各種のコラム -- 3ー121 日本の自動車産業の未来を占う
2023年11月1日
3ー121 日本の自動車産業の未来を占う
トヨタは、日本の株式市場で時価総額最大の会社であり、ホンダも現在12位で、自動車産業は、系列企業も含めて、
日本の産業、経済のなかで、非常に重要な位置を占めています。その未来を占ってみます。
占いなので、当たるとはかぎりませんが、私が注目するのは次の2つです。
1.中国での日本車の売上は減少する
2.自動車産業は、車の生産台数の拡大よりも、自動運転を含めた、モビリティーの拡大をめざすべきである
今年の4月下旬に開かれた「上海モーターショー」で多数の中国製の電気自動車が展示され、日本への輸入が
始まりました。将来、バッテリーEVになるのか、内燃機関を備えたPHEVになるかにかかわらず、
中国で使われる車は、中国製になりそうです。高速鉄道やジェット旅客機をみても、中国は、輸送機械はかなり
得意そうです。日本ではほとんどの乗用車が日本製であるように、将来、中国で使われるほとんどの
車が中国製になるような気がします。日本にどれ程輸入されるかはわかりません。
北米でも北米で生産された電気自動車のみが、補助金の対象になるなど、日本からの車の輸出は、あまり増える
気配がありません。日本の自動車産業は、アフリカなどへの輸出の拡大や、生産台数の拡大を目指すよりも、
自動運転を含めた、モビリティーの拡大をめざすべきです。
新しく車が欲しいという人は、日本ではそれほど多くありません。しかし、公共交通機関が廃止され移動手段が
なくて困っているという人はたくさんいて、しかも増える傾向にあります。新規の需要がみこまれるところに
事業の主軸を移すべきです。
自家用車の場合、24時間のうち平均すると、1時間程しか走っていなくて、ほとんどは駐車場で停まっている
そうです。これが、一日6時間走行に変わると、車の台数は6分の1ですみます。
日本の四輪車の生産台数は、800万台程で、普通車と、小型四輪車でおよそ500万台(輸出を含む)、軽四輪車は
150万台程ですが、バスは8万台余りです。車が走り続ければ、現在よりはるかに少ない数で、
輸送の需要を満たすことができます。
車が自動運転になると、車を所有する必要がなくなり、駐車場を借りる必要がなくなるなど、
生活全体に大きな変化があります。地球温暖化の防止のための温室効果ガスの排出量の抑制も、
輸送機器について、車を所有するのか、自動運転のタクシーを利用するのかで、取り組みが異なります。
バッテリーEVの充電に時間がかかっても、自動運転のタクシーなら、営業所に帰って充電するので
あまり問題になりません。鉄道プラス・カーシェアというCMがありますが、さらに自動運転が加わると、
方向音痴の私には、相当モビリティーが向上します。
次にIT業界の話ですが、「マイクロソフト復活の教訓」という記事が日経新聞の10月22日の社説にでています。
”パソコンからスマートフォンへの変化の機を逃して一度は衰退したものの、クラウドでは、
グローバル企業と広く提携して各社のデジタル化を支援する戦略に切り替え
文章や画像を自動で作る生成AI(人工知能)も自前主義にこだわらず、
スタートアップへの出資を通じてグーグルなどに先行した事業化を進めている。
過去に大きな成功を収めた巨大企業でも「イノベーションのジレンマ」から脱せることを証明したといえる。”
最近のコパイロット戦略の発表の時、ウィンドウズ95以来の画期的な商品という表現がありました。
これを聞いて、私は、IT業界で30年近く、画期的な商品の発表がなかったというのは一大事だと思いました??
