各種のコラム -- 3ー167 適格請求書(デジタルインボイス)を使ってみよう
2025年5月10日
3ー167 適格請求書(デジタルインボイス)を使ってみよう
消費税の軽減税率の導入にともない、仕入税額控除のために、適格請求書が必要になりました。
インボイス制度において、適格請求書(インボイス)の電子データ化が求められており、電子インボイスのうち、
EUのPeppol BIS Standard Invoiceの仕様でつくられたxmlファイルのものを
デジタルインボイスと呼びます。
実際使ってみたわけではありませんが、大企業などデジタル化に予算をつけられる企業を中心として、
デジタルインボイスを使うのが良いというのと、日本のIT技術の推進を考える時、
シリコンバレーの巨大テック企業を真似ることが唯一の方法ではなく、公的機関や非営利団体が、
EUのPeppol仕様のような、国際的に使われるITの規格をつくるのも有効であるという観点でのコラムです。
消費税の仕入税額控除の話に限定せず、企業会計全般を考えてみる時、
有価証券報告書を提出するような企業であれば、ほぼすべて仕訳はITシステムで管理しており、
ERPなどの会計システムで、財務諸表を作成します。企業間の情報伝達の方法はまちまちで、親会社・子会社間や
業界内で共通のEDIシステムで電子データーでやりとりしているものや、ITシステムで印刷した帳票を
FAXで送っているものもあります。各企業で作る財務諸表を駅毎の時刻表に例えれば、
企業間の帳票書類のやり取りは、各駅の時刻をダイヤグラムで結ぶようなもので、全体の関連が一目瞭然になります。
企業間の取引を記録に残す方法として、デジタル通貨とブロックチェーンの技術を使う方法もありますが、
現状での実現可能性を考えると、デジタルインボイスのやり取りのほうがはるかに現実的です。
関連する企業がPeppol仕様のデジタルインボイスを使えば、各企業での仕訳も自動化され、
業務の効率化も進みます。また当然、会計監査などの際の取引の透明性も高まります。
政治資金規正法の改正に関連して、自民党の議員の人で、寄付金の額の制限などではなく、収支報告書の正確性
透明性の向上をめざすべきだという人がいます。基本姿勢には私は賛成なのですが、くわしく話を聞くと
具体的内容があまりにポンコツすぎます。収支報告書をネットで提出すれば、行政のデジタル化が図れるという
考えでは21世紀になって以来進歩が止まっている状況です。
政治家が率先して、すべての取引をデジタルインボイスで管理し、財務諸表を自動作成することにして、
人為的な不正の可能性を完全に排除するというような内容なら賛成です。
消費税の軽減税率の導入にともない、仕入税額控除のために、適格請求書の発行を小規模事業者に
なかば強制したのは、非常にまずい政策で、取引量が多くて、仕訳の数が多い大規模事業者からデジタルインボイスを導入して、
経理業務の合理化が実感できる状態をつくり、あわせて、経営分析や、会計監査における透明性の確保を図り、
順次取引関係のある中小事業者にもデジタルインボイスを広めていくべきでした。
このようなデジタル技術を社会全体の発展に活かすアイディアが浮かぶ人が政治家になるのが望ましいことです。
世界的なテック企業というと、シリコンバレーの企業が思い浮かびますが、ERPのシステムでは、
ドイツのSAPが有名です。
日本の経理部門には、紙の伝票を正確にすばやくシステムに入力できる人をすぐれたIT技術を持つ人という
傾向があります。私のように基本的に入力は間違える、電卓で計算するたびに答えがかわるという人は
経理向きではありません。SAPは有名ですが、決して使いやすいソフトではなく、SAPの設定、カストマイズ
をやるのが趣味だという人は世界中探してもひとりもいないのではないかと思いますが、
日本の経理部門には何人かは居るかもしれません。
デジタルインボイスの話からは離れますが、買い物の際の電子決済のシステムについて、
これから日本はどのようなデジタル社会になるのが良いかを考えてみます。
イオンでは、今年になってiAEONアプリを導入し、これまでのストアードフェア式のカード決済から、
アプリ決済に移行しています。iAEONアプリの導入当初は、セルフレジで、商品のバーコードをスキャンした後、
支払いの段階でアプリ決済を選んで、支払いバーコードをスマホに表示して、決済していましたが、
最近変更になって、まず最初に、iAEONアプリまたはイオンお買い物アプリの会員コードをスマホに表示して
スキャンしてから商品のスキャンを始めます。決済の際は、支払いの段階でアプリ決済を選択すると、
決済が行われます。商品のなかにアプリ割引と表示されたものがあって、従来は、支払い段階で、
イオンお買い物アプリの会員コードをスキャンしてレジで割引内容を確認してボタンを押してから、
iAEONアプリの支払いバーコードをスマホに表示して、決済していましたが、
事前に会員コードをスキャンする方法になったので、商品のバーコードをスキャンする時点で
自動的に割引適用になるのかと思ったのですが、そうはなりませんでした。
またイオンでは、レジGOというサービスが導入された店があります。私がよく利用する店は、
レジGOが導入されていないので、iAEONアプリにレジGOメニューは表示されません。
