各種のコラム -- 3ー123 なぜ今の健康保険証ではダメなのか?
2023年12月1日
3ー123 なぜ今の健康保険証ではダメなのか?
暗証番号なしの「マイナンバーカード」が発行されます。
ICチップにはどのような情報が記入されているのでしょうか?これはまだ公式発表はありませんが、
券面アプリケーション(AP)の情報だけではないでしょうか? マイナンバーカードに記載されている情報が
記入されていて、カードの改ざんがないことを保証するための情報です。
それ以外の情報は、暗証番号がないとアクセスできないので、記入できないはずです。
コンビニで住民票を発行したりすることはできません。
それでは、暗証番号なしの「マイナンバーカード」が何に使えるかというと、健康保険証として
使う以外あまり思いつきません。そうまでして、現行の健康保険証を廃止する必要があるのか?
どうしても納得できません。マイナンバーカードの発行枚数を増やそう。そのために、健康保険証として
利用することにしよう。それだけでは不十分だから、現行の健康保険証を廃止して、
マイナンバーを使うしかない状況を作ろうという、中央省庁の役人の一旦決めたことは、やめるわけには
いかない、「無謬性の原則」の象徴です。間違いを認めることは許されません。
今の健康保険証を使うことに大きな問題があるなら、廃止して新しいものに替えることに合理性があります。
今の健康保険証を使うえでの問題点として、写真がないので、他人がなりすまして使用することがある、
転職した後に、以前の健康保険証を使うことがあることがあげられます。
しかし、廃止しなければならないほど大きな問題ではありません。暗証番号つき「マイナンバーカード」、
暗証番号なしの「マイナンバーカード」、資格確認書が混在するほうが、混乱が起きそうです。
マイナンバーカード健康保険証にすると、大きな利点がある新たなサービスが始まるのなら、
新しいものを付け加えることに合理性があります。過去の病歴や投薬歴が参照できることが、メリット
としてあげられますが、現行の法律で、カルテの保存期間は5年間なので、どれほどのメリットがあるかは不明です。
今の健康保険証を廃止するというのは、行政のデジタル化の失敗の象徴のように思えます。
マイナンバーカード健康保険証の最大の問題は、見るからに健康保険証らしくないことです。
携帯電話に、マイナンバーカードが搭載されて、ICチップによる資格の確認だけでなく、
画面に見るからに健康保険証のような情報が表示されて目視で確認できるようにすれば、
本人も病院の受付の人も納得がいきます。モバイルSuicaもアプリにはいろいろトラブルがあって、
チャージできなくなったなどの問題が起きることがあります。しかし、チャージ金額が残っている限り、
駅の改札を通過できなくなることはほぼ皆無です。ICチップ読み取りによる確認の際は、
処理のミスがほぼ皆無という状態でないと、サービスの継続に問題が発生します。
健康保険による医療の質の向上と、業務の合理化による経費の削減が、行政のデジタル化の目標なら、
まず、医療のエコシステムのなかの「キーストーン種」は医師なので、医師が記録した、カルテを
まずデジタル化して、それを永久保存することにしなければなりません。それから、医療のエコシステムのなかの
もうひとつの「キーストーン種」は患者本人なので、モバイル機器を利用して、健康状態を24時間監視するとか、
過去の病歴や投薬歴を参照して、本人に最適なプライベート医療を導入しなければなりません。
アルコールの摂取についても、絶対に抑制しなければならない人と、アルコールの分解能力が高い人がいます。
高血圧の人でも、塩分を絶対に減らさなければならない人と、ある程度摂取してもかまわない人がいます。
健康に生きるためには、あらゆることを抑制した生活を送る必要があって、そのために精神的に
まいってしまう人がいるのでは、本末転倒です。そのように、「キーストーン種」である患者本人が
不満をもっていることを行政のデジタル化を通じて改善していかなければなりません。
