各種のコラム --  3ー124 政治家は裏金を何に使ったのか?

                                      2023年12月25日  

    3ー124 政治家は裏金を何に使ったのか? 
    
  自民党の派閥が、政治資金パーティーを裏金づくりに利用していた疑惑で東京地検特捜部の捜査が進んでいます。
  
  派閥からキックバックを受けたお金を、資金管理団体は何に使っていたのでしょうか?
  一部に、お金がなかったので、管理団体の事務所の、水道光熱費の支払いに使っていたという発言が
  ありましたが、大きな疑問があります。
  水道光熱費の支払いは、毎月発生します。しかも領収書で金額が確認できます。裏金はそのような支払いに
  使うのではなく、帳簿に記載しなければ、支払いが発生した事を誰も気づかないようなものに使うのが
  一般的です。そうだとしても、もし、民間会社のように複式簿記の帳簿で記帳していたら、収入の金額と
  支出の金額を合わせるのが大変です。資金管理団体をトンネル組織として、誰かにそのままお金を
  渡す場合を別にして、裏金が入金された時から、物理的に別の金庫に入れて、裏帳簿で管理しないと、
  複式簿記の帳簿に基づいて作成した貸借対照表の現金・預金などの値と実査した時の残高に不一致が発生します。
  
  自民党には、政党交付金が、年間170億円位交付されます。
  また国会議員には、「文書通信交通滞在費」が月額100万円、年間1200万円支給され、
  使い道の報告や領収書提出の義務がありません。安倍派のキックバックの金額が5年間で5億円と
  報道されており、大きな金額ですが、国会議員の側からみると、合法的に受け取る金額と比較して、
  それ程大きな金額ではありません。違法性を問われるリスクを犯してまで、裏金で受け取ることに
  何の価値があるのか、検察の捜査で解明が進むことを期待します。
    
  派閥から政治家へのキックバックというのは、総裁が内閣総理大臣になる自民党固有の現象なのか、
  国土交通大臣が居る公明党でもあるいは野党でも起きる可能性があるのでしょうか。
  裏金とは完全に無縁だという政治家は、法律に定める政治資金収支報告書だけでなく、
  民間会社並に複式簿記の帳簿で記帳して貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を開示すれば、
  会計の透明性をアピールできます。
  資金管理団体の会計責任者のなかにも、団体の総務や経理を、昔からのやり方で引き続いて
  行っているだけで、会計の理論を知っているわけではないという人もいます。民間会社の経理の
  人でも、連結財務諸表を作る時の連結修正仕訳の期首仕訳は、「なぜ、行うのですか?」と質問すると、
  期首仕訳のやり方を説明する人が多くて、やり方はわかっているのですが、当期の連結財務諸表は、
  当期の各社の個別財務諸表を合算して作るので、当期の個別財務諸表には前期の連結財務諸表を作るために
  行った、連結修正仕訳は含まれていないので、投資と資本の相殺消去など、前期に行った
  修正仕訳と同じことを再び行う必要があるからという理論を、明快に説明する人は少数です。
  新たに国会議員になった人は経理などを勉強している時間はないので、会計責任者が、会計の理論を知った上で、
  正しい会計処理を行えばそうなるし、従前から行っている会計処理はこうだからといえばそうなります。
  派閥からキックバックを受けたお金を、政治資金収支報告書に記載しなかったのも、
  特に使用目的を定めて裏金にした人もいるでしょうが、皆やっていることなので、そういうものだと思った、
  問題になれば修正すればよいと思った人もいるかもしれません。長い目で見れば、
  会計の理論を知った上で、正しい会計処理が出来る人を増やしていくことが、問題の解決になります。
   
