各種のコラム --  3ー120 マイナンバーカードの、iPhone搭載

                                      2023年10月20日  

    3ー120 マイナンバーカードの、iPhone搭載 
    
  マイナンバーカードには「電子証明書」と呼ばれる身分証データが内蔵されています。 今年から、この電子証明書を、
  Androidスマホに搭載できるようになりましたが、まだiPhoneには搭載できません。
  電子証明書を、スマホに搭載するというのは、SE(Secure Element)と呼ばれる通常のアプリからは
  アクセスできない特別なエリアにデーターを書き込むことですが、利用する立場でみると、
  マイナンバーカードのICチップをスマホで読み取って、マイナポータルにアクセスしているのが、
  電子証明書のデーターがスマホに書き込まれているので、スマホだけでマイナポータルへのアクセスなどが、
  可能になります。
  マイナンバーカードを持ち歩かなくても、スマホだけで、マイナンバーカードの機能を使用することができるようになります。
  スマホは、毎日持ち歩いている人が多いので、わざわざマイナンバーカードを持ち歩く必要がなくなります。
  
  数年前には、マイナンバーカードは、ケースにいれて、家の金庫にいれておくものという位置づけでしたが、
  最近は毎日持ち歩くのが良いといわれています。しかし、ほとんど使うことのないカードを毎日持ち歩くのは面倒です。
  マイナンバーカードが、iPhoneにも搭載できるようになって、スマホがマイナンバーカードという状態になれば、
  マイナンバーカードの利用が広まります。
  現在は、電子証明書が、Androidスマホに搭載されていても、できることは、マイナポータルへのアクセスくらいですが、
  スマホのアプリで、年齢の証明や、健康保険証、運転免許証など、必要な情報が画面に表示できるようになれば、
  利用頻度は高まります。身分証明書として、金融機関の窓口で運転免許証のコピーをとっているところがありますが、
  運転免許証にQRコードなどを付け加えて、システムで読み取るようにすれば、業務が合理化されます。
  
  来年には、なにがなんでもマイナ保険証に変更しようとしていますが、不便になるだけです。現在の健康保険証の廃止は、
  マイナンバーカードの「電子証明書」のすべてのスマホへの搭載を待って、徐々に進めるべきです。
  マイナンバーカードは、学校での出席確認の際などに友達に預ける人がいますが、スマホを他人に預ける人はあまりいません。
  他人に預けても、生体認証が解除できないので、PIN(番号)を教える必要がありますが、あまり教える
  人はいません。実質的にセキュリティーが向上します。    
  
  15年前位に、iPhoneが登場して、従来の携帯電話を一気に置き換えました。
  そこまでの衝撃ではありませんが、Google Tensor G3プロセッサーのように、
  スマホにAI機能搭載の動きが加速しています。
  スマホがインターネット経由でクラウドにアクセスして、AI機能を使用するケースは以前からあったのですが、
  スマホだけで、AIの学習を行うなど、新しい傾向がみられます。写真の消しゴム機能が有名です。
  集合写真などで、複数枚写して写りの悪い写真をその人だけ、写りの良いものと取り替える機能です。私の場合、
  写りの良い写真が無くて、集合写真から存在が消えるのではないかという心配があります。
  AI機能の学習のプログラムは、Pythonでプログラミングするのが一般的です。
  Android用のプログラムはKotlinでプログラミングすることが多いのですが、AI機能の搭載が
  きっかけとなって、スマホ用の一般のプログラムでも広くPythonが使われるようになると、
  かなりスマホのソフトウェアー開発の世界がかわります。Androidと、iPhoneで共通の
  プログラムが使用できるようになるかもしれないし、クロスコンパイルが必要なくなれば、開発の
  速度が上がります。
  生成AIは大規模言語モデルが話題になっていますが、検索がGoogleになったように、
  クラウド型の生成AIのサイトは世界も、ひとつか、ふたつに収斂するかもしれません。検索サイトも登場した頃は、
  他のサイトもあったし、得意分野に特化したサイトなども話題になったのですが、結局、どの分野の専門家も
  Google検索を使うようになりました。現在も、日本語に特化した高性能の生成AIが開発されていますが、
  ビジネス的に成り立つサイトは、それほど多くは残らないようです。
  NVIDIAのGPUに対抗する、AI用のプロセッサーや、Tensor G3プロセッサーのような小型の
  AI機能を持つプロセッサーが競争の中心になりそうです。FPGAも、グルーロジックのような、プログラム可能な
  回路に回帰する動きと、AI用途を強化する動きの双方が見られます。スマホ用のSoCを、PCにも使用しようとする
  動きもあります。
  
