列車ダイヤについて --  3ー106 Autonomousな社会になるのか??

                                      2023年5月1日  

    3ー106 Autonomousな社会になるのか??
    
  Autonomous(自律)社会になるのか?
  自律社会という言葉は、オムロン創業者の立石一真氏が、
  「事業を通じて社会的課題を解決し、よりよい社会をつくるにはソーシャルニーズを世に先駆けて創造することが不可欠になる。
  そのためには未来をみる羅針盤が必要だ」として、1970 年に構築した、未来を予測するSINIC 理論
  のなかに出てきます。国際未来学会で発表しました。そのなかで、2025年から、自律社会になると予測されています。
  SINIC 理論によると、1876年から1945年までが、第2次産業革命の機械化社会、
  1945年から1974年までが、自動化社会、 1974年から2005年までが、情報化社会、
  2005年から2025年までが、最適化社会で、2025年からは、自律社会になります。
  
  ITシステムの世界で、Autonomousというと、JR東日本の、
  ATOS(東京圏輸送管理システム)が有名です。一般の鉄道の輸送管理システムが、運転指令所のシステムが、
  通信制御装置を介して、各駅のポイントを制御するのに対して、ATOSでは、運転指令所のシステムはダイヤの管理
  を行い、各駅のポイントの制御は、ダイヤに従って、駅に設置されたシステムが行うので、自律的なシステムといわれます。
  これだけ聞くと分散処理はどこにでもあるような気になりますが、実際は相当大変です。
  例えば、単線の区間で、行き違いの駅が臨時に変更になったとします。
  ポイントの制御システムが、一度設定したものは「てこ」でも動かんといえば、融通性が失われます。
  (重いポイントを、昔は「てこ」の原理で動かしていたので、いまでもポイントを転換するスイッチをてこと呼びます。)
  しかし、ポイントの制御と信号は連動していて、さらに実際の列車の位置も検出して、時すでに遅しということになれば、
  ダイヤの管理システムに対して、その変更は出来ないことを通知して、行き違いの駅の変更を取り消さなければなりません。
  一方Suicaのシステムは、今まで改札機で行っていた運賃の計算を、サーバーで行うことになります。
  改札機は何もしなくなったということではなく、ネットワークの性能が上がったので、改札機とサーバーの
  連携が可能になったそうです。
  
  ITシステムは、情報化社会の初期は、ホストシステムが中心だったが、次第にパソコンに移行していったといわれます。
  実際は、各パソコンが独立して動いていた時期はわずかで、インターネット社会に移行し、2005年頃からは、
  クラウドサービスが中心になりました。
  業務システムの導入にあたっては、現在の業務の分析からはじめると言われていたものが、システムの導入にあわせて、
  ERP(企業資源計画)などのベスト・プラクティスがもつ最適な業務手順をあわせて導入するのが良いと
  言われるようになりました。グローバリゼーションが進み、世界中の、最適な場所で、生産するのが
  合理的だといわれるようになりました。最近になって社会の分断が話題になり、グローバリゼーションのなかでの
  資源や製品の供給危機が課題になっています。
  2025年からは、自律社会になるのでしょうか? GAFAなどの、クラウドサービスが未来永劫拡大するように
  いわれた時代がありましたが、そうでもないようです。
  自律社会には、いろいろな解釈があるでしょうが、ITシステムでは、IoTが考えられます。
  マイコンやMEMSのセンサーの性能の向上が著しく、いろいろな装置の稼働状況を常にモニターし、
  クラウドシステムとの連携で、業務を遂行する形態が広まりそうです。
  自律型というと、マイコン単体で稼働するとか、クラウドやサーバーは無しで、マイコンのみが連携
  する形態も考えられますが、IoT機器と、クラウドシステムとの連携も広まるようです。
  
