各種のコラム --  3ー122 所得税減税はそんなに良くないか?

                                      2023年11月20日  

    3ー122 所得税減税はそんなに良くないか? 
    
  所得税、住民税合計で4万円の減税や非課税世帯に7万円の給付を行う案が発表されました。
  評判は良くありません。しかし冷静に考えれば、増税よりは減税のほうが良いのではないかと思います。
  評判が良くないのは、防衛費増額などのために将来の増税が予想されるためということもあります。
  また、消費税の税率の低減が消費拡大の打出の小槌のように語る解説者もいます。
  しかし、消費税の税率の低減が万能の経済活性化策であるという考え方には疑問を持っています。
  
  会計の勉強を始めた時から、私は相当詳細に家計簿をつけています。税抜き経理で記帳していて、
  消費税は期間中は仮払消費税の科目で経理しています。
  一年で仮払消費税の額がおよそ10万円になります。(貧しい人の平均値です??)
  一年間の支出が100万円程度ということではありません。家賃や、国民健康保険料、自動車税などのような、
  消費税非課税の支出がかなりあります。
  仮に、消費税の税率が5%になるとすると、5万円近く、支出が減ります。私にとっては、所得税、住民税の減税と
  同じことです。経済活性化策としての消費税の税率の低減に賛成できないのは、時限措置の場合、本来の
  税率にもどす時、消費税の増税に匹敵する経済への悪影響があります。
  さらに、消費税の税率を低減すると、消費支出額が大きい高額所得者・高額消費者に対する減税額が大きくなります。
  貧しい人に集中的に減税することが可能な、所得税、住民税の減税のほうが、生活支援策として優れています。
  給与の昇給は、物価の上昇よりは遅れて実施されることが多いので、それまでの対策として、
  今、所得税、住民税を減税するというのは、正しい処置です。
  
  高齢者が増えて、働いている人が減ると、所得税を収める人が減ります。そこで、健康保険料や介護保険料のように
  所得の有り無しにかかわらず徴収できるものに重点を移そうとします。所得税は、超過累進税率なので、
  配偶者控除など、税率が異なる複数人に関わるものを除いて、年間所得が特定の額を超すと負担が増すという
  所得の壁はありませんが、厚生年金保険料や健康保険(社会保険)料には、所得の壁があります。
  「国民負担率」が上がっていく中で、配偶者控除、扶養者控除の制度も含めて、公的負担のあり方はいかにあるべきかの
  抜本的な議論が必要ですが、「増税くそメガネ」と言われたので減税するというのは、いかにも場当たり的で付け焼き刃で、
  将来を見据えた長期的展望が感じられません。それこそが、減税の評判が悪い最大の理由だと思います。
  
  消費税は、我々が日々税を負担していることを自覚するので、非常に評判が悪いです。しかし、日本国内において
  事業者が事業として、対価を得て、資産の譲渡、役務の提供を行ったときに、事業者に課税すると定義されている
  通り、事業者が例えば100円で仕入れた物を150円で販売したときに、差額の50円の付加価値に対して課税し、
  事業者が納税、納付する税金です。最終消費者は担税者です。法人税は、法人の課税所得に課税するので、
  景気の変動や、資産の減損を認識した時などに、納税額が大きく変動します。
  多くの非上場の法人が赤字だというのも、経理の方法に疑問があります。海外の法人でも、日本国内
  の消費者に資産の譲渡、役務の提供を行った時は、課税の対象になります。(電子書籍や広告等の配信など
  インターネットを介して行われる役務の提供、電気通信利用役務等、の国内取引の判定基準は、
  役務提供を行う者の所在地から役務提供を受ける者の住所に改正され、国外事業者が国内に配信する取引に
  消費税が課され、買い手側である国内事業者が消費税の申告・納税をするリバース・チャージの規定があります。)
  地方消費税を実際に消費された場所の記録をもとに、都道府県や市町村に分配するなどの方法を取り入れて、
  事業者の本社の所在地に影響されない額を増やすなどの方法で、居住する人口に対応する安定した税源にして
  それを周知すべきです。アメリカの売上税は地方税です。
  所得税が、源泉徴収の制度のために、日々税の負担を自覚していないのも問題です。
  公的負担のあり方について、将来を見据えた長期的展望を語ることが重要です。
  
