列車ダイヤについて -- 3ー108 失敗できないプロジェクトは?失敗する?!
2023年6月1日
3ー108 失敗できないプロジェクトは?失敗する?!
「失敗できないプロジェクトは?失敗する?!」というのは、私の経験によるものではありません。私自身は、
「すべてのプロジェクトは?失敗する?!」となります。
日本製のアニメ映画などが海外で大人気なのに、クール・ジャパン戦略はあまり順調に進んでいません。
過去のDRAM製造プロジェクトなど、税金を投入して日本の産業を復活させようとしたプロジェクトが、
なぜ順調に進まなかったかについて考えてみます。
長期的な投資は基本的に難しいものです。
羽田空港アクセス線で話題になっている、大汐線は、東海道貨物支線のうち、汐留貨物駅と東京貨物ターミナル駅を結ぶ区間で、
1973年に建設されました。しかし、1986年に汐留駅が廃止となり、1998年以降は休止状態でした。
国鉄の投資がすべて失敗だったというわけではありません。
通勤五方面作戦(東京五方面作戦)と呼ばれる、通勤路線(国電)における輸送量増強プロジェクトは、
東海道新幹線の建設費が、3,800億円だった時代に、6,000億円の予算で行われ、これがなかったら、
通勤輸送はどうなっていたか想像できないほどのプロジェクトです。
あわせて行われた、貨客分離のプロジェクトは、1984年に操車場で貨車をつなぎ替える形の輸送が廃止されたため、
休止状態になったり、旅客線に転用されたり、騒音問題で建設が中止になったものもありました。
DRAM製造プロジェクトでは、サムソンなどに奪われたシェアを取り返そうとしたのですが、
過去の信頼性の高いメモリーの作り方に固執してコスト的に太刀打ちできませんでした。
過去の失敗を反省することは良いことですが、税金を投入するプロジェクトだから、失敗できないという
恐怖心をプロジェクトの推進力にしてはいけません。
過去に、「多様な意見」こそ科学的な意志決定を形成する基礎である、と言った人がいます。的を射た指摘です。
過去の栄光に囚われたり、過去の失敗を恐れて、小さな失敗も許さない完全をめざすと、不都合な事実が耳にはいらなくなり、
方針の決定を誤ります。
どのような目的でプロジェクトを行い、どのように世の中を良くしたいという、「多様な意見」を
プロジェクトの推進力にすべきです。結果が確約できそうな研究に予算を配分して、確実に成果をあげようとすると、
研究者が本当に行いたい研究が阻害され、結果的に大きな失敗になることがあります。
ラピダス株式会社は、すでに工場の建設もかなり進み順調に進んでいます。
本当に成功したというためには、生産が始まってから売上をあげ利益を得る必要があります。
ODAのプロジェクトで、施設が開所した時がピークで、その後、機器の更新などが進まず、あまり成果が
あがら無いものがあります。民間企業でも、IPOの時がピークという会社があります。
生産が始まってからが、本当の勝負です。ラピダスに対しては、IBMの最新の試作品の
技術を提供するそうですが、資本関係がある場合でも、本当のコアの技術はなかなか提供しないことがあります。
税金を投入するプロジェクトだから、順調に進んでいるように見せる必要があるというような考えはもたず、
冷静に厳格に交渉すべきことは交渉すべきです。一般的に外資系の会社は、
良い所どりになる時と悪い所どりになる時の差が大きくなります。
15年ほど前、MPUのクロックが上がらなくなった時、半導体は汎用技術になって、
ソフトウェアが競争力の源泉になるのではないかと思いました。しかし、頭が4コア位の人(私)の予測は
大ハズレで、GPUとAIの組み合わせで、技術が大きく進展し、半導体が、競争力の源泉になりました。
コンピューターの歴史を見ると、ホストコンピューターがPCになり分散型になりました。また、クラウド
の時代になり、大規模データーセンターが技術の中心になりました。大量のデーターで学習した
AIがIT技術と人の関わり方を変えるかもしれない時代になりました。しかし、未来永劫続くかどうかは
わかりません。また分散処理の技術が競争力の源泉という時代がくるかもしれません。
日本で半導体工場の建設が進み、生成型AIのプロジェクトが進もうとしていますが、他国に遅れをとらないように
することなどをプロジェクトの推進力とすることは勧められません。
各自のエンジニアが、自分はこのようなことをやりたいという気持ちをプロジェクトの推進力にすべきです。
リーナス・トーバルズがリナックスのカーネルを作ったのは、自分が使いたかったからです。S/W自体やOSS
の仕組みの良さに着目して、リナックスのディストリビューションをつくるメーカーが数多くあらわれて