  日本で、2ナノ・メートルのプロセスの半導体を製造する工場の建設が話題になっています。集積度が上がることで、
  処理能力の向上や消費電力の減少が期待されます。AIシステムや暗号資産の管理システムで需要があるでしょうが、
  個人が使うITシステムは、今のままでかまわないような気もします。私は10年前に、メモリーが4GBでストレッジがHDD
  のノートPCを買いました。Windows10にアップデートした時点で、ログインに分単位の時間が
  かかるようになりましたが、chromeOS Flexに入れ替えたところ、快適に動いています。
  YouTube動画の再生も問題ありません。メインに使っているデスクトップPCは16コアですが、私の頭が4コア位
  なので(??)、性能をフルに使いきることはありません。いずれ、MPUが2ナノ・メートルのプロセスの半導体
  になるでしょうが、どのように変わるでしょうか。
  マイコンは最近、20ナノ・メートル位のプロセスの半導体のSoCを使用するものが出てきています。そして、
  16ビットから32ビットになっていましたが、64ビットのマイコンが次第に増えてきています。
  PC用のMPUも64ビットです。16ビットから32ビットになり、20年位前には一部128ビットの
  ものが、ゲーム機などで使われましたが、結局ほとんどのPC用のMPUは64ビットです。それで十分なようです。
  マイコンが64ビットになると、アーキテクチャーにもよりますが、PC上で作った実行形式のプログラムファイルが
  そのままマイコンで動くようになる可能性が増えます。PC上でクロス・コンパイルする場合、32ビット用の
  ライブラリーが無かったりなど、意外と面倒なことになるので、マイコンが64ビットになって、処理能力があがると、
  使われる場面が増えそうです。マイコンを広く使うためにはバッテリーの問題も重要ですが、
  ペロブスカイト太陽光発電が広まると、交通整理の人が使う反射テープがついたメッシュのベストのようなものに貼り付けておけば、
  天気が悪くても室内光でも充電できるので、バッテリーの問題は大きく改善しそうです。
  IoT機器で、AIシステムを実現するなど、従来では不可能だったような処理が可能になりそうです。
  
  マイコンが進歩すると、止まってもころばない自転車が出来たり、のび太でも逆上がりができたり、スノボですべる
  ことができるようになるわけではありません。しかし、ラズベリー・パイが64ビットになり、
  PCで使っているLinuxのArmコア版を動かすことも容易になり、フィールドで計測中にPythonの
  プログラムを修正するなど、利用の範囲が広まりました。ドローンではマイコンとFPGAとIMUセンサー
  を載せたSoCと制御用のプログラムの性能が鍵になっており、空飛ぶ自動車の開発にも結びつきそうです。
  
  AIシステムは、10年程前から急速に進歩しています。最近、ChatGPTが現れ、最近の1−2年で
  さらに進歩が加速しているようです。ChatGPTが人間の仕事を奪うかという議論がありますが、
  プロの棋士の人が、AIシステムで学習して、さらに強くなっているように、人間の仕事の能力が向上する
  場面も多そうです。例えば、鉄道のダイヤが乱れた時、運転指令所で回復ダイヤを作成しますが、
  1−2分でとりあえず回復ダイヤの原案を作る能力は、人間より、AIのようが優れています。
  とにかく速いです。しかし、どれだけの条件を入力して回復ダイヤを作成しているかは、
  人間が注意深く監視する必要があります。曜日や時間帯によって、ホームや改札に人が殺到する状態に
  ならないかなどは、AIのアルゴリズムの概要を理解した人間が注意深く監視し、回復ダイヤの原案をもとに
  実際の回復ダイヤを作成する必要があります。
  SINIC 理論によれば、最適化社会では、機械と人は連結し協働する時代でしたが、
  自律社会では、融和し、機械が人の能力を「拡張」する時代になるそうです。
  AIシステムとならんで、量子コンピューターも話題になっています。AIシステムも何度も話題になりましたが、
  あまり実用化されませんでした。10年程前話題になった時も、今回の流行は本物かという議論がありましたが、
  今回は本物で、しかもさらに進歩が加速し続けています。量子コンピューターも今回の流行が本物で、
  ITシステムの概念が一変するのか、一旦流行が下火になるのか、まだわかりません。
  
  ChatGPTがプログラミングが得意というのも驚きです。1−2年前、AIのモデルにデーターを入力すれば
  よい時代になって、プログラミングが不要な時代になるか、AIがプログラミングする時代になるのか、考えたことが
  あったのですが、頭が4コア位の人が考えた予測はハズレでした。
  