  マイナンバーを使って、個人の所得を把握するというと、評判が悪いので、健康保険証の切り替えなどを先に
  進めようとしています。しかし、冷静に考えると、マイナ健康保険証が効果を発揮するのはかなり困難です。
  病院の受付で、紙の健康保険証の替わりにマイナンバーカードを使ってもあまり有り難みはありません。
  過去の病歴や投薬歴が参照できて、問診で説明する必要がなくなると有り難みを感じることができます。
  そのためには、生まれてから現在までの、健康保険証の番号を正確にシステムに記録しておく必要があります。
  現在の、健康保険証とマイナンバーの紐付けで問題が発生していますが、生まれてから現在までの、すべての健康保険証の番号
  について本当に正確な紐付けが可能でしょうか。今のように、健康管理組合で紐付けのための入力を
  している状況ではかなり困難です。過去に所属したすべての健康管理組合に出向いて、マイナンバーカードの
  確認を受けるか、新旧の健康管理組合間の完全な移動の記録が保存されている必要があります。
  一方、徴税の目的のために、個人の所得を把握する場合、所得税との関連では、課税年度、一年間の所得の把握が
  基本になります。損失の繰越控除の制度などとの関連で、過去数年分の所得を把握する必要はありますが、
  生まれてから現在までの、すべての所得を把握する必要はありません。低額所得者に必要な減税や給付を
  行うためには、デジタル技術による個人の所得の把握が必要ですが、なかなか理解が進みません。
  デジタル行政が進んでいるエストニアなどでは、政府が登録された銀行口座の情報などから、
  それなりに自動的に個人の所得を把握するシステムが構築されています。何が便利になるから、
  どういう方法で、どういう個人情報を把握するかを将来を見据えた長期的展望に基づいて、具体的に
  語ることが重要です。日本の公的給付の受取の目的のみに利用する銀行口座を登録するという説明が
  納得できません。本当に、公的給付のためだけなら、証券口座をマイナンバーに紐付ける必要はありません。
  このような、目的を隠して、個人情報の取得を強制的におこなう方法が不審をまねいています。
  消費税のインボイス制度との関連で、デジタル・インボイスは非常に評判が悪いです。
  適格請求書を発行している事業者でも、従来の請求書に、事業者番号を示すはんこを押印して、事務処理をおこなっている
  事業者が多くあります。日本ではほとんどの人が正直に納税申告しているから、デジタル・インボイスは、
  不要という意見があります。99人が正直に納税・納付しているなら、1人が脱税や脱法的節税をしていてもかまわないという
  ことにはなりません。皆がデジタル処理を行うことが、不正や脱税の発見を容易にするのですが、
  日本ではなかなか理解されません。
  
  10月30日の毎日新聞の社説に”米国の天文学者、クリフォード・ストールさんは1986年、
  勤務先の研究所でシステムの管理を任された。コンピューター使用料のチェックが最初の仕事だ。
  使用時間に応じて研究者から料金を徴収する仕組みだが、前月の料金総額が実際に使われた時間分より75セント少なかった。
  原因究明の過程で外部からの不正アクセスに気づく。研究所を経由して防衛施設のシステムに侵入を試みた形跡もあった。”
  という記事があります。最終的に防衛情報を盗もうとしたハッカーの逮捕につながりました。
  デジタル技術がどのように有効に活用できるかの典型的な事例です。日頃から誤謬のない処理を効率的に
  行うことで、何かの疑問がある処理が発見され、不正の発見につながることがあります。日本では、
  この日頃から誤謬のないデジタル処理を効率的に行うことの価値が理解されません。
  
  以前、タスク管理システムを導入した会社があります。物品購入などの申請はすべて共通のデーターベースに
  入っているはずなのですが、ある時確認すると、なぜかすべての申請が承認されています。
  さらに詳細に調べたところ、以前通り、秘書の人が各人ごとに独自に開発した表計算ソフトのアプリで、
  申請の管理を行い、最終的に承認されたものだけを事後的に共通のデーターベースに入力していました。
  秘書の人が申請の管理を行う際の問題点として、自分が必要な物品の購入ではなく単に事務処理を
  しているだけなので、何かのミスで処理が中断して、必要な物品の購入が遅れることで、サービスの
  提供に支障をきたす問題が発生していました。この状況を改善するために、申請者本人が共通のデーターベースに
  入力することになったのですが、誰が決めたのかははっきりしないのですが、ほとんどすべての
  管理者が、秘書以外の者が共通のデーターベースに入力することを禁じていました。
  タスク管理システムを導入したことで、秘書の人の入力の手間が増えただけで、事務処理の効率化も
  処理のミスの削減も達成できていませんでした。
  