広まりました。イギリスのエイコーン社が、ARMアーキテクチャーの原型をつくったのも、1980年代当時の
コンピューターの性能を考えて、シンプルな固定長の命令体系が良いと考えたからです。
WinTelに対抗するということがプロジェクトの推進力ではありません。
和製AI開発プロジェクト自体はすばらしいものです。
今では数少ないCPU型のスーパーコンピューターである富岳と、世界で最初にスーパーコンピューターに
GPUを採用したTSUBAMEと、日本語の言語構造に注目した、AI開発プロジェクトというだけでわくわくします。
AIが社会に与える影響についていろいろな議論があり懸念もあります。株価の予測を例にとると、
5分先の株価予測やそれに基づいた取引の速さはもうAIの世界です。しかし1年先の株価予測ではそれほどの成果は
あがっていません。公正な取引を確保する証券取引市場の仕組みがすばらしいからとも言えます。
和製AI開発プロジェクトの進捗を、ChatGPTとの比較で語るのではなく、AIの利用技術だけでなく、
開発技術も日本に築くという観点で、小さな失敗も開示して、社会や各自の生活にいかに資するかを
プロジェクトの推進力にすればすばらしいプロジェクトになります。
歴史が韻を踏んで、分散処理の技術が競争力の源泉という時代がくるかもしれませんが、
スマフォが競争力の源泉になるということではありません。
何か新しい技術がでてきます。
アプリのリリース前の検証は、シミュレーションで最新バージョンでの検証は必ず行いますが、
実際の端末は、新しいものを買いたいという気が起きなくなりました。
電池が持たなくなるので、買い替えますが、アプリの移行が面倒なので、もし電池をリフレッシュしてくれるサービスがあれば、
一生今の携帯を使い続けようかと思います。(これを老化現象と言います)
自動運転のクルマなどに関連してセンサーがよく話題になります。2ナノメータープロセスのMPUが
競争力の源泉になるかもしれませんが、もっと集積度の低いマイコンのレベルのプロセッサーで
数十個レベルからでも迅速に作成することが競争力の源泉になる可能性もあります。
FPGAとの棲み分けは、消費電力、処理速度などの違いで、両者に需要がありそうです。
そして、自動運転のクルマなどに使われるセンサーは、I2CやSPIなどの1980年代に開発された
インターフェースでマイコンに繋がり、マイコンとPCは、USBケーブルで繋がっているけれど、
使われているプロトコールは、RS−232Cというように、なぜ新しいものがでてこないのかというような
部分があります。センサーとマイコンの間のインターフェースが最新のものになって高速大量のデーターが
PCに送られるようになる。あるいは、マイコンでAI処理が行われるようになる。あるいは、
フーコーの振り子のように地球がどのように動いても、自分の動き方を保つような素子が、
小型化されて、センサーに組み込まれる可能性があります。加速度を2回積分して位置を求めると
誤差が蓄積します。低速で移動するものの位置を正確にもとめるなどの用途で、
センサー素子そのものに新しい技術が用いられるようになるかもしれません。
北海道新幹線の延伸に関連して、函館駅まで、フル規格の車両によるミニ新幹線での乗り入れと、貨物新幹線が
話題になっています。全国新幹線鉄道整備法による整備新幹線の建設ではなく、
地元の人がどうしてもほしいという場所に鉄道を建設する時代になっています。
札幌貨物ターミナルは東京貨物ターミナルに次ぐ規模で、一日50往復近い貨物列車が走っています。
貨物列車を廃止するのは、SDGsの時代の要請にも反します。
貨物新幹線を作れば、CO2排出量削減の点で、話題になります。トラックドライバー不足の対策にもなります。
東京〜札幌間の時間が圧倒的に短くなり、青函トンネルのなかでの旅客列車の減速が不要になります。
東京〜大宮間が限界に近いレベルで列車の本数が多いので、大宮総合車両センターの中に
貨物ターミナルを新設するなどすれば、東北新幹線の線路容量は余裕があります。
貨物の積載などの時間を含めて考えると、航空機による貨物輸送の一部を、貨物新幹線に振り分けられる
可能性があります。第3セクター鉄道の会社に貨物列車の通行料が入らなくなるなど、
解決すべき課題は多いですが、過去の仕組みや取り決めを守ろうとするのではなく、現在の
地元の人の考えを最優先して、方針を決めるべきです。
日本の自動車業界が、EVシフトで遅れをとっています。鉄道でも非電化区間では、電気式ディーゼルカーへの