話が変わりますが、高度経済成長といわれた1960年代、日本の鉄道の非電化区間で使われた
ディーゼルの車両の技術は遅れていました。鉄道では、SLは日本国内で採掘できる石炭を動力として
使うことが可能なので、火力発電所で作られる電気を動力とする電車は、積極的に技術開発が進められましたが、
日中戦争が始まった1937年以降は、非電化区間は、石炭を動力とするSLを使うことにして、
石油やガソリンは、自動車や戦闘機などで使用することにしました。
第二次世界大戦をはさんで、15年近いブランク期間があったため、鉄道のディーゼルの車両の技術は遅れていました。
1960年代に、1930年代に開発されたエンジンにスーパーチャージャーを取り付けて使うこともありました。
自動車のエンジンと同じというわけにはいきません。例えば、自動車では、前向きに走っている時に
良く冷える位置にラジエーターなどを置きます。しかし、鉄道は、前向きにも後ろ向きにも走るので、
冷却装置の配置も独自に考える必要があります。ドイツから技術導入して開発したディーゼル機関車の
推進軸(プロペラ・シャフトのような部品)がはずれて、機関車と客車が脱線転覆したりしました。
日本の鉄道は狭軌なので、部品を狭いスペースに押し込むのも大変でした。
中央西線の名古屋〜長野間は、1973年に導入された振り子電車が有名ですが、その前にディーゼルカーの
特急「しなの」が走っていました。山岳路線なので、高出力のディーゼルエンジンを搭載しました。
ラジエーターにブロワーで風を当てるのが一般的なのですが、軽量化が可能でブロワーの動力が必要ない、
自然冷却のラジエーターを屋根の上に積みました。効率よく冷えるはずだったのですが、トンネルに
入るとオーバーヒートする故障が相次ぎました。エアコンに使う補助動力用のディーゼルエンジンが
オーバーヒートすると、クーラーが効かなくなります。窓があかないので、急遽、製氷所から大きな氷をとりよせて、
客室に積んだのですが、あまり冷えないし、床が水浸しになって非常に不評でした。
日本は、失われた30年とか、デジタル敗戦とかいわれますが、マイナポイントの給付で、
役所の窓口が混乱し、登録のミスが発生しているのをみると、第二次世界大戦をはさんで、15年近いブランク期間があって
遅れていた、1960年代のディーゼル車両を見ているようです。
一旦決めたことは、やめるわけにはいかない、自分のやることにはミスはないという「無謬性の原則」にとらわれる
ことなく、今の健康保険証の廃止を延期するなど、臨機応変に対応する必要があります。
2024年3月に戸籍の情報とマイナンバーが連携されるのは、戸籍謄本を本籍地以外の自治体からも申請可能に
なるなど、明らかなメリットがありそうです。
インボイス制度とともに、デジタルインボイスも導入されましたが、ほとんど使われていません。
これも行政のデジタル化の失敗の象徴です。消費税免税事業者を課税事業者にすることで、税収を増やそうという
目的と、デジタルインボイスを組み合わせたのが最悪です。
デジタルインボイスを何と組み合わせるべきだったかというと、例えば、公認会計士による「売掛金」の監査です。
大会社で公認会計士監査を受ける会社の場合、監査人にとって「売掛金」の実在性の確認は、
売上や売掛金が不正に過大計上されていることがないことを確認するための強力な監査証拠を得るための重要な項目です。
最近はデジタル的なやり方も導入されていますが、10年程前までは、被監査会社に売上にともなう「売掛金」
が存在する会社、すなわち、被監査会社から仕入れがあり、「買掛金」がある会社に、監査人が手紙を書き、
買掛金の額を記入して、署名捺印して、郵送してもらっていました。請求書をデジタルインボイスにすれば、
どうゆう商品の売上で誰に対していくらの「売掛金」があるかが一目瞭然になります。
デジタル庁は、日本のPeppol Authority(PA)として、グローバルな標準仕様である
日本におけるデジタルインボイスの標準仕様(JP PINT)の管理等を行っています。
