各種のコラム --  3ー118 インボイス制度と消費税免税事業者

                                      2023年9月20日  

    3ー118 インボイス制度と消費税免税事業者 
    
  インボイス制度とは、2023年10月1日から導入される新しい仕入税額控除の方式です。
  適格請求書がないと仕入税額控除ができず、適格請求書を発行するためには、消費税課税事業者になって、
  消費税を納税、納付する必要があります。
  適格請求書を発行するのは事務手続きが面倒になります。消費税を納税、納付するためには、お金を払わなければ
  いけません。同時に施行する必要はなかったというのが今回のコラムで、消費税課税事業者であっても、
  消費税の納税、納付をおこなっていない、消費税の還付を受けている事業者があります。
  0%課税と呼ばれる輸出免税の適用を受けている事業者で、多くの自動車製造業者は、輸出する車を日本で
  組み立てるための部品を仕入れた時に払った仮払消費税額が日本国内での売上から発生する仮受消費税額を
  上回るので、消費税の確定申告により消費税の還付を受けています。
  適格請求書を発行するために消費税課税事業者になっても、前々年(個人)又は前々事業年度(法人)の
  課税売上高が1,000万円以下の事業者は、従来どおり消費税の納税、納付を免除すべきだと思います。
  法人税の税収が増え、インフレの進行で、名目の税収が増えている中で、従来の免税事業者に、
  あえて消費税の納税を強要することに合理性がありません。インボイス制度、とくにデジタル・インボイス
  による、経理業務の効率化と透明性の確保と、実質的増税を切り分けて実施すべきです。
  2019年10月の消費税率引き上げでは、キャッシュレス決済時の、中小・小規模事業者との取引で利用した場合、
  最大で税込価格の5%分の現金に相当するポイントが付与される仕組みが、経済産業省により実施されました。
  消費税率の引き上げ自体はもちろん反対意見がほとんどでしたが、ポイント付与の施策で、
  小売業全体に、キャシュレス決済が広く浸透しました。このようなデジタル化を推進するための施策と比較して、
  今回のインボイス制度と実質的消費増税の組み合わせは最悪です。
  
  適格請求書の発行は事務手続きが面倒になりますが、事業者にとってメリットもあります。
  個人事業主の場合、所得税の確定申告の際、事業所得の計算に、BS、PLを添付する必要があります。
  前期末(当期首)のBSと当期中のデジタル・インボイスがあれば、当期末の確定申告に必要なBS、PLを
  自動作成できるアプリを提供すれば、所得税の確定申告の事務手続きが簡素化されます。
  日常的に仕訳帳を記帳し、総勘定元帳への転記を行っている人は、BS、PLを作るのはそれほど手間では
  ありませんが、紙の領収書をダンボール箱に入れているだけの人にとって、BS、PLを作るのは
  いつ終わるかわからない作業で頭痛の種です。
  適格請求書をスマホで写真を撮っても、自動仕訳できますが、大量に取引がある人は、デジタル・インボイスが
  効果を発揮します。
  デジタル技術が効果を発揮するのはこのような分野です。大量の取引の事務処理はアナログ作業では
  大変ですが、デジタル処理なら件数の多さは問題になりません。税の確定申告の正確さは
  確定した決算の正確性に依存します。そして、会社計算書類や財務諸表の正確性は、すべての重要な点に
  おいて適正に表示していると認められるレベルであって、絶対的な正確性ではありません。
  事務処理件数が多大で、求められる正確性が絶対的ではなく相対的なレベルの処理がデジタル技術が得意な分野です。
  デジタル技術には、社会的に会計・経理の透明性を向上する効果があります。中小法人のオーナー社長が
  毎週日曜日に自宅近くのファミレスで接待をしていたら、家族と食事をしているのではないかという点で、経理に疑惑があります。
  交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、
  仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為
  のために支出するものをいいます。金額はわずかですが、皆やっているのに、自分だけが正直な経理を
  行うことに抵抗があるという人がいます。皆が正直な経理を行うことにデジタル技術が寄与します。
  過去には広く行われていた総会屋の排除に、法人税法の支出相手を明らかにしない支出に対して、否認するとともに
  8割の加算税を課す規定が、寄与しました。公正な社会を実現するための税法の役割をもう一度見直す必要があります。
  
  
  本人確認は、デジタル技術が苦手で、高度な処理が要求される分野です。近所の人の本人確認なら、
  何もツールを必要とせずできますが、日本国内のすべての居住者の本人確認は、警察の協力を得ても、
  100%完了するのは困難です。アナログ作業であれば、窓口の人が臨機応変に対応しますが、
  デジタル処理では、確認できていない事実が明らかになるだけで、臨機応変に対応することはできません。
  