  デジタル化することに対し、表立って反対する人はいないのですが、実際は、事務処理が増えただけで
  業務の効率の改善は図られていないというのは、行政に限ったことではなく、
  例えばテレビ放送のデジタル化でも、類似のことが起きています。
  およそ10年前の地上デジタル放送への移行の際には大々的に宣伝が行われました。
  画質が良くなるとか、文字放送が始まるなどのメリットが強調されました。たしかに画質は良くなって
  いまさらアナログにもどることはできませんが、デジタル素材は画質が劣化することなく、
  コピーからコピーを作ることができるという最大のメリットは、著作権との関連であまり活かされていません。
  初期は、録画したものを一度しかダビングできなかったので、ダビングに失敗したなどの
  不満が噴出しました。そこで、著作権との関連も含めて過去に放送したデジタル素材をどのように活かすかの、
  将来を見据えた長期的展望を議論することなく、一度しかダビングできないのが非常に評判が悪かったので、
  10回ダビングできることにするという付け焼き刃の対策だけが行われて、現在まで続いています。
  NFTの技術を使って、正当なコピーを所有する人はコピーからコピーを作っても良いことにするとか、
  コピーが増える毎に、著作者に収益が得られるようにするとか、クラウドにすべての番組を保存し、
  個人的なコピーは作らなくても、サブスクリプションなどの方法で、過去のすべての放送にアクセスできるように
  するなど、将来を見据えた長期的展望の議論が必要です。
  
  デジタル技術では、日本は遅れをとっていて、失われた30年の象徴として語られることが多いのですが、
  最近RISC−Vのアーキテクチャーが話題になっています。オープンソースです。50年位前、
  IBMの370のアーキテクチャーが公開されていた当時、日本のメーカーはIBM370互換機を作成し
  IBMのコンピューターを性能で上回る製品を作っていました。プロジェクトXで紹介された、
  会社の近くのとんかつ屋で回路の設計会議を行っていた頃の話です。
  RISC−Vのアーキテクチャーが広まると、同じことが起きる可能性があります。Armのアーキテクチャー
  と比較して性能的にどうなのかなど、まだ世界の主流がどうなるかはわかりませんが、
  オープンソースのLinuxのOSは将来にわたって世界的に利用されることはほぼ保証されているので、
  日本でロジック半導体が設計され、プロセッサーが製造され、Linux上で稼働する多くのアプリが
  作成される時代がくるかもしれません。デジタル技術では、アメリカの企業が世界を独占する状況が
  続いていますが、変化があるかもしれません。東西冷戦が終了し、アメリカ1強といわれる頃から
  続いている状況に大きな変化があるかもしれません。Make America Greate Againは、
  1980年代にレーガン元大統領が使用した選挙キャンペーンで、トランプ前大統領も使用しましたが、
  最近の世界の状況を見ていると新自由主義経済も、アメリカ1強主義も行き詰まっていて変化するように見えます。
  Make The World Greate Againという異なる価値観が支配する世界に数年のうちに
  大きく変わるかもしれません。トランプ前大統領は、歴史上で、終焉する時代を代表した人物として
  語られるようになりそうな気がします。
  中国は、リーマンショックからの立ち直りでは、世界経済を牽引したのですが、毎年、日本の新幹線の
  営業距離を上回る、高速鉄道を建設する公共投資は、いつかは終わりを迎えます。
  すでに、日本の鉄道の営業距離の総延長を上回る、4万キロ以上の高速鉄道が開業しています。
  人口の違いを考慮しても、最近の15年間と同じ設備投資を続けることはできません。
    
  適切に利用すればデジタル化の大きなメリットが得られる分野の一つが会計の分野です。
  コロナ感染症の期間を中心に、多くの補正予算で各種の給付が行われました。迅速におこなうことが必要で、
  困窮者の生活支援に有効に活かされました。それは良かったのですが、これからも、
  日銀の量的緩和策などを継続することが、経済の活性化に繋がるという人がいますが、私は疑問をもっています。
  量的緩和策で日銀が国債を購入することで、かなりの現金が市中に流通したはずですが、
  1980年代のようなバブルになっているという実感はありません。
  1980年代のバブルの時には、「シーマ現象」と呼ばれる高級車ブームがあったり、普通の人がプチバブルに
  なる現象がみられましたが、今回の量的緩和策では、株式相場にお金が流入したり、都心のマンションが
  値上がりして、ごく一部の人にお金が流入して、黙っているのでしょうが、多くの人の家計は苦しくなるのみです。
  それから、補正予算のお金が、国庫補助金等の形で地方公共団体等に設置造成された基金に使われている実態が
  明らかになりません。将来の事業遂行に備えて、基金の基盤を整備するのが建前ですが、
  地方公共団体等には、現金預金か、資産が与えられます。将来的に、地方公共団体や関連団体の
  天下りした人に対する報酬になっているのではないかという疑問があります。
  関連団体等の資産として車を購入し、天下りした役員の送り迎えを運転手付きの車で行う例もあるそうです。
  