監査法人など、業務のために必要な権限をもった機関に情報を開示することで、業務を効率的に
進めることができます。「売掛金」の実在性の監査を行っても、資本関係のない会社どうしが、
裏取引をして、商品を移動させること無く、循環取引をして、帳簿だけ辻褄をあわせると、
不正を発見できないことがあります。しかし、商品を出荷したり納品する時に、コンビニのように、
バーコードやQRコードを読むことにして、発注書や請求書とシステム内で連携することにすれば、
不正をおこなうのが困難になります。監査人は、財務諸表の正確性の監査とともに、
会社が作成した内部統制報告書に対する監査人の意見を記載した内部統制監査報告書を作成します。
会社が作成した内部統制報告書の確認も重要ですが、効率的な業務を行い、不正の発生を防止するための
内部統制の構築があってこそ有効に機能します。
例えばデジタルインボイスを採用して、正常な業務の遂行は自動化されていてミスなく効率的に行われるが、
不正を働くために、帳簿などの書類を改ざんすると、データーの連携の辻褄があわなくなり、
不正を働くために手間をかけるのは割があわないというような内部統制を構築することで、
業務が効率的に適正に行われます。公認会計士監査を受けるような大会社の場合、デジタルインボイスを取り入れるための
業務システムの開発も可能です。大会社の経理の人で、現金を自分の懐にいれるような不正は絶対やらない人でも、
循環取引をして、帳簿の辻褄をあわせるようなことは、来期になると問題が解決すると思って帳簿を改ざんする人
がいます。しかし冷静に見れば、つべこべ言わずに会計基準に従った経理を行うのが、正しい行為であり、
それをサポートするのが正しい業務のデジタル化です。
しかも、日本中の会社のすべてのデジタルインボイスにデジタル庁がアクセスできるようになれば、
日本中の取引の状況がリアルタイムに把握できます。
建設機械を作っている会社で、コンディション・ベースト・メインテナンスの目的で、販売した建設機械の所在地
や稼働状況を把握している会社があります。中国に輸出した機械の稼働状況を確認すれば、技術的には
どこで、どのような建設工事が進んでいるかの日々の状況もわかります。テスラのように、従量制サブスクリプション
などに備えて、販売した車の場所や走っている状況をリアルタイムに把握できる仕組みが導入されると、
タクシーの待ち時間や稼働状況がリアルタイムにわかります。
以前に毎月勤労統計調査に関して厚生労働省職員の事務処理に不正があったことが問題になりました。
消しゴムで消して書類を修正できるような業務手順になっているから、不正が起きるので、
景気ウォッチャー調査も聞き取りとあわせて、タクシーの稼働状況や、ドラレクの画像から
自動集計した街の状況をAIで分析して調査するようにすれば、正確な状況がすばやく得られるようになり、
統計調査のデーターの改ざんが困難になります。
行政のデジタル化にあたっては、「まず隗より始めよ」で、政治資金収支報告書を
デジタルインボイスを元に作成することにするとか、政府の財政資金を使う「基金」を管理する団体
は、デジタルインボイスによる取引に限定するなどを推進しなければなりません。
行政のデジタル化を順調に進めるには、非常に不評だったココアのアプリを、季節性インフルエンザの
疫学調査に再利用するなど、中央省庁の人のデジタル化に対するマインドを改革しなければなりません。
ココアのアプリの評価に対する最終報告書はくわしく読んでいないので、
もし、ブルートゥースを使って感染状況を把握することが技術的に根本的に不可能だったのなら、
そういうことを確認して終わりにするのが適当です。しかし、個人情報の保護との関係で有効な通知ができなかったとか、
バージョンアップなどの際の運用に問題があった程度なら、2度や3度の問題を気にする
必要はありません。SEにはそのようなマインドの人が多く居ます。それで、4度やっても5度やっても失敗を
