各種のコラム --  3ー131 政治資金改革より選挙改革を!

                                      2024年3月5日  

    3ー131 政治資金改革より選挙改革を!
    
     昨年から、自民党派閥の、政治資金パーティーを利用した裏金づくりが問題になっています。
   検察の捜査が行われ、国会議員が起訴されました。「政治刷新本部」が立ち上がりました。
   政治倫理審査会が開かれました。政治資金規正法の改革も話題になっています。
  それで、お金の流れをはじめとする問題の実態が明らかになり、再発防止が期待できるかと言うと、
  そうではありません。文部科学大臣だけでなく、国会議員の人はあまり記憶が鮮明でないような印象です。
  一方で、「納税は議員の判断」という答弁を聞いていると、本人なのか答弁を作った人かはわかりませんが、頭が良い
  と感じます。所得税は申告納税なので、納付税額は本人が申告します。費用の計上金額が少ないと感じても
  収益の計上金額が少ないと感じても税務署の人が本人の申告書を受理しないということは基本的にありません。
  程度の問題で例外的なアドバイスなどもありますが、納付税額に関する疑義で所得税の確定申告書の受理を
  拒否して不申告加算税を課すということはありません。税務署や国税庁や国税庁を外局として管理する財務省の
  見解としては「納税は議員本人の判断」という答弁は間違えていないように思います。
  申告しなければ納税義務を無視してよいかというと、そうはいきません。
  税務調査が行われ、修正申告することになります。それも無視すると、
  税務署長による更正又は決定の処分があり、賦課課税により納税することになり、それも無視すると
  裁判になります。国税局の調査の人の技術は非常にすぐれているので、国会議員の人の
  所得も反面調査でほぼ正確に把握しているかもしれません。反面調査とは、税務調査対象者本人ではなく、
  その取引先などの関係先に対して実施される税務調査のことをいいます。ここでは、国会議員の取引先の
  税務調査を行って間接的に国会議員の取引をつかんでいるという意味で使っています。
  これは想像ですが、その情報を徴税目的ではなく、財務省に報告して、議員との交渉や天下り先の
  決定に有利に使っているかもしれません。このような、鎖を解きほぐすのは困難です。
    
  何のために裏金づくりをおこない、何に使ったのかが、一番知りたいところです。
  遊興費にあてたのかもしれませんが、やはり国会議員本人と派閥の勢力拡大にとって一番重要なことである、
  選挙資金に使ったのではないかと思います。そして、旧態依然とした選挙のやり方を改めたいと
  思う人もそれなりにいるけれど、他人と異なる主張をすることで、自分だけ不利になるのを
  避けたいということかもしれません。政治倫理審査会は、首相が出席することで、公開での開催になりました。
  しかし、公開されても、いつものように役人が作った原稿を話しているような印象で、新しい事実は、ほとんど
  公開されませんでした。政治倫理審査会の開催日程自体が、2024年度予算成立のスケジュールから
  逆算して、財務省が決めたのかという日程で、質疑のやり取りだけでなく日程などの行動のすべてを
  役人が決めているのかという印象でした。
  
  35年前のリクルート事件の時は、小選挙区制の導入など、選挙制度の改革が行われましたが、
  今回は話題になりません。
  小選挙区制は、イギリスやアメリカのような政権交代可能な2大政党がある時機能する制度で、日本にはあまり向いて
  いないのかもしれません。それでも、選挙制度の改革の議論をしたことは有意義なことで、
  今回、再び日本に最適な選挙制度の改革の議論を行うべきです。
  
  中米にコスタリカという国があります。食事を共にした人が選挙に立候補したら、応援しなければならない
  という言い伝えがありました。(現在はどうか知りません。)
  ですから、大統領と食事を共にしたという人がたくさん居ました。
  選挙が近くなると、候補者が勝手に家に入ってきてキッチンに行き、炊飯器のご飯で、おにぎりを作って勝手に食べます。
  (現在はどうか知りません。コスタリカは米食が主食に近いです。)
  大統領は、全国的に各地の都市で、おにぎりを食べないといけないので、食欲の旺盛な人でないと立候補できないと
  いわれていました。本当に勝手に他人の家に入るのではなく、支持者の家を訪れて、絆を強めているような印象でした。
  
