
RTOSの利用が一般的で、ラズベリーパイは、LinuxベースのOSで動かし、Pythonで
プログラミングするという流れでした。
自動運転などリアルタイム性が要求される機会が増える中で、どのようなMPUが使われ、どのようなOSが
使われるかの技術開発も、量子コンピューターの開発に並ぶレベルで注目です。
行政・医療・教育など今までより、幅広い分野で、IT技術に関連する事象が発生する時代に何が重要になるかというと、
多くの人が、IT技術というと、かな漢変換かフリック入力の話をするというような、
基本的なカルチャーを変革することが基本になるかもしれません。
IT機器に器用に正確にデーター入力出来ることがIT技術だという考え方は、日本では世代を問わず見られる
考え方ですが、世界的にみるとガラパゴスです。たとえばどのような技術を広めるのが良いかと言うと
SDH(Software Defined Home)です。このような言葉はありません。
SDVから考えた私の造語ですが、家電製品はほとんどが買い替え重要になっているので、
それぞれの製品をいつ買って、不具合が起きたらどこに連絡すればよいか、あるいは自動的に
修理センターに必要な不具合情報を連絡するサーバーコンピューターです。
各メーカーがバラバラにやっていてもだめですが、共通規格になれば、日本市場だけでも
一定規模があります。エアコンの通信販売で、10年前の機種にくらべて消費電力は半分というのと、
性能に差はありませんが、去年モデルなので大幅割引というのは定番ですが、私はどちらかが嘘だと思っています。
毎年7%程度づつ消費電力が減少しないと、10年で半分にはなりません。SDHがあれば消費電力の測定をおこない、
データーを保存することも可能です。電気料金を計算して請求書と比較することもできます。
このような発想ができることが、IT技術だと思います。
そして、IT技術とならんで、これから重要になると思うのが、簿記の技術です。金融の教育より、会計や簿記の
教育のほうが、社会全体を変革すると思います。
棚卸評価損と言うべきところを減価償却とたとえ原稿に書いてあったとしても、そこを飛ばして読むのが
皆の常識になる社会になると、経済に大きな影響があるかもしれません。
また最近、相対取引(あいたいとりひき)という言葉が静かにバズっています。お米の取引に関してこの言葉を聞いた
のは初めてですが、国税庁のタックス・アンサーのサイトによれば、
「相対取引」とは、金融商品取引業者等(証券会社等)を通さずに行う株式等の取引等のことをいいます。
と書かれています。会計の勉強をする人が増えて、言葉は知っているという状態になると、
皆のニュースに対する反応が変わるかもしれません。