重ねる私をお手本にするということではありませんが、「無謬性の原則」というマインドを改めて、
プロジェクトの途中でミスが見つかったら、スタート地点に戻ってやり直すこともありだと思わなければなりません。
飲料水の自動販売機で、Suicaなどのタッチ決済に対応した物が増えています。キャッシュレスは便利良いのですが、
タッチするタイミングと商品を選択するタイミングが私はなかなか理解できません。スマートウォッチSuicaを
左腕につけていて、右手で商品を選択しようとすると体がよじれます。一部の会社の飲料水の自動販売機で
ブルートゥースに対応したものがあります。アプリのはいった携帯を近づけると、商品リストがダウンロードされ、
携帯の画面上で商品選択と決済ができます。体がよじれる心配がありません。しかし、自動販売機と私の相性が
悪いのか自動販売機と私の携帯の相性が悪いのか、商品リストのダウンロードが中断することが頻繁に起きます。
操作中後ろに人が並ぶことがないような、暇そうな自動販売機を探して操作するのですが、
操作が中断して、設定画面で、ブルートゥースを再起動したり、携帯を再起動して取り直しの勝負になることが
しょっちゅうあります。ブルートゥースはレーテンシーの問題があってあまり決済などには適していないのかと
思っていたのですが、鉄道の改札に使う実験を行っている展示を見ました。順調に迅速に決済できていました。
Suicaのタッチ決済と異なり、携帯を取り出す必要がありません。改札機と私の相性がどうなのかは
試す機会がありませんでしたが、ロー・レーテンシータイプのブルートゥースも登場したり、日々技術改良が
あるので、気を取り直して、ニュー・ココアのアプリをリリースするとか、紅茶とか緑茶とか名前を改めて
類似のアプリをリリースしてみるくらいのマインドの改革が必要です。
最後に、去年も今年も株価は上昇しました。効率的市場仮説(現在の株価は、将来に対するあらゆる情報を織り込んだ上で
形成されており、世間にある情報をもとに恒常的に利益を上げることはできないという考え方)を私は信用してます。
この考え方によると日経平均株価などは、上がったり下がったりを繰り返します。
1949年以来の一年間の日々の日経平均株価の終値が前営業日の終値より高かった日の割合を計算してみると、
40%から60%の間にはいる年がほとんどです。40%以下の年はありません。60%を上回ったことも
非常に少なくて、1952年、1959年、1960年、1971年、1972年、1978年の6回です。
今年は、今のところ、58.8%なのでかなり高いです。9月ごろは63%位でした。
それでは株価が上昇した日の割合が高かった翌年はどうなったかというと、6回のなかでもぶっちぎりで
高かったのが1972年(69.7%)で日本列島改造論の年です。翌年は第一次オイルショックで、
1972年は、日経平均株価は、2712.31(1月4日の終値)から、5207.94まで上昇しましたが、
1973年末には、4306.8に1974年末には、3817.22に下落しました。
いっぽう1960年、所得倍増論の年は、869.34から1356.71に上昇し1961年末も1432.6
まで上昇しました。そこで、来年の株価は上がるか下がるかのどちらかになると予想します。
現在世界的に株価が上昇しているのは、リーマンショック前と比較して、2019年までに
世界の中央銀行が発行する銀行券(現金)の総量が3倍になり、さらにコロナショック対策でリーマンショック前との
比較で5倍まで2段階に増えた現金が株式市場に流入したからだと思います。インフレも株式上昇に貢献しています。
GDPは名目の値と実質の値がありますが、株式の価格には名目の値しかありません。
風船が2段階に膨らんだとしても2段階にわけてしぼむわけではありません。一気にはじけます。
新NISAが始まるまでは上昇しても、新たな現金の流入がなくなって一気にはじけるリスクもあります。
節分天井、彼岸底になるかもしれません。以前から書いていますが、私の予測は当たったことがありません。