各種のコラム --  3ー117 マイナンバーは、何の役に立つ?

                                      2023年9月10日  

    3ー117 マイナンバーは、何の役に立つ? 
    
  マイナンバーは、何の役に立つ? 何の役にも立たない!が今回のコラムではありません。
  「マイナンバーは、所得の把握に役立つ」が今回のコラムです。所得の把握に役立つというと、資産課税につながる
  など、皆が最も反対する事という意見が多いのですが、私の意見は異なります。
  
  ほとんどの給与所得者(サラリーマン)は、源泉徴収制度でほぼ完全に所得を把握されているので、
  マイナンバーによって、所得を把握されても、ほとんど何も変わりません。
  現状で、所得があまり把握されていないのは、企業のオーナー社長とか社会福祉法人の設立者、宗教法人などで、
  現状では、法人所得と個人所得の区分が曖昧で、あまり所得が把握されていません。マイナンバーと
  10月に導入されるインボイス制度と組み合わせれば、税務調査の際のお金の流れの把握が容易になります。
  多くの人にとって、マイナンバーによる、所得の把握に反対する理由は少ないと思います。
  
  以前、総務省のぬいぐるみが出てくるマイナンバーカードのCMがありました。
  中には、こわもてだけれど、結構風采の良いおじさんが入っています。
  「マイナンバーは、所得の把握に役立つ」といえば良いのですが、ぬいぐるみをかぶって、
  マイナポイントなどの宣伝をしています。ところがそのぬいぐるみにマイナ健康保険証の紐付けの問題などがあって、
  こけたり、ころんだりしています。
  インボイス制度も、免税事業者からの仕入れは適格請求書がないので、仕入れ税額控除できないという、
  最悪の組み合わせで、開始しようとしているので、評判が悪いのですが、
  デジタル・インボイス自体は、導入すべき便利なものだと思っています。取引の透明性の確保のために、
  デジタル・インボイスの使用を開始し、普及してから、消費税の仕入れ税額控除の規定を改めるべきでした。
  
  まず、デジタル・インボイスがどのような物かの説明から始めます。くわしい説明は、EUの
  Peppol BIS Standard Invoice JP PINTのサイトにあり、サンプルの
  xmlファイルのダウンロードもできます。ファイルの先頭に通常のxml Name Spaceの他に、
  7個のName Spaceが宣言され、例えば、cbcはxsdのCommonBasicComponents−2で
  取引相手や、取引の方法、金額などを示し、cacはxsdのCommonAggregateComponents−2で
  それらの要素を集約した単位を示すタグです。また価格などのタグは、Name Spaceタグと共に
  使用すると、Universally Uniqueであることが保証されます。
  
  有価証券報告書に用いるxbrlと同様 Semantic Webの技術の一種です。商品名の横に数字が書いてあると、
  価格だと思うのは、人間の判断です。生成AIなら、人間のような処理もできるかもしれませんが、
  xbrlが使われ始めた20年位前に、システムに確実に、商品名と価格だということを理解させる手段の一つでした。
  
  デジタル・インボイスを受け取ったらどうすればよいかというと、xmlファイルを通常の請求書の形にして
  印刷できるようにする無料のソフトや、Webサイトがいくらもあります。
  xmlファイルを作って送ろうとするとどうしたらよいかというと、暇な部所のなかでも特段暇な人なら、
  EUのサイトにある仕様書を読んで、テキストエディターで作成することも可能で、
  一枚の請求書が一日かかっても出来ないので、暇つぶしになりますが、通常は、会計ソフトで仕訳を切ると、
  その内容に従って、デジタル・インボイスを作成する機能があります。  
  紙のレシートをカメラで撮影して、仕訳を切るのも良い方法ですが、大量の仕訳を自動化したいなら、
  デジタル・インボイスで受け取るほうが正確性も効率性も上回ります。
  相互取引の記録であるデジタル・インボイスと、取引のひとつの拠点の財務諸表をデジタルデーターで
  保存することで、後々の財務分析の精度があがります。
  
