各種のコラム --  3ー135 政治資金制度改革、実効性は期待できるか?

                                      2024年5月1日  

    3ー135 政治資金制度改革、実効性は期待できるか?
    
     政治資金規正法の改正に向け、各党が案をまとめています。改革の実効性が期待できるかについて、
  大きな疑問があります。特に自民党の改革案に対する疑問をまとめます。
  
  まず、会計責任者が処罰された場合の連座制に関連して、議員に対して収支報告書の「確認書」の作成を
  義務づけるとなっています。これは、実効性が無いだけでなく、現状より裏金問題を深刻にするおそれがあります。
  以前に民間の会社で会計不正が発生した際、公認会計士監査の厳格化が求められました。
  しかし、実際は、それ以前なら指摘にはいたらないものの、公認会計士が疑問をもって、試査の範囲を拡大するなど
  していたのに、不正の発見に至らなかった場合の自身の処分を恐れて、疑問を持っても、まったく気づく機会がなかった
  として、試査の範囲を逆に縮小するなどの弊害がでました。
  
  会計責任者に対する、議員の立場は、監査人というよりは経営者の立場に近いですが、
  同様の事が起きるリスクはあります。会計責任者が議員の辞職を狙って、不正を働いた場合、
  本当に議員がまったく気づかないことがあります。しかし、実際は承知していた場合も、
  まったく気づく機会がなかったことにしようとするおそれがあります。あるいは、会計責任者の行動を調べなくなる
  おそれがあります。
  
  次に、収支報告書のさらなるデジタル化や透明化を図るといわれていますが、具体的内容が不明です。
  現在でも、政治資金収支報告書を提出する際、国会議員関係の政治団体は、総務省のオンラインシステムを
  使うことが努力義務とされていますが、あまり使われていません。総務省のオンラインシステムを使うことが、
  デジタル化や透明化の内容であるならば、時代遅れで、政治資金制度改革の実効性はほとんど期待できません。
  
  現在は、紙でコピーする必要があるが、オンラインでダウンロードできればデジタル化というのは、
  半世紀前の発想です。
  民間企業の企業会計をお手本に、会計処理の仕組みを根底から改める必要があります。
  
  収支報告書に不記載であったものについて、法人税を課すことを検討するというのも、実現の
  可能性が低いです。民間会社が政治資金パーティーの、パーティー券を買った場合、法人税法上は、
  実態を考慮して、パーティーでの飲食代ではなく寄附金と判断します。
  その場合、企業会計上、費用として処理しても、法人税法上の損金とは認められません。
  国税庁から見ると、議員の資金管理団体から法人税を徴収するより、民間会社から徴収するほうが簡単です。
  そしてひとつの取引に関して両者から徴税すると二重課税のおそれがあります。
  子会社の配当金について、受取配当等の益金不算入の減算調整が認められるように、
  民間会社からすでに法人税を徴収しているお金について、さらに議員の資金管理団体から法人税を徴収する
  ことは実現可能性が低いです。国会議員は、税金の支払いを免れる特別な人という
  発想が根底にある限り、政治資金制度改革の実効性は期待できません。
  
  政治資金制度改革に限らず、行政のデジタル化においても、デジタル化の目的が不明で、かつ
  国会議員のような特別な身分の人はデジタル化の対象外と考えているのではないかという状況です。
  