そこで、レジGOサービスが導入された店に行った時は、店に置かれている専用端末を
カートに取り付けて使います。商品を取るごとに、専用端末のカメラに商品のバーコードを読ませると、
商品が登録され、そこまでの合計額が表示されます。支払いはレジGO専用コーナーに行きます。
入口で、店員さんに専用端末を見せ、登録された商品の数と実際にカートに入った商品の数が一致することを
店員さんがすばやく目視で確認します。その後、自分のiAEONアプリを起動して支払いを行い、
専用端末を返却すれば完了します。
同じイオンでもこのようにバリエーションがあると、覚えるのが大変です。
アプリの会員コードをスマホに表示してスキャンする際も、画面をレジに向ける店と、
スマホを台の上に置いて、上から赤外線でスキャンする店もあるので、スーパーの側もいろいろなやり方を
試行錯誤している段階なのかもしれません。タイムセールや消費期限が近づいた商品の値引きは
商品にバーコードを貼り直して行います。それに対して、アプリ割引は、支払いの際に会員コードをスキャンして行います。
商品のバーコードをスキャンして、支払い額を合計するのはレジでローカルに行いますが、
レジGOであれば、それほど瞬時におこなう必要はないので、サーバー経由で支払い額を合計を計算することで、
店のオペレーション全体の合理化につながる可能性があります。
またiAEONアプリにレジGOメニューは表示されていないのですが、よく利用する店を複数登録できるので、
表示することは可能なようです。アプリの機能を周知徹底する方法も検討する必要があります。
また他のチェーンのスーパーに行くと、どのように支払いをおこなえば良いのか見当がつきません。
簡単にしようとしてもこのように複雑になるのか、お客を囲い込むためにある程度複雑にしているのかは
開発者に聞いてみないとわかりませんが、もうひとつ聞いてみたいのは、携帯でゲームをやるのが趣味の人は、
ある程度複雑なアプリを使いこなすほうが好みなのか、それは話が別で、シンプルなほうが良いのかわかりません。
ゲームのルールを考える意欲がまったくわかない私は、アプリもとにかくシンプルで入力が少ないものを好みますが、
ひょっとすると日本人のなかには、複雑な手続きで色々なサイトを経由してポイント変換する人がかなり居るように、
複雑な支払い方法を好む人がいるのかもしれません。
おそらく好みの人はいないだろうと思うのが、iAEONアプリを起動し、会員コードをスマホに表示しようとすると
ほぼ100%の確率で、Snackbarなのかtoastなのか(私の携帯はAndroidです)は知りませんが、
キャンペーン情報などが表示されて邪魔です。開発者は、とにかくキャンペーン情報が表示される確率が高い場所を
選んでいるのか、その情報がお客に有用だと思っているのか聞いてみたいと思っています。
買い物の際に、商品をとると、当然そこの部分が商品が並んでいない状態になりますが、自分が取る前に
商品が欠けていることがほとんどないので、暇な時に棚の前でしばらく眺めたことがあります。
商品が2段に並んでいて、ひとつとっても、欠けているように見えないなどの工夫がされているのですが、
それと合わせて、かなり頻繁に店員さんが、商品をきれいに並べていました。このような細かな心遣いで成り立っているのだと
感心したのですが、アプリの構成には心遣いが感じられません。
いろいろな支払い方法があり、ある程度ゲーム感覚で、複雑な操作をやりこなす人もいるのでしょうが、私でも
使いこなせるように、アプリを起動したら、素人レベルとかマニアックレベルが選べるようにならないかと思っています。
民間のアプリはともかく、マイナポータルは何とかならないのかと思うくらい不便です。
デジタル庁のホームページは、シンプルで、右上にメニューが並んでいて、私好みのデザインです。
一部の、ホームページを開くと、イメージ動画がしばらく流れて、ネットワーク環境が十分でない時は
ただただいらいらするだけというようなサイトに比べると洗練されていると感じます。
マイナポータルもそのうち良くなるかと思っていたのですが、変わりません。Linuxでは使えません。
その時点で私は取りこぼされてます。Windowsでアクセスしても、めったに使わないこともあって、
つかうたびにセキュリティーに関連するエクステンションをダウンロードして導入しなおさないといけません。
部分的に見やすくなった使いやすくなったと思う箇所もありますが、全体として何とかならないのかと思うくらい不便です。
日本のIT技術のこれからの発展を考える時、行政システムのように、大半の人が使うシステムが
どのようになっているかは、大きな影響があります。
世界の中には、キャデラックのビーストやエスカレードが日本でほとんど売れないのは、
日本に輸入障壁があるからだと思っている人がいます。
一方で日本人はほとんど違和感を持たないけれども、海外から日本を訪れて、T番号をハンコで押した
手書きの請求書を見て、こんなアナログ処理をしている国に負けるわけがないと思っている人がいるかもしれません。
デジタルインボイスを皆が率先して使うような仕組みを取り入れて、日本全体の商取引の
信頼性・効率性の向上を目指すとか、EUのPeppol仕様のように、ASEAN各国で共通の
ITの規格を定めるという方法などで、日本のIT技術を向上させることが国力の向上につながります。