置き換えが進んでいますから、現状だけみれば、HVが合理的かもしれません。しかし、世界的な評判も考えて
方針を決める必要があります。
内燃機関に関わる企業を守るためという方針の決め方ではなく、新しいクルマのあるべき姿を考えて、決めるべきです。
1日1時間ほどしか使わないクルマを本当に皆が所有したいと思っているのかも考える必要があります。
EVは高価ですが、電池以外ならけっして高価ではありません。内燃機関のクルマは、3万点位の部品で成り立っていますが、
EVは1万点位です。電池を除けば、内燃機関で150万円のクルマは、50万円になります。(ウソです)
電池はリースで、数年経つと、新しい電池に積み替えることができるなど、クルマの所有の方法を
根本的に見直すべきです。
自動運転の車は最近になって日本でもいろいろ動きがでてきました。
来年から新東名でレベル4のトラックの自動運転が始まります。限られた場所で、時速15km/h位で走る
自動運転のクルマも計画されています。
数年前、自動運転の車はタケコプターやどこでもドアのようにどこにでも移動できるツールになるのか、
それともBRTのように決まったルートを走る乗り物になるのか、予想したことがあります。
そして、予想どおり決まったルートを走る乗り物が多く登場しています。(後出しじゃんけんです)
遠隔監視する人が、決まったルートでないと対応できないからかもしれませんが、
自動運転の車の運行は、鉄道のような運行管理センターで管理するような形になっています。
時速15km/h位でも、東急世田谷線の電車とほぼ同じ速度なので、場所によっては十分役にたちます。
運行管理センターで管理して鉄道の単線運転に相当する運転を行えば、各地の道路を2車線で整備する費用が
不要になります。
自動運転の車はカメラがついており、しかも誰がどこに行ったかの記録も取得する気になれば取得できます。
情報機器以上にデカップリングの対象になる可能性大です。
将来の世界中のクルマの使い方を考えて、現状の仕組みを守ることにこだわるのではなく、最良の仕組みを
考えるべきです。
公金受取口座の登録で、他人の口座が登録されるという問題が発生しました。
これはマイナ保険証の登録と異なり、各自が自分の口座番号を登録しました。お金を受け取るための
口座だから、自分の口座を登録するだろうという設計でした。今までに判明している問題は、手続きの
ミスによるものでしたが、悪意をもって他人の口座を登録したり、他人の受取口座を自分の口座にすることも、
システム的には可能でした。親権を争う子供の公金受取口座の登録では、知らないうちに変更されたりする恐れがあります。
設計自体の問題とともに、このようなリスクがあることを周知していなかったことがより大きな問題です。それでも
以前よりは、システムの不具合に関する開示が早くなりました。不具合を隠蔽しても、悪事を働く人は
必ず見つけます。一般の人が周知されていない場合より被害が大きくなります。
システムを使う側も、情報には誤謬又は不正が存在するという仮定に基づいて、常に懐疑心をもち正当な注意を払わなければ
なりません。システムを使っていると、クッキーを受け入れるか、条件付きで受け入れるかの問が表示されることがあります。
状況は開示するので、使う側で責任を持って判断するという発想です。
何でも「おまかせ」で使っていると「でまかせ」な情報がでてくると思わなければなりません。
システムの運用主体が国内の機関であっても、IT技術の多くを海外に頼っている状況では、
海外の発想を理解する必要があります。「多様な意見」は、自分が意見を述べなければ実現しません。
それから、最後にもうひとつ。
経済のバブルがはじけます。数百年にわたって必ずバブルははじけてますから、いつかバブルがはじけます。
いつはじけるかは、わかりません。
次にバブルがはじけるのは中国の不動産ではないかと思います。アメリカで政策金利がどんどん上がり、
金融機関の破綻も起きているので、アメリカの景気に不安があるという考えが一般的です。
しかし、日本でバブルがはじけた時も、リーマンショックの時も、土地価格が原因でした。
全国的に一方的な価格の動きになるからです。
価格の設定を自由な取引にまかせていても、統制していてもどちらにしても、バブルははじけますが、
土地の利用権について無理な価格統制をして、土地が不良債権になっていることを隠蔽していると、
バブルがより大規模にはじけて、一層悲惨な結果になります。
そして本当に、最後にもうひとつ。
このコラムは元々、列車ダイヤについてのコメントを書いていました。そして時々、東海道・山陽新幹線の
将来のダイヤについて予測します。今まで一回も予測が当たったことがありません。