  健康保険証のマイナンバーカード化の目的が、私は今も理解できません。
  現在、病院の受付で不便を感じることはありません。過去の投薬の記録が参照できるようになりますが、
  カルテが参照できない状況で、投薬の記録のみ参照できてどれだけの効果があるのでしょうか。
  医療の専門家の人が、投薬の記録のみ参照できれば、医療の質が格段に向上し、カルテの参照は必要ない
  というのなら、そうかもしれませんが、それでも不信感がぬぐえません。
  電子カルテのフォーマットの統一は、医療グループや大学間で情報を独占して論文作成などに使いたい機関にとって、
  不利益になるので、実施しないが、投薬の記録のみ共有するという、患者の利益より医師の利益を優先して、
  決められた制度ではないかという疑問を持っています。医療の専門家ではないので、確定的な
  根拠に基づく疑問ではありませんが、税金を投入する医療の利用者として、疑問を解決するための
  具体的な根拠も聞いたことがありません。
  感染症の患者の発生状況を、以前は、医療機関から保健所にFAXを送って管理していましたが、
  コロナ感染症が蔓延した時、HER−SYSというシステムが導入されましたが、コロナ感染症の分類の
  変更に伴い、従来の一部の病院での紙の管理に戻しました。
  従来の紙の資料での管理にどのような問題があったのか、HER−SYSのシステムで何が改善され、
  課題は何だったのか、ふたたび従来の方法に戻したのは何だったのか、を調査して、結果を公表しなければ
  なりません。非常の時だけシステムを使うという発想が間違えています、次の感染症が蔓延する時には、
  システムがバージョンアップされていなくてセキュリティーの問題があって使えないおそれがあります。  
  情報システムは、通常から生産性向上のために使っているものこそ、非常の際に有効に活用できます。 
  さらにHER−SYSのシステムで収集したデーターをどう扱うのか、もし廃棄するとしたら、あまりにも
  無駄な事です。保存するとしたら、継続使用をやめたセキュリティーレベルの低い古いシステムで保存し続けて、
  個人情報が漏洩する心配があります。
  特に、HER−SYSのシステムの使用をやめた理由が重要です。医師から不満が出たからというのなら、
  完全に間違えた考え方です。医師は特別の人だから、文句がでるといわれるようにするが、
  健康保険証を使うのは普通の人だから、マイナンバーとの紐付けのミスで、患者を取り違えるミスが
  発生しても、閣議や国会で決めたように推し進めるということを続けると、
  行政のデジタル化は失敗します。民間のシステムなら、競争相手が居るので、事業が成り立たなくなりますが、
  行政システムでは、競争相手がいないので、いつまでも存続して、保守費用として税金を投入
  し続けることになります。HER−SYSのシステムで収集したデーターをどのように活用するのか、
  現行の紙の資料での管理で、同じ事ができるのかの検証を続ける必要があります。
  
  マイナンバーと民間システムとの連携を図ると言われていますが、身の回りで進展している実感がありません。
  公共交通機関を利用する時、各人の移動の需要を測定することが重要です。
  マイナンバーカードと交通系ICカードを紐づけることにより、一部地域で行われている例はありますが、
  署名用電子証明書が法令上原則発行されない、15歳未満の本人のマイナンバーカードは、
  交通系ICカードとの認証連携ができません。
  さらに、この仕組みを使えば、iPhoneにはマイナンバーカード情報を蓄積できないなどと無関係に、
  携帯電話に読み込める民間の多くの会員証と、マイナンバーとの目的を限定した連携が可能になるはずですが、
  なかなか拡大しません。総務省は本当にマイナンバーの民間システムとの連携を図って
  住民の生活を便利にしたいのか、総務省が予算を獲得するための手段なのか、疑問が残ります。
  
  バス運転士の不足が各地で問題になっています。一方で、実際に各地の都市に行ってみると、
  こんなにバスが必要なのかと思うほど、バスが走っているところがあります。多くが、JRの駅と
  バスセンターの間です。しかし実際に利用しようとすると意外と不便です。乗り場がばらばらで、
  しかも、初めてだと駅からバスセンターを経由してどこかに行くのか、バスセンターから駅を経由して
  どこかに行くのかがわからないので、どの乗り場にいけばよいのかわかりません。
  地元の人にも、これだけ多くのバスが必要な理由があります。乗り換えるのが不便なだけでなく、
  乗り換えると再度運賃を払わなければなりません。
  このような現状で不便なところを、デジタル化を進めて、乗り換えても共通で運賃を一度払えば良いとか、
  バスセンターと駅の間の自動運転化を進めるなどのデジタル化が期待されます。
  自動運転の推進にあたって、決まった区間で、管理者が居る状態で進めるのがひとつの柱になります。
  例えば、工事で一方通行になって、補助信号が取り付けられたら、どこの場所で、どの信号を確認して、
  どの車線を通行するかを指示し直すことが必要になる場合があります。
  