ウィンドウズ・フォーンは大失敗でしたが、クラウドサービスの、Azureは大成功でした。
あまり画期的な商品というふれこみはなく、静かにスタートしましたが、リナックスが基本のクラウドサービスのなかで、
ウィンドウズ・サーバーなどが幅広く使えるサービスが、とくに法人サービスで人気で、AWSに次ぐ規模に
なりました。生成AIのコパイロットがどこまで広まるかは不明です。私は、最近のウィンドウズ11
が要求するPCのスペックが高すぎることに疑問を持っています。多くの人がウィンドウズ11で行っている
Webブラウザーを見るなどの事務系の処理は、ChromebookやChromeOSFlexなら、
4GBのRAMと16GBのHDDで可能です。まさに、”既存のハードウェアを有効活用し、
古いデバイスを最新のOSで再生して長く使うことで、電気電子機器廃棄物(e−waste)を削減できます。”
ゲームやゲームの配信、eースポーツに、ウィンドウズPCを使う人が増えているので、
ハイスペック・マシンがよく売れるようです。私はゲームはやりませんが、水冷(液冷)のマシンが増え
耐久性のあるメカニカルキーボードが復活しているのは、ありがたい傾向です。
Webの技術が日々進歩しているものの、基本が、1990年代から変わっていないように、
生成AIも利用範囲は飛躍的に広まるでしょうが、すでに基本的な技術の大半は確立されているように思います。
将棋の藤井聡太八冠とAMDのMPUは今や世界最強のコンビです。
AI将棋に関しては、半導体の技術、AIのモデルの開発、AIの学習強化法の開発、他の産業分野への応用など、
幅広い領域の技術の発展が期待されます。特に注目しているのが、双方の棋士の勝率予想です。
従来の将棋の解説は、さっぱりわからない私のような人にはあまり興味がなかったのですが、
勝率予想は素直に面白いです。他のスポーツのゲームなどにも取り入れると、新しい視聴者を獲得できます。
ハァーウェイのスマホ「Mate 60 Pro」も注目です。日本のキャリアは導入していませんが、
中国SMIC開発の7nmプロセッサが搭載されていることと共に、HarmonyOSが採用されたことも注目です。
AndroidOSが使えなくなったので、思い切ってマイクロカーネルのHarmonyOSを採用しました。
マイクロカーネル自体は、Googleが開発していたものなので、この先、中国とシリコンバレーとの
関係が薄れていくであろうなかで、中国のIT業界がどのように発展していくのか注目です。
インドネシアの高速鉄道が中国の支援で開業しました。当初、日本の高速鉄道の技術が使われると言われていたのが、
中国の支援に変わって話題になりました。一帯一路の一環で、まだ線路はつながっていませんが、中国からラオスに
つながる鉄道の一環としての位置づけなので、インドネシア単体で経済性を検討した日本よりは、ずいぶん
有利な条件だったようです。一方、ジャカルタ首都圏の通勤路線(KCI)では、日本製の中古の電車が1,000両
あまり使われていますが、今後中古の電車の輸入はしないことになりました。
インドネシアの自前の工場で新しい電車を作るという方針はすばらしいことですが、スイスの企業の技術支援
ではじまった車両製造の計画は、トラブルが発生し、現在は、”電子レンジ”と呼ばれる、E235系そっくりの
車両の製造が計画されています。日本のJRの在来線のような、線路の幅が狭軌で、車体の幅が、3メートル近い
というのは、世界的にはガラパゴスです。ヨーロッパの多くの鉄道は、線路の幅が標準軌で、車体の幅が、2.8メートル
あまりの、日本で言えば、京急や近鉄のような車両が使われています。
KCIの場合駅のホームなどが、日本のJRの在来線の規格で整備されているので、過去に輸出した
日本製の中古の電車の更新や、新しい工場での電車の製造の技術支援、新しい電車が完成するまでの
当面の車両不足への対応などを、継続的に経済支援すべきでした。
インドと中東、ヨーロッパを鉄道や航路などで結ぶ、大規模な「経済回廊」の建設計画が発表されました。
これにも日本は積極的に参画すべきです。新幹線の技術を使う、インドの高速鉄道建設の計画が進んでいます。
イギリスの高速鉄道の車両や運行計画にも、日本の企業が参加しています。360Km/hでの運転にあたって、
350Km/hでの営業運転が実施されている中国の技術をとりいれる事も考えたそうですが、
最終的に騒音対策に優れた日本の技術をとりいれることにしました。インドでもヨーロッパでも、鉄道に参画しているから、
途中もすべて日本製にするということではありませんが、鉄道技術や土木技術などで、参画することは、
将来日本とヨーロッパの貿易の経済的なルートを確保する上からも重要です。
”東海道新幹線は、未経験の新技術は原則として使っていない。むしろ既存の、経験済みの技術の集大成である。”
というのは、島 秀雄技師長の言葉なので、その通りでしょうが、当時の鉄道技術研究所の多くの旧海軍の戦闘機を
開発した技術者が参加したのも事実です。鉄道車両は重いほうが走行が安定するというなかで、