  今回、日本で政治資金収支報告書の訂正で、ラーメン店で、一日に15万円支払った人がいました。
  一杯15万円のラーメンなのか、一杯千円のラーメンを150杯食べたのか、150人を招待したのかは
  不明です。毎年恒例のように、議員秘書が企業を回って寄附を要求し、定期的に支持者を集めて、食事会
  を開くというようなことを公職選挙法に触れない形で行うという慣例を打破しなければなりません。
  他の議員もやっているので、自分だけやらなかったら落選するかもしれないという恐怖で、
  従来の慣例を打破できないのが悪い所です。
  政治資金改革でも選挙改革でも、イギリスやアメリカの制度を表面的に取り入れ、
  政権交代可能な2大政党が有るか無いかのような、根本的な違いを無視するのが良くないです。
  表面的には時間をかけて議論しても、他人と異なる発言をしないのが良くないです。
  
  有権者の側も発想の転換が必要です。投票率を100%に近くする必要があります。自分の1票で何が変わるわけではない
  とか、思いつきで投票してもかえって良くないなどの発想を転換する必要があります。
  マスコミでも、政治や行政のプロが作った鎖を解きほぐすのは容易ではありません。投票率が100%近くになっても、
  自民党政権に変わりないでしょうが、どこか一箇所でも予期せぬことが起きるだけで、
  政治全体の緊張感が変わります。
  政治の事が何もわかっていない人が大半でも、コアな支持者が義務的に投票した結果より、
  多くの人がその時のムードで投票した結果が意外に良い結果になります。
  
  AIが毎日のように話題になります。数年前に囲碁AIがプロ棋士を破って以来、
  AIの話題の中心は、アルファベット社(Google)でした。ところが、2年程前から、
  OpenAI社を中心とする生成AIが話題の中心になりました。OpenAI社のなかには、
  Google出身の人もいるので、会社組織よりもエンジニア自身の考え方が技術開発の主導権を握ります。
  日本でも、囲碁AIや将棋AIプログラムなど優れたものが多いのですが、世の中がGoogleのAIだと
  言っている時に、これからは生成AIだというように、自分勝手なことをする企業はあまりありません。
  生成AIが話題の中心になってから、それを理解し、日常的に利用できるようにするのは、
  高い技術が必要で時間的な制約もあって、誰でも出来ることではないのですが、新しいソフトウェアが登場
  するたびにそれを続けても、あまり技術は蓄積しません。
  投資と同じでリスクとリターンは比例します。失敗を承知で設備投資する企業がないと、
  世界のエコ・システムのキーストーン種になるようなIT技術は生まれません。
  生成AIは未来永劫エヌビディア一択かというと、そうではありません。インテルなどから、
  パソコンでもAIのトレーニングが可能になるような、CPU GPU NPUを一体にした
  プロセッサーが発表されました。データーセンターだけでなく、オンプレミスやプライベートクラウドでも
  AIのトレーニングが可能になると、データーの量が限られる反面、著作権や機密情報漏洩の問題の
  管理は容易になります。すでに、世界的に広まっている物があっても、自分に適した、新しい物が
  作り出せないか考えてみるという発想を身につける必要があります。
  ChatGPTも毎日生み出される最新のデーターの中から良質な物を選んでトレーニングを
  続けるのはかなり労力のいることですが、生成AIのトレーニングが個人でもできるようになると、
  殆どは、駄作しか生み出さないもののように見えて、全体的には、一部の専門家が行う
  ものを上回る成果を生むようになります。
  生成AIの使い方も重要な技術です。プロジェクトのリーダーで、
  「自分の質問にだけ答えろ。聞かれた事以外しゃべるな」という人がいますが、居ないほうが良いレベルの人です。
  生成AIでは、ステップ・バイ・ステップで回答してくださいとか、これらについて提案してくださいなど、
  プロンプトの作り方を変えると、自分に適した回答が得られます。生成AIの使い方について、
  多くの人が各自の考え方でいろいろなことを試していると、偶然に最適なものが見つかる可能性があります。
  