  さらに、もっと積極的にデジタル化を進めるべき分野として、中央省庁が行っている各種の調査があります。
  内閣府が企画して外部に委託して行っている消費動向調査があります。2018年から、
  郵送されてきた調査票を郵送回答するのに加えてオンライン回答の方法が追加されましたが、
  調査票に記入するのでなく、マイナンバーと連携した、ICカードを発行して、
  買い物するだけで、自動的に調査データーが記録されるなど、本来の意味でのデジタル化は進んでいません。
  中央省庁にとって行政のデジタル化は、予算獲得の手段であって、自ら利用するものではないと考えているの
  かもしれません。
  あるいは、健康保険証のような現状で、問題なく機能しているものがデジタル化が容易だと考えているのかも
  しれませんが、誤った考え方です。
  現状で手間がかかって不便だと皆が感じているものをデジタル化すると、少々の不具合より、利便性が
  まさるので、広まります。
  
  デジタル化の推進と関連して、半導体工場の誘致も行われています。TSMCの工場は、
  現在、台湾の工場で作って、日本に輸出している製品を、日本で現地生産するものなので、
  失敗はないように見えますが、経産省が主導して、半導体の多品種少量生産を実現するというのは、
  誰が本当にプロジェクトを推進しているのかについて疑問を感じます。
  
  日本が海洋国家であるという現状などを考慮して、日本独自の技術を育成するほうが、
  世界にひとつだけでかつ世界最先端の技術を開発することができます。
  水中ドローンとか、AUV(Autonomous  Underwater  Vewhicle)と呼ばれる
  衛星測位システムが使用できない水中を慣性航法による自律航法で運行する自律型無人潜水艇は、
  現在ウクライナ軍がロシア軍の戦艦などを攻撃する際などに使われていて、シリコンバレーで開発された
  技術が使われているそうです。技術自体に着目すると、海難救助や、洋上風力発電の基地の建設などに活用できます。
  世界にひとつだけの技術ではありませんが、自動運転のクルマがトンネルの中を走る時にも
  必要になる技術で、日本の技術が最先端ということになれば世界に広める上で有利になります。
  これは、新しい技術というようなものではありませんが、偽の有名人広告の掲載で問題が起きている
  Meta社ですが、私は個人的に文字の入力方法に不満をもっています。Facebook Messenger
  Instagram共に、日本語入力していて、英数字に戻した時などに、自分では、改行するなどの
  目的でエンターキー(改行キー)を押したのに、メッセージが投稿されることがあります。
  メッセージに入力中に、改行キーの位置が、投稿を意味する、右向き矢印のキーに勝手に変わることがあります。
  日本語のかな漢変換をしようとして、投稿してしまうことがありました。たいした問題ではないといえば
  それまでですが、Meta社の日本法人の人で同じ疑問をもつ人がいないのかが不思議です。
  偽の有名人広告の掲載で日本法人として、もっと断固として本社に事態の改善を申し入れることが
  できないのでしょうか。ガバメントクラウドに関しても、中央省庁は自治体に対して強行するわりに、
  マグニフィセント・セブンには、お金を支払う立場なのに言いなりになっている印象があります。
  AI企業が日本に研究所を作るのを歓迎するムードが高いですが、それは、日本の著作権法が
  AIの学習のために、著作物を自由に使えるからで、かつては中国で個人情報を収集できたから、
  研究所を作っていたのと似た状況です。安全保障に限らず、ITの分野で、日本側が客の立場で
  あるはずの事でも、アメリカを特権を持った人と思っているような事象が発生しています。
  日本が海洋国家であるという現状などを考慮して、ミサイル防衛より、水中ドローンを活用した
  沿岸警備が重要(防衛の専門家でないので、本当かどうかはわかりません)など、
  日本人自身の考え方で、物事を進めることが重要です。
  
  政治資金制度改革に限らず、デジタル技術を、多くの人の生活の利便性の向上に資する目的に使うと共に、
  デジタル化の例外に分類される特権を持った人はいないということを、すべての人が自覚する必要があります。