高速鉄道の車両は軽くするべきだという議論があったそうです。
経済の分野でも、いろいろな分野の人が集まって議論することが必要です。
経済の専門家の人で、デジタル・インボイスや電子帳簿保存法に反対する人が多くいます。
個人事業主の人が経理処理が面倒になって困るという趣旨で、その通りですが、大企業の経理部門は、
会計のデジタル化を進めてデジタル・インボイスや電子帳簿保存を積極的に取り入れる必要があります。
コンビニでレシートを受け取る人はあまりいません。キャッシュレス決済をする人は、
領収書もデジタル・インボイスにして、xmlのファイルをやり取りする仕組みを開発すると、
家計簿をつける時も便利です。大企業の経理部門でも記帳して、財務諸表を作成するまでが仕事で、
開示のためのxbrlファイルの作成も外注で、出来上がった財務諸表の比率分析や
経営計画への反映はやっていないところが多くあります。
海外の企業の買収で失敗するケースがありますが、企業買収のデューデリジェンスの時だけ、
財務諸表や会計帳簿を解析しても、企業の内情は見えてきません。
日頃から、財務諸表の比率分析などを行う習慣をつけるべきです。私は経済学は勉強したことはないのですが、
経済学にはミクロ経済とマクロ経済があります。天気予報や台風の進路予測の時、有限要素法といって、
地球の大気を微小要素に分けそのなかでの微分方程式を解くをいうプロセスを繰り返すことで、
全体の気象の様子の変化を予測します。そこでミクロな取引のデーターを何億・何兆と集めて、統計手法で解析して
集約すればマクロ経済の動向を予測できるのではないかと思うのですが、少し聞いた範囲では、
そのようなことはあまり行われていないようです。
天気予報の的中率が8割5分位なのに対し、エコノミストの予測の的中率は3割5分位です。(個人の感想です)
もし、大谷 選手の打率がどんどん上がり始めたら、野球のルールが変わって、打率が8割5分になることは
ないでしょうが、エコノミストの予測の的中率が上がり始めたら、どんどん上がり続けるのか
それとも皆の行動が変わって、それほど的中率は上がらないのかも注目です。
経済学を勉強した人にもそうでない人にも経済は重要です。「経済・経済・経済」と言うほど重要です。
そのわりに迫力がなく、増税しても減税しても不評ですが、私は、所得税定額減税というのは意外と良いアイディア
だと思います。1年限りの評判とりではなく、これを機会に、将来の人口動態や家族構成、労働人口などを
総合的にシミュレーションして、時代にマッチした新しい税制を考えるべきです。例えば次のようなやり方です。
夏休みが終わったら通常国会を今より早く開会して、翌年の確定申告の時の定額減税額を決めます。
年末調整に反映するためには10月頃には決める必要があります。
その際に、物価指数、毎月勤労統計、家計消費状況調査やGDP、景気ウォッチャー調査、短観の状況などをもとに、
来年の経済状況についての、AI予測、財務省予測、内閣府予測、各政党予測、日銀予測、民間エコノミスト予測
の数字を提出し、翌年の確定申告の時の定額減税額の望ましい金額を提案します。
定額減税の実施方法は、給付金付き税額控除が良いと思います。確実に低額所得者に手厚い減税になります。
「主たる生計維持者」が所得税の申告をし、配偶者控除・扶養者控除の仕組みを続けるのか、個人にベーシック・インカム
を保証するのかの税制の根本にもどって議論する必要があります。
給付は総務省がマイナンバーに基づいておこない、所得税の引き落としは、引っ越しして税務署が変わると、
マイナンバーを記入した申告書とともに、新たな口座引き落としの書類を提出するような省庁の縦割りの状況は
すべて見直して、事務処理費用を削減する必要があります。
そして、これがもっとも重要ですが、翌年の国会では、最初に、前年度の予測の数字の答え合わせをおこない、
減税が不足だったか、やりすぎだったかを議論します。一般会計の予算案が提出されると、大騒ぎで特集記事が
組まれ、補正予算をいくら使おうと、余っても何も報道しないという姿勢を改める必要があります。
法人税や所得税の徴収税額は、景気の動向でかなり増減しますが、前年度に決めた定額減税の額で、補正予算の
必要なく行政事務を執行できれば合格です。コロナ感染症のような突発的な事が起きると補正予算は必要ですが、
当初予算で、業務の執行をまかなうというのは家計でも企業経営でもやっていることで、国の会計だけが
特別ということはありません。都道府県レベルでも同じことをやるべきです。通貨を発行出来ない分
企業会計に近いところがあり、自分の住む都道府県の財政状況を皆が知ることになります。
民間の主要な産業も、国の経済も大きな転換点を迎えています。従来の事業遂行モデルにこだわることなく、
新しい需用がどこにあるかをみきわめ、事業形態を転換する必要があります。
「百年後に振り返って、評価される」ような国会にすることも重要ですが、100年後に大河ドラマに
登場するまでの99年間は振り返らないというのでは本末転倒です。毎年、毎月、毎週のレベルで、
進捗管理する必要があります。