  デジタル・インボイスはまず業務の効率化のツールとして導入し、ある程度普及したところで、必要なら、
  消費税の仕入れ税額控除の規定を改めるべきでした。法人を設立したばかりだと資本金の額など
  制限はありますが、2年前の取引が存在しないので、免税事業者になることが可能です。
  この規定を利用して、人材派遣会社を設立と廃業を繰り返して、消費税の納税・納付を回避するのが、
  古典的な脱法行為です。適格請求書とマイナンバーは、この脱法行為の抑止に絶大な効果があります。
  マイナンバーによる、所得の把握は、資産課税につながるという時、第二次世界大戦後におこなわれた、
  財閥などへの、資産の9割を没収するような課税を想像する人がいます。
  しかし、資産を把握して課税するというのは、正確・公平な徴税につながります。
  現在の所得税の確定申告の、各種所得の計算からはじめる方法は、誰かから不満がでます。
  株式譲渡所得の分離課税は、税率が20%プラス復興特別所得税なので、株式譲渡所得が100億円
  もある人に対して、総所得金額の45%の税率と比べて低いことが問題になります。
  しかし、株式譲渡所得の分離課税をおこなわないと、譲渡損失の繰越控除をおこなうことができません。
  そこで、個人の買い物の領収書も紙のレシートではなく、デジタル・インボイスにして、
  自動仕訳をして、所得税の確定申告にあたっては、自家消費の部分も、貸借対照表、損益計算書を作成し、
  事業所得や、経営する法人の計算書類とあわせて、連結貸借対照表、連結包括利益計算書、
  (連結株主資本等変動計算書)直接法キャッシュフロー計算書を作成して、所得税額を計算すれば、
  正確で公平な納付税額の計算が可能になります。法人税と所得税は別物で、税務署の担当の部所も異なるという
  縦割りの発想でなく、IT技術を利用して、利害関係者すべてに公平な課税に近づけることができます。
  徴税権による国税庁・財務省の天下りに近い形での民間に対する権限の行使や、各省庁の給付金に関連する
  民間に対する権限の行使に、現在源泉徴収制度でほぼ完全に所得を把握されている給与所得者が
  どのように対抗できるかというと、マイナンバーとデジタル技術を利用して、すべての取引を明らかにすることです。
  失う物はありません。すでに源泉徴収票で税務署に明らかになっている取引があらためて明らかになるだけです。
  そして、同じ仕組みをすべての政治家や、企業のオーナー社長、社会福祉法人の設立者、宗教法人などに要求
  することで、行政の無駄な事務経費をあぶりだすことができます。
  
  マイナ保険証も、普及して病院の受付で問題が起きなくなってから、健康保険証を廃止すべきでした。
  利用者をおどすことで、制度を普及させるという考え方で進めることで、ぬいぐるみが、こけたり、ころんだりして
  マイナンバーの評判を下げています。
  9月でマイナポイントの申請が終了します。また窓口が混雑するかもしれません。
  通常の商店のポイントなら、5年とか10年の期間を経て無効になります。その間、商店の側は、
  負債に計上しなければならないので面倒ですが、利用者を優先しています。
  予算の執行という自分の都合を優先することで、窓口が混雑して自分たちの業務も逼迫してます。
  
  行政のデジタル化全体の政策の進め方にかかわる重大な問題です。
  窓口でマイナ保険証を一回読ませてみて便利ですとデモンストレーションだけでなく、行政のデジタル化の
  良い面、不便な面を体験して、行政のデジタル化を進めるべきです。
  使いみちが問題になった、政治活動費について、各党への政党交付金の交付については、根拠、金額ともに
  透明性が確保されています。それ以外の政党への寄付金、そして一番不明なのが、各議員の政治活動費の支出の
  状況です。これを、企業の財務報告並みにすべきだという議論があります。
  一気に進めて、デジタル・インボイスを受け取った支出のみ計上が認められることにすれば、
  国会議員自身や議員事務所の人が、デジタル・インボイスの仕組みやメリット・デメリットを
  日本じゅうで一番くわしくなるレベルで理解することができます。
  その上で、行政のデジタル化を進めるべきです。政活費を生活費にあてている人がいることが問題になっていますが、
  企業のオーナー社長とか社会福祉法人の設立者、宗教法人などの人が脱法的節税としてやっていることと、
  考え方は同じです。ほとんどのサラリーマンはやろうとしてもできないことです。
  これらすべての活動の透明性を高めるため行政のデジタル化を進めようとしているのか、本当は自分たちや
  自分たちの支持者に都合が悪いから、建前として進めているかが問われるところです。そして、
  デジタル技術は、0、1の世界なのでごまかしがききません。いずれ明らかになります。
  