  将棋の藤井聡太八冠が、将棋界の頂点であるタイトルをすべて手にする前人未到の「八冠独占」を達成したことが話題になっています。
  棋士とAIが戦う「電王戦」も行われています。棋士とAIがペアで戦う形式は公式には行われていません。
  王座戦の、最後の勝負を見ていて、AIは時間がなくなっても、失敗の手は打たないだろうと思いました。
  新しい勝負の手を考える能力は、人間のほうがすぐれていても、冷静に失敗しない能力は、AIのほうが
  すぐれているのではないかと思います。自動運転は、AIには意外と難しくても、鉄道のATSのように、
  とにかく停車させる能力はシステムのほうがすぐれています。実際の事務の業務では、
  この、人間とAIの得意なところを活かした、人間とAIがペアで戦う形式での業務の効率と品質の向上が重要です。
  
  行政のデジタル化を進めることは重要です。日本はアナログ式の行政事務の品質は高いですが、それでも
  デジタル化による業務の効率化が必須です。その進め方には問題があります。マイナンバー関連では、
  地方公共団体情報システム機構(J−LIS)が、地方公共団体の情報システムに関する事務を地方公共団体に代わって行っています。
  令和4年度の、業務の実質に関する評価が、内閣総理大臣と総務大臣の名前で提出されており、
  「特に重大な業務運営上の課題は検出されておらず、全体として順調な組織運営が行われていると評価する。」
  となっています。内閣総理大臣、内閣府としてデジタル大臣、さらに総務大臣が関連しますが、
  健康保険証の紐付けの問題は、自分たちとは無関係のようです。
  「住民基本台帳法、電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律及び行政手続」をデジタル化して、便利になることは
  あまりありません。従来のアナログ式の業務の進め方では、複数の市町村に関連する手続きは不便でした。
  例えば引っ越しの際の転出・転入の手続きです。これは確かに便利になりました。しかし、電子署名に係る地方公共団体の認証業務
  を他の業務、例えば健康保険証の本人確認などに広く利用することで、
  生活の多くの面で利便性が向上します。健康管理組合で、健康保険証のデーターを従来の方法で管理し、
  J−LISに問い合わせて、マイナンバーを追加する方法では、業務の効率があがりません。
  健康保険証の紐付けの問題が発生して、報道機関も、健康管理組合や地方自治体での人為的ミスの状況は
  取材しますが、J−LISに取材して、ガバメントクラウドの体制に問題がないかについての報道は聞きません。
  健康保険証のデーターも、住民基本台帳のデーターのように、ガバメントクラウドで管理し、データーの整合性・完全性を
  一気に確立するシステムにしなければデジタル化しても業務の品質はあがりません。
  省庁の縦割りの弊害を維持したまま、デジタル化しても業務の迅速性も完全性も達成できません。
  総務省や厚生労働省は従来どおり行政の方針を決めますが、システムにかかわる部分は、内閣府のデジタル庁が、
  一貫して、調達から運用まで行うというのが、ガバメントクラウドだと思ったのですが、そうではなく、
  J−LISのように、省庁毎の関連団体がシステムの運用を行うようです。北海道のボールパークのそばにできる
  駅の建設費が高いことが話題になっています。鉄道が走っている状態での工事は特殊なため、基本的にJR北海道
  の関連会社に発注します。国鉄が大赤字だった当時も、退職者が天下りする関連会社は基本的に黒字でした。
  20年位まえ、母屋でおかゆをすすっているのに、はなれですき焼きを食べていると言った、財務大臣がいます。
  母屋の赤字が増えるほど、自己防衛の意識が強くなり、はなれのすき焼きやステーキが豪華になるようです。
   