  アマゾンのリコメンドも始まった頃は、最近購入した商品ばかりでてくるなど、評判は悪かったです。
  しかし、理論的な基礎的な面では、動画閲覧サイトで過去に閲覧した作品から、推奨の作品を表示するのも、
  同じです。日本では、短期的に効果が得られるような技術しか評価されない面があって、
  「悪い」と答えると質問がどんどん増えて途中で送信をあきらめさせるようなサイトもありました。
  しかし、不満を助長するだけで、本質的に何のメリットもありません。リコメンドのように地道に
  技術開発を継続することで、成果があがります。ホストコンピューターは今では、限られた業務
  で使われているだけですが、20世紀にホストコンピューターでよく使われた、関連データーベースの技術は
  現在も健在で、広くいろいろなシステムで使われています。
  エヌビディアはGPUの設計技術が優れているだけではありません。
  CUDA(Compute Unified Device Architecture)という、
  ゲームグラフィックス用途に特化して使われていたGPUを、グラフィックス以外にも活用できるようにする、
  汎用コンピューティング向けのGPU活用技術を考えだしたのは、20年近く前です。
  そして、それをAIの計算に有効に活用できるようにしたことで、生成Aが話題なった最近2年間で特に売上を伸ばしています。
  凡人には何の意味があるのかわからない命令体系やプログラミング体系の研究開発に資金を投入したり、
  半導体の受注生産なら、世界のナンバーワンになる、一位じゃないとダメですかというほどの資金を設備投資に投入
  するようなリスクを取った会社がリターンも総取りに近い形になります。半導体技術が重要だからといって、
  世界の傾向を追いかけるのも悪くはないですが、ペロブスカイト太陽電池や、太陽電池の、現在ガラスで作られている
  部分をセルソース・ナノファイバーで置き換えるような技術のほうが日本の強みが発揮できるかもしれません。
  デフレ経済では、他人が設備投資した結果を見てから投資する人のほうが有利になり、
  リスクとリターンは比例しません。経済面も改革して失敗を承知で設備投資する企業が出てくる
  ようにすることが必要です。
  
  日経平均株価が、1989年につけた史上最高値を上回りました。いつかはバブルがはじけるという人もいれば、
  ひと株利益が当時の4倍位になっているのでバブルではないという人もいます。
  1989年のバブルや2000年のITバブルの時は、バブルの直前に大きく上昇した株価が上昇前位まで
  下落しています。一方リーマンショックの時は、不良債権が大きな理由だったので、2007年からはむしろ
  下落基調だった株価がさらに大きく下落しました。
  それらは後からわかることで、株価が上昇途中の現在は、この先どうなるかはわかりません。
  しかし、マグニフィセント・セブンと呼ばれるIT企業の株価は、2000年のITバブル直前のように
  見えます。当時はコンピューター2000年問題があって、SEは人手不足でした。日本では、2000年になって
  2月にはすでに請負開発の新規契約で、SEは人手不足から一気に過剰になったと感じるような状況でした。
  ITバブルが弾けたのは、コンピューター2000年問題が終了したからではないかと思っています。
  正しいかどうかは別にして、株価のバブルが弾ける時は、たまたま最後にはずれる梁のひとつになっただけで、
  それほど大きな原因でなくてもバブルがはじけます。コロナ禍が終了して、在宅勤務で売上が伸びたIT機器の
  売上が下がると、IT企業の株価が下がるかと思っていたのですが、実際は生成AIブームで株価は上昇を
  続けています。インテルなどから、パソコンでもAIのトレーニングが可能になるような、プロセッサーが発売
  されると、ITバブルが弾けるのではないかと思います。データーセンターを使った生成AIは、
  企業で使うと結構高額の使用料になります。開発途上国なら、自分が保有するPCでトレーニングできるのは
  魅力です。エヌビディアが経営不振になるというのではなくて、上昇を続ける株価は、
  成長率の僅かな低下でも、とりあえず人より先に売り抜けようという動機になります。
  IT企業全体はこれからも今まで以上に発展すると思いますが、2000年代半ばに、サンマイクロシステムズ
  が吸収合併されたように、SNS関連の企業などで、経営不振になるメーカーがでてくるかもしれません。
  そして、世界的には、中国を起源とする不良債権問題もあって、グローバルサウスの国にも大きな
  影響を与えています。ひょっとすると、株価のバブルが弾けるのと、不良債権起源の経済ショックが同時に
  発生して、大々的にバブルが弾けるかもしれません。日本では、4月にあるかもしれない政策金利の
  ゼロ金利解除が、バブル崩壊のきっかけになるかもしれません。
  現在の日銀総裁は、細かな失敗はしないのですが、大きな失敗をするかもしれないと思っています。
  前日銀総裁のように、振り切った人は、周りにも反対する人がいるので議論になるので、
  大きな失敗は少ないように感じました。世界を見回すと、振り切っている上に、周りの反対する人を処分
  する人が居ます。トランプ前大統領にも、そのような面があります。トランプ前大統領が再選されて
  良いことは、米国の大統領は憲法で3選が禁止されているので、2028年以降は、トランプ氏以外の
  人が共和党の大統領候補になることです。
  時間はかかっても、公正な選挙制度とそれを支える有権者の行動が、政治全体を改革します。