  システム以外でも、自律社会に関連して、注目されるのが、3Dプリンターで、24時間で完成する家です。
  現在、500万円で将来300万円くらいになる計画だそうです。都会の中心部を除けば、家が300万円なら、
  500万円で、土地と家が購入できる場所が意外と多くあります。建築業界も人不足が深刻な業界なので、
  24時間で完成する人件費が大幅に削減できる家は注目です。
  リモート勤務が増えて、各自が500万円位で住居を購入できると、生活様式にも変化があります。
  3Dプリンターは、IMUセンサーとの関連でも注目です。IMUセンサーの市販品は、マイコンと1対1の
  セットで販売されることが多いのですが、3Dプリンターでホールダーと回路を描いて、センサーのチップのみを
  購入するというような使い方も広まっているそうです。家のなかに各種の見守りセンサーを組み込むことも
  技術的には可能になります。
  将来的には、3Dプリンターの家は、リサイクルの材料が使用可能なのか、またどのようにリサイクルが可能なのかも
  考えるべき課題です。土地価格が高い都心や、URの大規模団地以外の、多くのマンションは、建て替えは
  ほとんど進まないのではないかと思います。負の資産にしないために、どのようにリニューアルするかは、
  大きな課題になります。(頭が4コア位の私の予測なので、外れる可能性も大です。)
  
  人口減少に伴って、コンパクトシティーが話題になりましたが、上手いこといった地域と、あてがはずれた地域があります。
  冬季に除雪が必要な地域とそうでない地域では異なりますが、自治体が計画的に住む場所を決めるというのは
  無理があるのかもしれません。各自が好みの場所に住んで、好みの勤務形態で生活するのが基本になるかもしれません。
  平成の大合併に伴い、市町村の数が減り保健所などの数が減りましたが、弊害もでています。
  保健所などの数を減らすのではなく、市役所も市立図書館も保健所も同じ建物に入って、それぞれの町の中心にいけば、
  多くの用事が片付くような統合のほうが良かったかもしれません。
  中央省庁が主導して、どのような地方行政が最適かを考えたところに無理があって、各自が自律して生活していることを
  前提に、どのような行政の仕組みが良いかを考えるべきだったように思います。
  
  人口減少・少子化・高齢化が問題になっています。20年位前は、「現在の少子化が500年続くと、日本人の
  人口が3人になる」というような、過激な発言で人の興味を引くのが流行でしたが、今も一部続いているところがあります。
  
  人口減少が問題だといわれます。しかし、いずれ団塊の世代が亡くなる時代になります。その時、年間
  250万人近い人が亡くなる時、本当に人口が減らない社会が良いのでしょうか。
  同時に250万人近い人が増えて、100年続けば、日本の人口は2億5千万人になります。
  フランスは日本より面積が広くて人口は7千万人弱なので、人口が1億人以上でないといけないと
  いうようなことではありません。
  生産労働人口が減少して人出不足になるのが問題だといわれます。留学生を多く受け入れるのが、
  効果的な対策だと思いますが、あまり話題になりません。住居費と授業料を公費負担すれば、
  円安の現在では日本で生活することはそれほど困難ではありません。大学の設備は日本に十分にあります。
  一定の条件でアルバイトを認めれば、人出不足の解消にも有効です。そして、成績が優秀な人は、
  日本に永住できるようにすれば、生産労働人口の減少に歯止めがかかるだけでなく、優秀な労働者が増えます。
  しかも住居費と授業料の公費負担を得て、日本の大学を卒業した人は、日本の社会に不満を持つ
  確率は低いです。日本で大成功した人からの寄付金で、留学生の費用負担する仕組みにすれば、
  公費負担の割合も減少します。
  少子化が大問題ですが、公費負担による経済支援を増やせば解決するかどうかは疑問です。
  合計特殊出生率は先進国ではイスラエルを除いて2以下です。実際に出生率が高いのは、栄養失調での子供の
  死亡が問題になるような地域です。公費負担による経済支援は良いことですが、
  あわせて移民も含めて世界的な人口動態統計に基づく理論的解析が必要です。
  
  国会の答弁書を作成するのに、ChatGPTを使うことが話題になっていますが、私には
  なぜ前夜に質問を渡すのかのほうが、不思議です。
  キューバのフィデル・カストロ国家評議会議長は、国連総会で4時間半スピーチを続けましたが、
  内容はともかくこのような、誰が見ても本人の意志で話しているというスピーチなら、
  ギリギリに質問して本音を引き出すというような場面もあるでしょうが、役人が作った答弁書を
  読み上げるだけなら、徹夜で作った作文より、3日かけて丁寧につくった作文を聞きたいです。
  