  行政のデジタル化を進め方に関連して、サーバーサイドのガバメントクラウドにも問題がありますが、
  それよりはるかに大きな問題が、マイナンバーカードへのこだわりです。
  マイナンバーカードの受けとりは市町村の窓口でおこない、コンビニなどで、5,000円のポイントが申請できたのは、
  妥当だったとしても、マイナ保険証や公金受取口座の登録にも多くの人が、市町村の窓口に殺到するというのは、
  本末転倒で、行政のデジタル化で市町村の窓口が大混乱になっています。しかも、ポイント給付で2兆円近い
  予算を使いました。マイナンバーカードにこだわり、JPKIの電子証明書にこだわり、マイナ保険証にこだわることが、
  中央省庁の「官僚の無謬性」を表しています。記名式Suica程度の本人証明で十分な領域にも
  マイナンバーカードを使うことにすれば、マイナンバーカードの一部分をスマホに搭載するのは容易になります。
  現在の健康保険証を維持したまま、マイナ保険証も併用して、お薬手帳として使ってみると便利だという人が
  広まるのを待つやり方もあります。マイナ保険証の認証に誤りがあるのは困りますが、もっと困るのは、
  間違いがあると言っても、どこに問い合わせるのかわからなかったり、なかなか対応してくれなかったことです。
  「官僚の無謬性」にこだわらず、初期不良に積極的に対応することが、利用者の不安を取り除きます。
  スマホは、ほとんど海外製になっていますが、次世代の6Gの時代には、NTTのIOWNという画期的な技術が
  登場して、光技術で通信のみならず、プロセッサーでも画期的な少電力の世界が実現するそうです。
  無線のかわりに、光通信になって、鏡で太陽を反射させるような原理で通信するのかと思っていたのですが、
  そうではありません。6Gのバックボーンの部分の光通信の部分を高速化します。マイナンバーカードと同じで
  根本思想はすばらしいけれど、実用化の段階が本当にスムーズに実施できるのかという不安が有ります。
  5Gがなかなか広まらないのも不安の大きな原因です。基本的に4Gで十分なのですが、テザリングでPCを利用する時は、
  4Gの速度では不十分です。6Gになっても、無線通信のための大量の基地局が必要という状況は変わらず、
  なかなか整備が進まないおそれがあります。Starlinkは、現在は受信のために専用のアンテナが必要ですが、
  スマホのアンテナで受信できるようになると、基地局の整備より急速に進み、催し物が有る時の一時的な
  トラフィックの増加にも柔軟に対応できるかもしれません。さらに将来、Starlinkの衛星を測位システムに
  利用できるようになると、精度10センチのような測位システムが実現します。NTTは技術開発だけでなく、
  つねに利用者にとっての価値を考慮して設備投資を進めていく必要があります。同じことは、天頂衛星のみちびきにも
  あてはまり、衛星の軌道についての技術的なレベルは高いのでしょうが、汎用的な受信アンテナや受信機を
  開発しなかったので、あまり広まっていません。将来、Starlink衛星の測位システムなどに
  置き換わるかもしれません。
  オックスフォード大学発のベンチャー企業がGPSも地図も使わない自動運転の車を研究しています。
  人間が運転した状況を学習して、同じルートを周囲の状況に注意しながら安全に走行するような発想です。
  屋内駐車場でGPSの電波が届かなくても問題ありません。
  それからどのような自動運転の形態によるとしても、バーチャルなマップ上で、走行状態をシミュレーションして、
  過去に起きた事故の状況をどのように防ぐか、研究・解析する必要があります。オックスフォード大学発のベンチャー企業
  とGoogleが共同で研究を進めています。日本の企業も特許の保護などの法的な対応を充実させた上で、
  海外の組織と共同開発することで、製品化につながる有効な研究・開発を進める必要があります。
  それから、研究・開発はフリーゲージ・トレインや京葉線でテストした、連接台車車両や、ココアのように、
  失敗する時は失敗します。無謬性にこだわらず、フリーゲージ・トレインなら、新幹線と在来線だから失敗したので、
  在来線同士で試すように、発想を切り替える必要があります。
  都市銀行が支店の統廃合で苦労しているのに対し、ネット銀行は、対面の販売なしで
  すべての業務を行うところから出発し、コンビニATMを利用して実店舗に近い営業も行っています。
  携帯電話会社も、既存の携帯ショップでの販売形式にこだわるのでなく、まず利用者の立場で、ネットで行ったほうが
  便利なことと、対面で行ったほうが便利なことの分類から始めなければなりません。複雑な価格体系と端末の
  極度の割引は、利用者にも携帯ショップにも問い合わせのサポートセンターにも混乱を招くだけです。
  行政のデジタル化も、ガバメントクラウドのシステム構成から考えるのではなく、在宅でオンラインでできた
  ほうが便利なサービス、市町村の規模ごとに、窓口でおこなったほうが便利なことと、サービスの提供形式を
  分類し、利用者の視点で、わかりやすいサービスメニューを整えることから始めなければなりません。
  インターネットが30年位前、一般に使われるようになった時、信頼性も機密性も、基幹システムのネットワークに
  劣るといわれました。しかし、仕様書を公開したこともあって、民間利用が急速に広まり、技術が向上しました。
  そして、トラブルは日々起きているのですが、世界的な全面ダウンは一度もありません。
  公共システムはどのようにあるべきかについて多くの示唆があります。
  
  日本では、独占禁止法に関連して、iPhoneのアプリサイトでのサイドローディングが話題になっています。 
  もし、スティーブ ジョブズが生きていたら、日本に来てもらって、独占禁止法の話題や、
  マイナンバーカードの、iPhone搭載とともに、マイナポータルのデザインを見てもらって感想を聞いてみると
  おもしろいです。マイナンバー制度にかかわっている人が、デジタル技術とは別の観点で、
  従来の省庁の縦割りや、「官僚の無謬性」にこだわって結果的に失敗しているように見えます。
  スティーブ ジョブズだったら、日本人なら言わないようなことを、利用者の視点で語ってくれそうです。
  
  マイナンバーカードは、ケースにいれて、登記簿謄本と一緒に家の金庫にいれておいて、スマホをマイナンバーカード
  として使うという使い方が、現実的かもしれません。どんなサイトでもめったに使わないサイトは、不便に感じます。
  少なくとも週に1回は、マイナンバーに関連する証明書を使うような仕組みを考える必要があります。