  今回の、政治資金パーティーを利用した裏金づくりは、
  バンダナを巻いた大学の先生の東京地検への告発がきっかけになって、捜査が始まりました。
  政治資金収支報告書は、総務省や地方自治体で、pdfのフォーマットで開示されます。
  改ざんや2次的利用を防ぐため、行政機関の情報開示では、pdfフォーマットが使われることが多いです。
  これが、解析を困難にしているのですが、生成AIの技術の進歩で最近の
  数年間で大きく事情が変わりました。私はCharGPTの有料版は契約していないので、自分で試したわけでは
  ないのですが、pdfフォーマットを読み込む機能があります。
  図表の読み込みは意外と苦手という評価もありますが、数年前とは大きく事情がかわり、行政機関と民間との
  情報量の非対称性という事情が大きく改善する可能性があります。
  生成AIでpdfフォーマットのファイルを読み込み、JSONなどの形式に変換して出力し、
  システム内で、インボイス制度の事業者番号に相当するものを、政治資金管理団体に割当て
  組織内のお金の増減や、組織間のお金の流れを大量のデーターから分析すれば、
  政治にかかわるお金の流れがかなり明らかになります。
  検察の捜査のように、短期間に証拠に基づいて違法性を明らかにするということではなく、
  長期間にわたっての、政治にかかわるお金の流れの傾向を明らかにし、公開すれば、多くの人が
  政治にかかわるお金の流れを理解することができます。生成AIによる処理は、最初から完全に機能するわけでは
  ありませんが、人間による作業と比べて、超高速です。
  政治資金収支報告書の分析で疑問が生じると、情報公開請求することもできます。
  墨塗りの文書が出てきても、墨塗りでもそこに書かれている文言の長さは確定しているので、
  文書全体を生成AIに読ませて、他のページの情報などから類推すれば、推測の文書がでてきます。
  墨塗りから推測するのは人間は苦手ですが、生成AIが出力した推測の文書を読んで、考察したり
  さらに開示要求すべき資料が何かを考えるのは人間は得意です。
  このように、生成AIの超高速処理と、人間のいくつかの可能性の中から判断したり、次の行動を
  考察する能力を上手に利用すると、人数や予算で行政機関と圧倒的な非対称性がある状況でも、
  民間で政治や行政の現状を明らかにすることができます。
  
  政治資金規正法の改正が話題になります。しかし議員立法で法案をつくるとなると、自分自身
  のことなので将来困らないように、抜け道を残しておこうということになります。
  国会議員が会計の理論や、会計に使われるIT技術をどれ程理解しているかも課題になります。
  行政機関に情報公開の請求をしても、なかなかすべての情報が公開されることを期待できません。
  生成AIなどのIT技術を利用して、民間で情報の関連付けを行い、現状を公平な視点で
  開示して、多くの人の関心を呼ぶことが解決策になります。
  
  今問題になっている、政治資金規制法の犯罪の捜査は権限をもった検察にまかせることになります。
  また、新聞の報道も、検察が政治事務所の家宅捜索を行うなどが注目をあびます。
  それだけでなく、裏金の問題の行方をシリーズで追いかけるテレビ局もあります。
  大物政治家が逮捕されるかどうかはもちろん誰もが注目していますが、会計責任者やパーティー券を購入した
  企業など、それぞれの人がどのような立場でどのような考えで行動したかを明らかにすることも、
  事件を生み出した風土を改革するために重要なことです。
  
  そして、金権疑惑の事件が起きた時だけでなく、常日頃から、政治の動きに多くの人が注目する環境を
  作ることが、監視の目を行き届かせるための基礎になります。
  大阪・関西万博の開催に必要な費用の高騰が問題になっています。期間中の運営費用と、
  地下鉄や道路など将来も使用する資産を建設するための支出があり、ごっちゃになって、ニュース
  を聞いてもよくわかりません。政治や行政の当事者も完全には把握できていないようです。
  会場の建設費用は、建設会社など民間会社に支出されることがほとんどなので、
  受注した民間会社の有価証券報告書から推測できることがあります。
  民間会社の有価証券報告書の経理の状況は、xbrlのフォーマットでも提出されますが、
  html形式でのみ開示される連結附属明細表や連結財務諸表の注記項目にも有益な情報があふれています。
  生成AIなどのIT技術を利用して、これらの情報やテキスト部分も解析すると、
  業務の内容がかなり明らかになります。多くの会社を分析することで、逆に
  2025年日本国際博覧会協会の財務状況や寄付を含む収入・支出の状況を明らかにできる可能性があります。
  生成AIや他のIT技術の利用次第では、博覧会協会や行政機関が把握できていない会計の全体像を
  民間で把握できるかもしれません。
  まずは、選挙の投票率の向上も含めて、多くの人が、政治家の行動や政治のお金の流れに関心を持つことが、
  長期的に政治とお金の問題の解決につながります。