  マイナ保険証で窓口で問題が起きるのは、デジタル技術にくわしい人なら予測できた事態です。
  所得税の確定申告なら、仮に申告納税の納付税額が本来の税額より少し多かったとしても、書類の作成や窓口に提出するための
  待ち時間を含めた手間との比較衡量で納得する人も居ます、納得できなくて更正の請求をする人もいます。
  納付税額が増加する修正申告を自主的に行う正直な人もたまに居ます。
  マイナ保険証で窓口で本人確認できなかったら、誰も納得しません。そこから先の手続きが進みません。
  事前にトラブルの発生が予測できたとして、どのようにすればよかったかというと、
  Android携帯なら、マイナンバーカードを読み込むことができます。マイナポータルにアクセスできるだけですが、
  これを一歩進めて、健康保険証の券面が表示できるようにします。ICチップを読み込んで、
  マイナポータルに接続して行った健康保険の被保険者の資格に納得いかない場合、携帯の画面に
  健康保険証の券面を表示して受付の人に見せます。受付の人も従来の健康保険証の情報に加えて、
  顔写真も確認できるので、問題なく事務処理できます。
  業務をデジタル化する時、計量のように、関係者が納得した精度の範囲で一定の誤差が許容されるものと、
  本人確認のように絶対にミスが許容されないものに区分し、絶対にミスが許容されないものは、
  ICチップの読み込みだけに頼るのではなく、携帯電話に健康保険証の券面を表示して人間が確認するなど、
  関係者が目視で確認できるバックアップの手続きを設定して、機能するかのテストを行ったうえで、
  サービス・インすべきでした。問題なくサービスがスタートして、新しいものが好きな人が使い始めて、
  お薬手帳より、携帯のほうが便利が良いというような評判が広まるのを待つべきでした。
  マイナンバーカードによる本人確認は、マイナンバーカードを本人が持っているということが大前提で、
  それを担保するのは、4桁のパスワードと顔写真です。銀行のキャシュカードでは、
  家族のカードをつかってお金を引き出している人がいますが、特に問題にはなっていません。
  マイナ保険証も病院の受付での利用状況をモニターして徐々に広めていくべきでした。
  
  以前に県知事を経験した人の言葉ですが、自治体主導の地方創生というと、ほとんどの人は賛成します。
  しかし、具体的に誰が決めるのかという話になって、それは市町村議会で議論して決めますという話になると、
  それはダメだ、従来どおり中央省庁の役人が決めるほうが良いということになるそうです。
  最近の国会の議論を見ていても同じことを感じます。領収書がなくても、政策活動費の支出が可能で、
  以前に国会議員を経験した人の話ですが、国会の院内の診療所に行くと、無料で診察をうけ薬を受け取る
  ことができるという生活をしている人が、インボイス制度やマイナ保険証の議論をしても、
  正しい結論が得られません。
  
  中央省庁で予算案を作っている人は、デジタル技術について納品業者にしっかり確認したかもしれません。
  しかし、それでは経験に基づいて、多くの場合正しい判断はできません。例えばIT企業でオフィス・ソフト
  をコーディングしている人が、オフィス・ソフトのことを詳しく知っているかというとそうではありません。
  コーディングしている人は、ほとんどの時間、統合開発環境のソフトウェアーを使っていて、オフィス・ソフト
  はほとんど使っていないので、機能仕様書に従ってコーディングしているという人が多くいます。
  中央省庁で予算案を作っている人が本当に、聞くべき人は、地方自治体の窓口で仕事をしている人や、
  病院の窓口で受付を行っている人です。マイナンバーカードは2016年から始まりましたが、浸透しませんでした。
  中央省庁の人が発行枚数にこだわって、公金受取口座を登録すれば、すべての問題が解決すると考えたのが、
  最初の失策でした。家族の口座を登録してもよいと考えた人がいて、大量の誤登録が発生しました。
  2番めの失策はマイナ保険証でした。現行の健康保険証を廃止すればよいと考えたことで、病院の
  受付窓口が大混乱になりました。消費税免税事業者への消費税の課税は、2.5番めの失策です。
  真打ちの3番めの大失策が出てこないことを祈るのみです。
    
  ビッグモーター社の車の任意被験の不正請求が大きなニュースなっています。
  修理業者が勝手に修理内容を決めるというのは、間違えた手続きです。損保会社が判断すべきです。
  しかし、なにが起きたかを起点にもどって考えてみると、それほど間違えてなかったかもしれません。
  いつも板金修理をおこなっている人なら、車を少し見ただけで、事故の際にどのような応力がかかって、
  何が起きたから、どの部分にどのような修理が必要だということを一瞬で見抜きます。
  損保会社で毎日書類をみている人より、一瞬で適格な判断ができます。事故の被害者にとっても
  一日も早く修理をしてほしいのであって、損保会社の人の確認は時間の無駄です。
  また、デジタル技術で双方の車のドライブレコーダーの映像や、加速度センサーなどのデーターと、車の被害状況の画像から、
  損保会社で毎日書類をみている人より正確に修理内容と料金を予測することは技術的には可能なはずです。
  デジタル技術による判断で双方納得すれば、損保会社の人はリモート診断で済まして問題ないはずです。
  これを正式な手続きとして認証すれば、保険料を下げることも可能になったかもしれません。
  しかし、正式な手続きを無視して個人の勝手な判断で処理することは決して許されることではありません。
  その弱みをつかれて、経営陣からの、不要な修理による売上の向上という不当な要求をこばむことができませんでした。
  デジタル技術による、適切な事務処理と組み合わせていれば、もともとは有効に活かせた考え方だったかもしれません。
  