  SINIC 理論の話に戻りますが、社会が変わる前後には危機が起きていることが多いです。
  第2次世界大戦やオイルショック、アジア通貨危機などが起きています。
  最適化社会から自律社会への変遷がどのように起きるかは注目です。ロシアによるウクライナ侵略を機に
  グローバルサウスの国で、食料不足や資源不足が起きています。一部の金融機関が経営危機になりましたが、
  クレディ・スイスの救済の手続きの中で、AT1債が無価値になりました。経営破綻した時、株式が無価値に
  なるのは皆が理解していますが、債権が無価値になって、皆が納得したのかどうか疑問です。
  組み入れた債権を持っていた人などの間で不満が爆発するかもしれません。
  グローバルサウスの国のなかには発展が著しく、いずれGDPで日本を追い抜くであろうという国もあります。
  しかし、多くの国は先進国からの援助に頼っており、債務が増加し、利子の支払額も増えています。
  スリランカだけでなくディフォールトに陥る国がでてきそうです。東西冷戦の時代なら、それぞれの陣営が
  はっきりしていたので、最後は先進国側が債務免除していました。
  しかし、現在は、多くの国が、米国にも中国にも債務があります。米国と中国が、合議の上で債務免除に
  応じる可能性は低いです。グローバルサウスの国の返済不能な債務が世界的な経済危機の引き金になるかもしれません。
  
  2025年には、大阪・関西万博が開催されます。
  テーマは、「いのち輝く未来社会のデザイン」です。1970年の大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」でした。
  1945年から1974年までの自動化社会のなかで、日本は高度経済成長をとげ、
  1968年には西ドイツを抜いてGNPが世界第2位になりました。しかし、公害被害が起き、成長は曲がり角を
  迎えていました。今から考えると、「人類の進歩と調和」というテーマは、オイルショックを経て情報化社会になる
  ことを暗示していたようでした。
  「いのち輝く未来社会のデザイン」は何を暗示しているのでしょうか。じつは、SINIC 理論によれば、
  自律社会は意外と短命です。2033年からは、自然社会、生命メカニズムが埋め込まれた持続可能社会になるそうです。
  
  健康はすべての人の関心事です。自律社会は、生命メカニズムが埋め込まれた持続可能社会への準備段階なのかも
  しれません。社会が変わる前後には危機が起きているという見方からは、経済危機がまもなく始まり、
  2025年で終了することなく、2033年まで続くのかもしれませんが、
  自然社会はそれだけの価値があるものなのかもしれません。
  2003年には、ヒトゲノムの解読の完了が宣言されましたが、一部に解読困難な部分があり、
  完全な形で解読されたのは2022年です。個人のヒトゲノムの情報を元にした、オーダーメードの医療が
  進歩し、開発には量子コンピューターが必須という状況になるかもしれません。
  
  頭が4コア位しかないので、日本史の年号はまったく頭にはいりませんでした。しかしなぜか、戦国時代の
  大河ドラマだけは見ていました。その後、スペイン語の勉強をした時に、イベリア半島の歴史に興味を持った
  ことがあります。Arroz(お米)など、Aではじまるアラビア語起原の言葉があるというのが、きっかけでした。
  レコンキスタが完了したのが、1492年で、コロンブスのアメリカ大陸の発見や、
  ルネッサンスにつながりました。(本人に確認したわけではありません。)
  ルネッサンス(Rinascimento:イタリア語)は再び生まれるという意味です。
  世界中に影響をおよぼして日本の戦国時代にも影響があったのかどうかは知りませんが、
  500年に一度の出来事ともいえます。現在また500年に一度の変革が、絶対起きないとはいえません。
    
  1990年代にコンピューター将棋が開発された頃、プロ棋士に対し、コンピューター将棋が
  プロ棋士に初めて勝つのはいつかというアンケートが行われました。ほとんどのプロが永遠に来ないと答える中で、
  羽生善治九段は20年後と正しく答えたそうです。頭が4コア位の私の予測は、当たらないでしょうが、
  SINIC 理論による未来予測は的中するような予感がします。