  公金受取口座の登録とか、給付金を受け取るというと、聞こえはよいのですが、事務費用をかけて徴税を行った、
  財源を使って、事務費用をかけて給付を行うのは、事務費用が2重になってむだ使いです。
  マイナンバーによる、所得の把握を正確に行い、徴税と、ベーシック・インカムの給付を同時に行うほうが、
  事務費用が削減でき、効率的な行政事務につながります。  
  業務のデジタル化にあわせて、業務自体を変革するというのはなかなか日本ではできません。
  ERPを導入する時も、ベストプラクティスをとりいれるというのがなかなかできません。
  従来の業務手順にあわせるためのカストマイズの山になります。
   
  民間企業の、例えば携帯電話業界で、最近の新しい料金プランは、官製値下げで安くなった物を再度値上げ
  するために、値上げではなく、新しい料金プランを設定したものが多くあります。
  固定電話料金などとのセットプランで一応安く見せていますが、料金体系が複雑になります。
  料金体系が複雑になると、問い合わせの件数も増え、サポートセンター側も、質問の内容を理解
  するのに時間がかかります。日本国内にだけサービスを提供している会社に多くみられるやり方です。   
  迷惑メールを分ける仕組みも、例えば、ドコモであれば、dメニュー、My docomo、メール設定の
  各ドメインや、PCメールを受信する・しないの設定が出発点になります。Googleのgmailであれば、
  AIでメール毎にスパムメールを選り分けて、別のフォルダーに入れるが出発点になります。
  このように、ユーザーは何もしなくても、気が付かないうちにIT関連のサービスを受けられることで、
  問い合わせの件数を減らすというのが、世界中にITサービスを提供する場合の基本です。
  マイナポイントの受取を地方自治体の窓口で行い、しかもログアウトを忘れるという人為ミスが起きたので、
  注意喚起するマニュアルを用意するというのは、日本国内にサービスを提供することしか、
  頭にない人の発想です。  
  
  日本では、ITが得意だというと、IT機器への入力が早いという人がいます。器用にIT機器を取り扱い
  データー入力もかなり正確なことが、業務のデジタル化の方針を立てる時邪魔をしているのではないかという
  面があります。EUのPeppol BIS Standardを決めるようなことが不得手です。
  アングロサクソンの人はみるからに得意そうですが、ラテン系の人も見かけによらず得意です。
  G7サミットを提唱したのはフランスの大統領です。日本の現場力に基づく改善活動が旅館の増築だとしたら、
  ラテン系のやり方はサグラダ・ファミリアです。最初に企画や設計をする人が居ます。一見何も進んでいないようでも、
  将来の建物の完成を意識した共通認識があります。日本は失われた30年で家電メーカーの実力が下がりました。
  1990年代に、デジカメを最初に作ったのが日本のメーカーですが、それだけでなく、
  Exifのファイルフォーマットと、カメラとして認識されない時はUSBストーレッジとして認識されることを
  業界標準の規格として定めたことで、デジカメは爆発的に広まりました。それらは、スマートフォンにも引き継がれて
  います。それに対して、ドラレコはファイルフォーマットはMP4ですが、ほとんど専用のアプリでないと、
  再生できません。各社共通のアプリを設定し、さらにクラウドサイトで、交通事故の際には、双方のドラレコ画像
  から、生成AIで事故の状況と過失割合を提案するところまで行えば、各所の業務効率があがります。
  日本の交通捜査のレベルは高いでしょうが、IT技術が社会の生活レベルの向上に役立つのは、警察がほとんど
  かかわらない物損事故をかなり合理的に瞬時に判定する使い方です。人の介入はどちらかに異存がある時に
  することで、電話での無用な伝言ゲームや、手書きで事故の発生状況のポンチ絵をかくような無駄な時間が排除できます。
  xbrlの規定を提案した人は、非常に高く評価されましたが、世界で初めて決算短信に実用化した日本は
  それほど高く評価されたわけではありません。
  
  行政のデジタル化も、電子商取引などの規定をASEAN諸国と議論を深めて地域共通の規定を設けるというような、
  世界を意識した新しい取り組みに変えていく必要があります。