  海外プロジェクトに参加していた時、関連団体等に天下りして運転手付きの車での送り迎えを受けている
  人が言っていましたが、(海外で他の会社の人に対してなので、本音で語ったのかもしれません。)
  運転手付きの車の管理費はほぼ自分の報酬と同じくらいで、現金でもらえるならそのほうが
  よほどありがたいそうです。しかし、自分のような末端の天下り役員にも運転手付きの車を与えられることで、
  何かある時は、有無を言わさず、役所の時トップにいたようなトップの天下り役員のいわれる通りの
  仕事をしなければならないそうです。
  このような、本人もあまりありがたみを感じていないようなことに国債を発行して、予算を付与しても
  将来の経済の活性化に寄与しないように感じます。
  
  中央銀行は通貨を発行することができるという特殊な機関なので、国がどこまで国債を発行してもかまわないのかについて、
  明快な回答ができる人はいません。国ごとに各種の状況が異なるので、他の国と比較してもあまり意味がありません。
    
  地方自治体の財務報告を上場企業並みに誰もがアクセスできるかたちにすると、
  皆が、公共機関の財政や、公的負担のあり方について理解を深めるきっかけになります。
  地方自治体の入札などから率先して業務をデジタル化します。
  デジタル庁がクラウド上に会計処理のシステムを構築して、地方自治体の入札で紙や印鑑やフロッピーディスクの
  使用をやめ、すべて、xmlのファイルでのやり取りにします。
  マイナ健康保険証に移行しない人は保険治療が受けられないというのは誰も納得しませんが、
  地方自治体の入札に参加する事業者なら、業務のデジタル化を進めて、すべての処理の記録をデジタルで
  保存することが可能です。
  取引が発生する時から、デジタル化してすべての記録が参照可能な形で保存されるようにすることが、
  デジタル化によって業務を効率化し、誤謬のない処理を行うための基本です。
  地方自治体の会計帳簿を所定の手続きを行った人にはプライバシーを保護する手続きを行った上で、
  公開する形にすれば、地方自治体は多くの機関があるので、比較可能性が保証され、過去の記録
  とも比較可能なので、債務がどのくらいあっても構わないのかなどの議論が深まります。
    
  大谷選手が日本の小学校に3個づつグローブを寄付することが話題になっています。
  高額所得者の有名人からは税金を徴収するより、本人の判断で寄付してもらうほうが、
  経済の活性化に寄与するかもしれません。すごく話題になってますし、全校生徒3人の学校にも
  マンモス校にも3個づつグローブを寄付するのでは不公平だと文句を言う人もいません。
  ニューバランス社としては、これからグローブの販売を始めるとしたら宣伝効果絶大です。
  このように話題になり皆が喜ぶような企画と説明が大事です。
  
  東京駅を元の姿にリニューアルして、上空の利用していない空間を利用して、周りに高層ビルを
  建てるといった時には、概ね好意的に受け取られました。丸の内側の広場も好評です。
  しかし、神宮球場と秩父宮ラグビー場を建て替え明治神宮外苑を再開発するという計画には、多くの反対意見があります。
  神宮球場と秩父宮ラグビー場を建て替えるのは問題ないのですが、なぜ多くの木を切って、高層オフィスビル
  を建てる必要があるのかという点にたいして、多くの反対意見があります。
  神宮球場と秩父宮ラグビー場と公園だけで収益的に成り立つ仕組みを考える必要があります。公園のなかに
  SASUKEの設備をつくって、どれほど難しいか皆が体験できるようにするという私のアイディアは、
  あまり良くないかもしれませんが、現役アスリートやOBと、経営の専門家が十分に協議して、
  将来を見据えたスポーツとスポーツビジネス振興の長期的展望を語ることが重要です。
  神宮球場と秩父宮ラグビー場の上空が空いているのを利用してオフィスビルを建てて収益化し、
  そのために多くの木を伐採するという付け焼き刃の考え方に不満が続出しています。