  ビッグモーター社の不正とはまったく次元が異なりますが、病院に行って、医師の人が電子カルテに入力しているのを
  見ると、あまり業務の効率が良くないと感じます。
  素人には意味不明の日本語と意味不明の外国語と意味不明のポンチ絵を、だれが見ても理解できる文書にするのは
  生成AIなら可能なのではないかと思います。「医療クラーク」の人の力とデジタル技術の活用で、
  医療業務全体の生産性の向上を図る必要があります。
  
  深センのスタートアップ企業が作っている、M5Stackという5センチ四方くらいのデバイスがあります。
  32ビットのマイコンと各種のセンサーが積層されたデバイスです。
  アマゾンでも教育キットとともに販売されていましたが、現在はアマゾンから直接は販売されていません。
  スタートアップの企業から、UIFlowという開発環境がWebサイトで提供されています。
  スクラッチのようなブロック図でコーディングが可能で、それをPythonのコードに変換することが可能です。
  アマゾンの教育キットで使われていた、Visual Studio Codeを使う開発環境より、
  素人にはシンプルでわかりやすいです。
  このデバイスを使ってロボットの制御などのプログラミングを小学校の後半の3年間勉強すると、
  現在の日本人の成人の平均のプログラミング能力を上回ると思います。
  プログラミング教育を専門にしている人のレベルは高いですが、すべての教科を教えている小学校の先生よりは、
  小学校の卒業生のほうがプログラミング能力が高くなる可能性もあります。
  パワーポイントを使って、調べた結果をまとめてプレゼンテーションする能力も重要ですが、
  プログラミング能力はそれとは異なる能力で、これからは、プログラミングを専門にする人だけでなく、
  誰もが必要になる能力です。米中貿易戦争もあるので、UIFlowを義務教育に取り入れるのが良いか
  どうかはわかりません。むしろ、日本でこのようなだれもが使えるプログラミングツールを開発する動きを
  加速すべきです。ITの専門の学科の人のレベルは世界的にみても高いのですが、
  誰でも、それなりにプログラミング教育を受けられる環境という面では日本は大きく遅れをとっています。
  
  コロナ感染症の発生状況を、HER−SYSのシステムで全数把握していましが、やめてしまいました。
  この蓄積したデーターが、現在どうなっているかに関心をもっています。
  すべてのデーターを廃棄するのが、日本の中央省庁の仕事のやり方ですが、もし廃棄したとしたら、
  ものすごい無駄です。保管しているとしても懸念があります。
  システムを日々アップデートする以外、最新のセキュリティーレベルを維持する方法はありません。
  デジタル技術がわかっていない人が、システムの運用はやめるが、セキュリティーレベルを維持して、
  データーを保管するというような作文をつくっても、機能しません。
  データーを保管していても、日本人は有効に活用できなくなり、サーバーテロのグループだけが、
  悪用する状況になります。
  COCOAのシステムの運用を止めたのは、BLEを利用した技術が感染者の予測にそれほど有効
  でなかったというなら、それでかまいません。はじめてのことにトライしたので、結果がおもわしくなかった
  としても、それを検証して終了してかまいません。
  しかし、HER−SYSのシステムによる、感染症の発生状況の把握や、VRSのシステムによる、
  ワクチン接種の予約は継続して使用すべきです。データーの入力に問題があったのなら、
  改善すべきです。予算が単年度主義だからといって、毎年新しいシステムをつくっていたら、
  いくらお金があっても足りません。
  HER−SYSのシステムの運用をとめたのが、2.6番めの失策かもしれません。失策が続いて、
  真打ちの3番めの大失策が出てくるようなことになると、日本は先進国ではなくなり、
  多くの開発途上国より技術レベルの劣る国になります。私の意見は聞かなくてもかまいませんが、
  20年くらい前に創業し、メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業などで、
  現在では日本を代表する上場企業の経営者の人が、現在のマイナンバーカードの政策の進め方に
  反対しているとしたら、謙虚に耳をかたむけるべきです。消費税の税率をあげるべきだという
  経営者の意見だけでなく、現在の行政の進め方に反対する人の意見も聞くべきです。
  聞くだけで何もしないとしても、聞くべきです。